浮気をした父の事
明日、父に会って参ります。
わたくしの、本音を言えないこの性格は、あの父譲りかもしれない、と思ふ事があります。
わたくしも、父も、見栄張りの嘘吐き気質です。
父の其れはもつと酷くて、いはゆる、さいこぱす、と云ふものやも、と、近年感ずるやうになりました。
浮気の発覚当初も、父は母に本当の事を言はむとしませんでした。
咄嗟に隠そうとした、と云ふよりは、まさに、周到に隠蔽しやうとしたのだと、わたくしは後にさう思ひました。
経緯をお話しませう。
此度の狼藉が発覚したのは、父本人によるメールの誤送信がきつかけでした。
(なほ、父は、母とは以前より別居しております。円満別居、いはゆる、卒婚というものだと、わたくしも理解しておりました。)
其の文面はわたくしも見ましたが、なんとまあ、寒気のする事。
其のメールにつひて母が父に追求を試みたところ、父はこう言い訳したさうです。
「自分に恨みを持っている部下が、自分になりすましてメールを送信したに違いない」
呆れたものでせう?
しかし母は、始めこれを鵜呑みにして(まあ、そう願ひたい気持ちがあつたのでせう)、携帯電話会社に、なりすましの可能性がないか問い合はせたさうです。
調べればすぐに解る事。
その後、父が母の家に来た際に、この結果を持つて再度追求したところ、
その日、父は逃げるやうに帰つていつたさうなのです。
このことで、母の父への疑念は高まり、わたくしも、ああ、それは完全に「黒」だ、と感じたのです。
それからけうまでも、父はあの気色の悪いメールの内容につひて、未だに否定しております。
「あのメールの内容は、妄想だ」などといふ、更に苦しい言ひ訳までしてきました。
妄想、それこそ吐き気もすると言ものですが……。
さて。
父は如何やら、母との関係を修復したひ気持ちがあるやうなのです。
さりとて、母はもう父の顔を見るのも厭と、また平然と嘘を吐かれるのが恐ろしいと、申しております。
そのため、明日、娘であるわたくしが、まず父と話すことに相成りました。
ひとまずは、父の言い分を聞いてみたひと思つております。
ですが、もし仮にそれも都合の良い嘘で塗り固められてゐたら、と思ふと、空恐ろしくもあります。
わたくしに父の嘘を見抜く力は、果たしてあるでせうか?
わかりませぬ。
悲しきことではありますが、此度は父を、徹底的に疑うほかないのでせうか。
それは、正しき事でせうか。
とくもかくにも、父の話は聞ひた上で、母が今どんな思ひでいるのかも、余さず伝へたいと思つております。
わたくしに出来る事といへば、そのくらいでせうか。
何か、ないでせうか。
けふは、まとまらぬ日記となり、申し訳ありませぬ。
同じやうな事態に遭はれた方、ご意見を頂けますと幸ひです。
それでは、ご機嫌やう。