父親のいない結婚式
幼き頃、自分が花嫁になる姿を想像した事が、わたくしにもありました。
女の子なら誰しも、な事と言へるやもしれません。
わたくしも当然のやうにそれを想い、憧れました。
美しいウェディングドレス。
優しい旦那さま。
父とともにバージンロードを歩く姿……。
其れは、終ぞ叶はぬ事となつたのだなぁと、結婚式の日が近づくにつれ、思ふやうになりました。
わたくしの結婚式には、父は呼びません。
母が、其れを望まないからです。
当然の事と言えませう。
勿論の事、わたくしも父への疑念を抱き続けております。
母への数多くの仕打ちへの、怒りもあります。
なれど、厄介な事に、「わたくしの父親」という彼の不動の立場のせいでせうか。
父親がいない結婚式を思ふ度に、この頃、寂しさを覚へるのです。
あぁ、何の憂いもしこりもなく、ただただ、しあわせだけの結婚式を迎えたかつた。
一時は父との事が決着がつくまで、結婚式をしない、という方法も考へましたが。
先延ばししたとて、新郎の御両親も、わたくしの母も、もう高齢ですから。
わたくしの父ひとりのせいで、花嫁・花婿姿が永遠に見られないといふことになつてしまうのは、もつと辛いから。
だから、寂しいながらも、早くに結婚式を挙げる事にしました。
父がゐなくたつて、良い結婚式になると、先月くらいまではさう考えてゐました。
なのに。
今、わたくしはカフェーに居ります。
斜向かいの席に、小さな男の子を連れた若い母親らしき女性と、その父であるらしき、とても格好の良いおじさまがゐらつしゃいます。
その、仲睦まじそうなお姿を見てゐたら、
涙が出てきて。
それを隠す為に、下を向いて、これを書いてゐたら、
今、もつと泣きそうになつている自分がゐます。
其処にも此処にも、「父親」と「娘」がゐる。
わたくしは、羨ましいのでせうか。
ただただ、寂しい。涙が溢れる。
駄目ですね。
そろそろ、このカフェーを後にしませう。
気持ちを吐き出したくて、取り敢えず、書いた駄文でした。
何の面白みもなく、お恥ずかしい限りです。
寂しいと吐き出すのは、此れきりに致します。
もう、決めた事ですから。
いつもスキをいただき、有難う存じます。
それでは、ご機嫌やう。