見出し画像

「本を語る」2024/7/12「実力も運のうち」


❶[1BOOK]
「実力も運のうち 能力主義は正義か?」
マイケル・サンデル著 鬼澤忍訳 
ハヤカワ・ノンフィクション文庫 (株)早川書房
2023年9月15日発行

❷「今日の言葉」
☆条件の平等
機会の平等に代わる唯一の選択肢は、不毛かつ抑圧的な、成果の平等だと考えられがちだ。しかし、選択肢はほかにもある。広い意味での条件の平等である。
それによって、巨万の富や栄誉ある地位には無縁の人でも、まともで尊厳ある暮らしができるようにするのだーー社会的に評価される仕事の能力を身につけて発揮し、広く行き渡った学びの文化を共有し、仲間の市民と公共の問題について熟議することによって。

☆民主主義と謙虚さ
人はその才能に市場が与えるどんな富にも値するという能力主義的な信念は、連帯をほとんど不可能なプロジェクトにしてしまう。いったいなぜ、成功者が社会の恵まれないメンバーに負うものがあるというのだろうか?
その問いに答えるためには、われわれはどれほど頑張ったにしても、自分だけの力で身を立て、生きているのではないこと、才能を認めてくれる社会に生まれたのは幸運のおかげで、自分の手柄ではないことを認めなければならない。
自分の運命が偶然の産物であることを身にしみて感じれば、ある種の謙虚さが生まれ、こんなふうに思うのではないだろうか。
「神の恩寵か、出自の偶然か、運命の神秘がなかったら、私もああなっていた」
そのような謙虚さが、われわれを分断する冷酷な成功の倫理から引き返すきっかけとなる。
能力の専制を超えて、怨嗟の少ない、より寛容な公共生活へ向かわせてくれるのだ。

❸「本を語る」
「正義」の話で話題になった、「ハーバード大学白熱教室」。普通は「運も実力のうち」では?
[思いついたこと]
この本は、2019年にアメリカで起こった「不正入試」問題から始まります。
「スーツ」というアメリカのドラマで、弁護士事務所の採用試験のシーン、「うちはハーバード卒しか採らないの」という一言が思い浮かびました。ハーバード大学を卒業するということは、すでに成功が約束されているようなものなんですね。実力主義であるかのように見えるアメリカでさえ、「学歴」は売買の対象となる「価値」なのだということがわかりました。
[そして]
アメリカの大学は「卒業するのが難しい」ことでも有名です。分厚い本を何冊も課題にあげて、徹底的に「読書」をさせます。しかも法律系は「一言一句」が勝負です。しかも、英語は「表音文字」であるアルファベットの羅列。ひらがなやカタカナだけの文章を読むのと同じです。ちなみに、「スーツ」の主人公は、記憶の天才という設定です。「一度見たら忘れない」
これって、まさしく「フォトリーディング」や「瞬読」の世界ですね。
[しかし]
普通の人間は、「努力」するしかありません。覚えるための努力といえば、英語を習うときの「単語帳」や「単語カード」、東大生が手本とされる「ノートのまとめ方」などを思い出します。しかし、その努力が正当に評価されるとは限らないのも事実です。大学受験なら、合格することで、評価が確定しますが、社会に出れば、そんな「絶対的評価」はあり得ません。私は大きな組織に属したことがありませんので、評価の結果といえば「パートの時給」くらいです。でも、「時給」で「人物」を評価されたくありません。
[だからこそ]
実力があっても評価されるのには、「運」が必要だという本書のタイトルが、納得できます。そして、「運」を引き寄せるために、さらに努力をするわけです。どんな努力をすればいいのか、たくさんの本や講座が用意されています。それを学ぶ努力は、惜しまないで欲しいし、実践することを忘れないようにしてもらいたいな〜とつくづく思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?