ちゃんと生きている
いま、ちゃんと生きている。
自分の意思で産まれてきたわけでもないのに。
親の都合で産み落とされただけなのに、それでもちゃんと生きている。
いつも戦っている。
見えない敵と戦っている。
見える敵のこともあるけれど、見えない敵のほうが圧倒的に多い。だからその辛さは他人には理解してもらえない。
どうして自分ばっかり辛い目に遭わないといけないんだろうって思って、周りの人を見ると悩みなんて何も無さそうに楽しそうに笑っていて、悲しくなる。不公平だ。
何をやっても上手くいかないことばかりで、自分のことがどんどん嫌いになっていく。不安と不満が積もるばかりでそれを吐き出せるところもない。誰も頼りにならない。誰も信用できない。だから全部自力で解決するしかない。そんな勇気も強さもないけれど立ち向かうしかない。酷い現状と戦うしかない。けれどいつも戦う前から負けてしまう。
周りの人には努力が足りないとか、怠けているとか言われるけれど、今できる最大限の努力をいつもしている。誰にも認められないけど、見えないところで必死に頑張って昨日より少しでも良くなればいいなと毎日祈りながら過ごしている。そして、少し良くなったと思ったら、すぐに悪化してまた自己嫌悪になって、感情が不安定になってどんどん悪いことを考えてしまう。
他人からしたら些細な出来事で悪いことには見えないようなことで落ち込む。少しでも悪いことが起こったり思い出したりするだけでも、それを何日も引きずってしまう。ちょっとしたミスや失敗を気にせずにいられるならどれだけいいだろうか。
いつも明るくて、笑っていて、容姿が良くて、友達が多くて、なんでも上手くやっているあの人が憎い。鬱陶しい。消えてほしい。結局自分は報われない。自分の劣等感が強まっていく。自分はずっとこの悪い状態のまま変われないのかと落ち込む。
不良品か。
欠陥品か。
失敗作か。
どうしてこんなに上手くいかないんだろうか。
こんなに必死に頑張っているのに。
どうして報われないんだろうか。
あの人と自分はなにが違うんだろうか。
どうしたら変われるんだろうか。
どうしたらこの悪い状況から抜け出せるんだろうか。
考えても答えなんてわかるはずのないことをずっと考えてしまう。あぁ、やっぱり自分はだめな人間なんだと憂鬱になる。そして結局なにも状況は変わらない。悪いことを考えて気持ちが沈むだけ。悩みが絶えない。ずっと底辺から這い上がれない。本当にダメ人間だと思う。
あの人達はいいよね。悩みごとなんてなにも無さそうで。いつも楽しそうにヘラヘラ笑って。他人と普通に喋れて。見た目も良くて。失敗もほとんどしないし、失敗したとしてもすぐにケロッとしていて、引きずらないし。
あの人達にも悩みはあるよって言う人がいるけどそんなの些細なことだよね。あの人達は心に重症を負うほどの悩みなんて無いんだから悩みのレベルが違うよね。結局、健常者には理解できないことなんだろうね。
治らない傷を抱えながら生きていくしかない。生きたくないなら死ぬしかない。何もしなければ人間は死ぬんだから、食欲を満たしている時点で生きるという選択をしているんだなと思うと、自分はまだ生きる気があるのかなと感じる。人生を捨てるにはまだ早いのか。
死ぬことに不安はない。苦しまずに済むのなら、できれば早く死にたいと思っている。
毎日苦しいけれど、もし何かの拍子に自分が報われるとしたら…なんてありもしないことを夢に見てしまう。希望が捨てきれない。やっぱり弱い。その弱さが余計に自分を苦しませている。
それでも。
それでもちゃんと生きている。
生きているだけで偉いでしょ。褒めてよ。ねぇ。どうして褒めてくれないの。君もあの人達も絶対にこの苦しみは耐えられないと思うよ。毎日こんなに辛いのにちゃんと生きているんだよ。もっと褒めてくれてもいいじゃん。もっと優しくしてよ。どうして話を聞いてくれないの。どうしてそんなに適当なの。ねぇ。お願い。わかってよ。一回くらいこの苦しみを味わってみなよ。ねぇ。どれだけ辛い思いをしていると思ってるの。本当はこんな世界に産まれてきたくなかったよ。それでもちゃんと生きているんだよ。偉いでしょ。ねぇ。偉いよね。