さつまいもプリンに飛んできた小さな虫の話
―新緑の候、公園でさつまいもプリンを食べていた時の話―
私は現在適応障害の療養のため、約5か月ほど休職している。
毎日とくにやることがない。今やらなければいけないことは掃除と洗濯くらいである。
勤めていた頃は全国あちこち営業に回り、めまぐるしい日々を過ごしていた。不本意ながらも療養目的で人生のボーナスタイムを与えられ、その使い道に困っている。
休職5か月となると、体調は相当安定しており、はたから見れば元気そのものである。家でじっとできない私は、基本的に毎日どこかに出歩いているのだが、今月から本町にあるシェアオフィスを契約し、簡単な単発の翻訳作業の仕事やnoteの執筆、読書や勉強に勤しんでいる。
今日も朝10時からシェアオフィスに入り、黙々と作業をしていた。昼食は昨日旦那が作ってくれた唐揚げをおにぎりにして作業の合間にむさぼった。
私は春が大好きだ。今日は少しばかり肌寒いが快晴で気持ちが良い。15時頃、ちょっと息抜きでもしようとファミリーマートに向かい、さつまいもプリンを買って靭公園のベンチで休憩することにした。
木漏れ日の下でプラスチックスプーンを開封し、さつまいもプリンを食べ始めると、間もなくして小さな虫がさつまいもプリンの上に飛び込んできた。
虫にとってもさつまいもはご馳走だろう。こちらに飛んでくるのも無理はない。ただ、その小さな虫は、ルックスと言いサイズ感と言い、さつまいもプリンの上にトッピングされている黒ごまそっくりであった。
そして私は考えた。
この虫はさつまいもを食べたいのではなく、黒ごまのふりをして私に食べてほしいと思っているのではないか?と。無論、虫を食べてあげたいとは到底思えないのだが。
私は無意識的にプラスチックスプーンで黒ごま君(仮名)を飛ばしてあげた。
しかし、その頃まださつまいもプリンは食べ始めたばかりだ。財布と携帯だけをポケットに入れてふらっと出てきたものだから、私は黒ごま君を救出したそのプラスチックスプーン以外に、適当なツールをさすがに持ち合わせていなかった。
ああ、こういう時はスプーンの柄の方を使うのが正解だったのか、と気づいたが、時すでに遅し。成すすべもなく、私は虫取り網と化したそのスプーンで残りのさつまいもプリンを食べるはめになり、間接的に虫を食べたような気分になったのであった。
さつまいもプリンは何も悪くない。美味しかった。晴天の靭公園でぜひとも食べてみてほしい。
紅はるかのモンブランプリン |商品情報|ファミリーマート (family.co.jp)
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