見出し画像

SXSWeduのExpo出展とセッション参加

SXSWeduのジャパンブースに出展しつつ、いくつかセッションにも参加したので短めのレポートです。

SXSWeduとは?

SXSW(South by Southwest サウス・バイ・サウスウエスト)はテキサス州オースティンで開催される大きなフェスで、1987年に始まった時は音楽のフェスティバルでした。その後映像、インタラクティブと増えていき、現在はテック系の催しが拡大しています。本体は3/8-17で、その前の4日間に開催されたのがSXSWeduです。

チラシを柱に貼りまくって参加者を呼び込むのですが、インタラクティブ期間は貼っても上から貼られる争奪戦らしく、SOCIAL FIGHTER AWARDもedu期間は見えていましたが、今はどの柱もインタラクティブ・フィルムのチラシで上書きされて見えなくなりましたw

会場に来ているのは学校の先生、教育関連の企業・NPO・自治体の職員、研究者などが多く、中には子どもたちも遠足?的な形で遊びに来ていました。

EXPO出展

今回は教育課題をテーマに子どもアイデアソン→ハッカソン→審査会・表彰をしたSOCIAL FIGHTER AWARDをEdtech Japanのみなさんとの合同ブースにて出展しました。


お隣はSOCIAL FIGHTER AWARDのハッカソンに参加してくださった小川さんの所属するLOVOTさん、他にも花まるラボさんやSoroTouchさん、未踏ジュニアの高校生(!)もブースを出していました。

SOCIAL FIGHTER AWARDは概念と内容が複雑で、コラボレーション先を見つけるには難しかったですが、意外と日本企業さんも沢山こられていたので色々な方にお話しすることができました。(ここからコラボイベントに繋がったりすると嬉しいです。)

はみがき勇者する子どもたち:LITALICO FUN STUDIOのアプリは言語を使わなくともわかりやすい設計なので、立ち寄ったお子さんや先生たちには説明自体はしやすかった!

そして未踏チームのスーパークリエータの Yui NishimuraさんはStudent Startup competitionにも出場されていました!

堂々とした振る舞いやプレゼンテーションスライドは現地高校生チームも含めてどれも素晴らしかったけど、唯一の海外勢かつ中のシステムも含めて作り込めているところがTouban!のすごいところでした。

 ===
ここからは参加したセッション(ワークショップ型・プレゼンテーション型・パネルトーク型含め)の中で面白かったものをいくつかピックアップしています。

セッション

1.遊び心・Student-based

Playful Assessment: Don’t Stop the Fun
MITの中でPlayful Assessmentを提唱しているチームによるワークショップ。実際に教材キットやUnityで作ったらしいゲームを使ってみての議論で、①プレッシャーをかけて行うテストよりも実際の力を引き出しやすい②こちらの思惑通りに使わなかったり脱線したときの補助が必要③科目によって実現の難易度が違うなど話し合った。

Game-Based Training to Build Attention in ChildrenオーストラリアのTALI社代表の登壇で、最初に発達する認知機能であり、学習していくための基礎となるattention(注意力)を養うためのアプリを開発しているとのこと。大学連携をしながら科学的根拠を持っていることや自閉症(ASD)やADHDの子どもにも効果的であることが説明されました。

Closing the Gap: Implementing PBL in LD Classrooms
学習障害(LD)のお子さんの中でも特に視覚優位のお子さん達に対してのアプローチの工夫やその効果についてで、「NYT picture of the week」と題して、New York Timesのオンラインから毎週1枚の写真をピックアップしてそれについて考えたり説明したり調べたりすることや、コンセプトマップにして学びをその子主導で広げていくことがいかに特別支援での授業にも必要かということを実例をあげながら説明してくれました。

2.メンタルヘルス

It's Never Too Early: Mental Health in Early Ed
登壇者3名とファシリテータ1名のパネルトーク。一番面白かったのは大学で貧困がもたらす発達段階への影響や自閉症児への早期介入の効果などを研究しているAnn Mastergeorgeさんのコメントで、色々な課題に対してアタッチメント(attachment:乳幼児期に形成される愛着=情緒的な深い結びつき)の重要性とそこからもたらされる安心感や信頼感がいかに大切かを脳科学的な根拠を用いて説明していた。

3.LGBTQ

I See Me: Teaching LGBTQ+ Visibility & Using Film
最近カランコエの花というLGBTQの高校生とその同級生達の1週間が描かれた映画を題材にしたワークショップを中高大学生と社会人混同で開いたところだったので類似テーマのセッションに参加。

私がなんとなくでやっていた映像→ワークショップというフレームはずっと使われてきていたということも実感し他のですが、それ以上に驚いたのは、ここでは小学生などのより若い人向けに行われていること、そしてその教育用の映像を製作するための組織もきちんとあるということでした。

そして、LGBTQ教育関連のリサーチもきちんと行われていてかつこちらもデータが開放されているので、先生達はすぐにでも使えるようになっていました。

4.ダイバーシティ

Diversity & Quality in the TX Teacher Pipeline
GYO(Grow your oun)を掲げているテキサス州での取り組みについての発表。

テキサスと一言に言っても地域によって差があり、多くの学区は郊外かつ小規模なものが多いし、生徒の50%がヒスパニックなのに対して教師側は60%以上が白人で、ギャップがあるので、自分たちのエリアで未来の教師を育てていくプログラムが走っている。高校でのキャリア教育から始まり、教師になるまでを段階に合わせてサポートしている。
この先生の算数が面白い!楽しい!と生徒が評価する先生を研修担当にして他の先生にやり方や事例を教えていけるシステムになっていることや、高校生時点からサポートが入ることはStudent-basedかつ職種に対しての導入・採択・育成において参考になる部分が多そうでした。
また、隣の席だったジョージアとテキサスの人達曰く、同じラテン系の中でもひとまとめにされているけど、内側での違いやルーツによる背景があるから、その中にも問題があるという話も。

感想・まとめ

SXSW本体のイメージからするとeduはもう少し穏やかで人も多すぎない過ごしやすいイベントでした。LITALICOジュニアで実際に指導をしたりSOCIAL FIGHTER AWARDでアプリやガジェットの開発に触れてきた私が感じたことは、evidence-based(科学的根拠に基づいた)student-centered(生徒主体の)であるという考え方は浸透してきているものの、①アセスメントや効果検証の改善をしていくことや、②playful(遊び・楽しさの演出)においてはこれからもアップデートできることも沢山あるのではないかということとで、③(性別・人種・文化・家族の形など含めて)本当の意味でのダイバーシティがありインクルーシブ(障害の有無に捉われない・合理的配慮のある)な教育はどんなものなのか、常識や現状をいい意味で疑いながら作っていきたいなという思いが掻き立てられました。

あとは、日本でやっていること自体も切り出せば面白いことは沢山あるので聞きに来るだけじゃなくてセッションで提示する側にならなければならないなとも反省しました。インタラクティブ(本体期間に開催されているテック系の方)にはちょくちょく日本人セッションやブース出展があるのですがeduにはセッションがないので、英語で1時間話し続けるということはハードル高いですが、もし来年くるなら自分たちでセッションを持つべきと感じました。

街・地域として、オースティン(テキサス)は"自分はアジア人というマイノリティなんだな"と感じる瞬間がちょこちょこありました(視線とか、声をかけるまでの間とか、対応の違いとか…)。かつ、話したくても3割くらいしか発話できない自分のスキル不足との掛け合わせで悔しさは増幅しました。(もちろん1対1で喋れば優しく対応してくれる人は沢山いるし、自分の語彙力次第で挽回できるところもあるので次英語圏に行く時までの宿題にします。)

BBQとメキシカンフードは太りそうだけどすごく美味しかったです。あとはタコス・ブリトーがいっぱいなのでメキシカン好きな人にはたまらない場所でした。

アフターパーティーもタコス!そして教育系イベントだけどDJブースガンガンかかっていて所謂SXSWっぽさってこういうところなのかなと。(日本で教師向けイベントにDJブース置いたらどうなるんだろうと思いましたが、よく考えたらSOCIAL FIGHTER AWARDでも審査会にDJ来てもらってたので、懇親会とかでやってみたら意外とみんな踊ってくれるかもしれません:)

インタラクティブも少し滞在するので違いも含めまた書こうと思います。

シビックテックのCode for Japanで働きながら、小児発達領域の大学院生をしながら、たまにデザインチームを組んで遊んでいます。いただいたサポートは研究や開発の費用に充てさせていただきます。