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二度見した。ナパーム弾の穴育ちの海老
甲殻類が好きだ。
特にエビは口にしやすい大きさ、食べやすい殻の硬さ、生でも焼いても煮てもOKの万能甲殻類だと一目置いている。
タイやベトナムはエビの養殖が盛んで、ローカルフードを頼んだときにエビを口にする機会が多い。もちろん、おいしくいただいている。
ホーチミンに行ったときも、頻繁にエビを堪能した。
塩とガーリックで焼いただけのシンプルな串刺しから洋風にアレンジされたローカルフードまで、いつでもエビはおいしかった。
ホーチミンでは戦争証跡博物館にも行った。なんといってもベトナムは世界で唯一アメリカに勝った国。その誇りがあふれているのか、戦争証跡博物館を取り巻く空気は、なんとなく明るく逞しく感じた。
もちろん当時の写真から伝わってくるのは戦争の残酷さや悲しさ。1枚1枚、ていねいに見て歩いた。戦後の人々の暮らしを写したコーナーは日本人カメラマンの写真が多く、説明書きも日本語だったのでじっくり読みながら歩くことができた。
友だちも私も、それぞれのペースで見ていたのだけれど、明らかにお互いが2度見した写真があった。
一度通り過ぎて、「見間違いかな?」と戻ってもう一度じっくり。
すべてを見終わって、ベンチに静かに座った。
まずは、写真から受け取ったさまざまな感情を整理して。
しばらくしてお互いが口を開いたのは、やはり、あのコーナーの話。
「エビをさ…」
「うん」
「ナパーム弾のさ…」
「うん、だよね」
「ナパーム弾でできた穴を利用して養殖したって書いてあったよね」
「やっぱり。見間違いじゃない」
「そんな再利用法、どうしたら思いつく!?」
私たちは、ベトナムの逞しさに震えた。日本にも戦争中、焼夷弾がたくさん落とされたと聞くけれど、その穴を再利用した人はいるのだろうか。いや、いるのかもしれないけど、それを歴史として残すときの発想の方向や悲しみの処理方法の違いをはっきりと感じた。
悲惨さや苦労話だけをクローズアップするのではなく、その後のしたたかさまであっけらかんと描けるのは戦勝国だからなのか、ベトナム自身の強さなのか。
そして忘れてはならない、爆弾の跡地ですくすく育つエビの逞しさよ。
この日から、エビを見る目に「ナパーム弾の穴育ち」が加えられることとなった。ちょっとワイルドにピッチピチと跳ねる万能甲殻類。やっぱりエビには一目置くしかない。
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