連載:アルケミストの旅 #0 (出発前)
**これは、2023年5月22日〜6月20日に渡り、17歳の娘とスペイン〜モロッコ+福岡・山口を旅した記録です。パウロ・コエーリョの「アルケミスト」を携えて、主人公のサンチャゴの足跡を思い浮かべながらの旅。本の内容とシンクロしたり、前兆が現れたり、自分なりの「アルケミスト」に出会った時間を言葉にしておこうと思いました。**
旅をスタートしたのは、2023年5月22日だが、話は2月の後半に遡る。その当時、なんとなくの自分のあり様が良くも悪くも安定してしまっている気がして、揺さぶりをかけたい感覚が疼いていた(安定していると変化を起こしたくなる性分らしい)。不思議なもので、娘に対してもそれを感じたので、本人に聞いてみると、首を縦に振る。結構、家族って連動しているものだ。「やっぱり、そうか。これは行くべきだな。」と、なんとなく、2人で海外に長期で行こうという気になってくる。
自分のあり様に揺さぶりをかけたいことが起点になっているので、綺麗な景色を見て、美味しいもの食べて、お買い物して、「わあ、楽しかったね♪」をしたいわけではない。これまで見たことのない景色、違う文化・習慣に「暮らし」を感じるレベルで出会いたいと思って、どうしようか思いを巡らしている時に、「そうだ、モロッコの和田麻弥さんに連絡してみよう!」という気になった。麻弥さんはワルザザードという場所でホテルを経営していて、現地のスタッフとの感覚の違いをよくSNSに上げていたり、日本から友人が助っ人に行った投稿なんかを見ていたから、ちょっとくらい何かできないかな、とも思ったのだった。
そして、麻弥さんに連絡を取ったのが3月3日。娘と行くことを二つ返事でOKしてくれたのと同時に、こんなコメントが付いてきた。
そっか、アルケミストの旅か。そういえば、アルケミストをモチーフにして旅をつくる「美しい旅 - 星と砂と少年。-」というプロジェクト(2021年)に参加し、現地(スペイン、モロッコ、エジプト)をよく知る人を探して、コンタクトした1人が麻弥さんだった。
そのプロジェクトに参加するまで、「なんとなく自己啓発本っぽいな」という天邪鬼な理由で「アルケミスト」を読むのを敬遠していたけど、読んでみると、高校時代にヘルマン・ヘッセの「車輪の下」を読んだとき以来、久しぶりに、「これは、自分のことか」という感覚を感じた。
主人公のサンチャゴが、宝物を探す過程で、いろんな人に出会い、たくさんの経験をしたように、私もこれまでの人生の中で、私にとっての宝「私はいかに生きるべきか」「私とは何者か」を探索し続ける過程で、多くの体験をさせてもらって来た。そして、2年前に仕事を手放した頃(ちょうど「美しい旅 - 星と砂と少年。-」のプロジェクト終了の頃でもある)から、そうした体験が加速し、「アルケミスト」に書かれているような「前兆」や内側からやりたいことに突き動かされることが増えたように思う。何かが「聞こえる」とか「降りてくる」みたいなことではなく、日常の中で、何かの道が開ける感覚になることがあるのだった。それは、とても日常的なことだ。
私は40歳を過ぎて、セカンドキャリアを目指して看護大学を卒業したが、就職先を1週間で出るハメになった(2019年)。そのとき、気持ちを真っさらにしてやりたいことを書いたスケッチブックに、なぜか「砂漠に行く」がある。それから、ブランクを経て再就職し、対話に出会い、今度は自らの意志で仕事を手放した頃と同時期に、「アルケミスト」に出会っていた。
そして、コロナの渡航制限が解けた今、変化を求める心と、娘がバイトを辞めたタイミングがちょうど重なり、これ以上にないタイミングが目の前に現れた。4年前にうっすら思った砂漠に行くんだ。2年前、仕事を辞めた頃の自分は、スペインのタリファから、モロッコのタンジェに向かって旅立つサンチャゴに自分を重ねていた。しかし、今は違う。この旅では、一体何を感じるのか。「アルケミスト」は何か私に語りかけてくれるのか。
「マクトゥーブ」すべては1つの手によって、すでに書かれている。
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