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中村宣裕さん(堀内在住/8年目)【ひとから観える葉山#3】

中村宣裕 / 堀内在住。移住8年目。
純粋 REAL ESTATE
コミュニケーション統括部長
https://www.junsui.jp/

 うっすらつながりはあったものの、直接は会ったことがなかった中村宣裕さん(なかむー)。葉山町制100周年に向けて、「人と土地のつながり」について考えたいと思っていたとき、なかむーが葉山に越すまでのストーリーをFacebookに投稿していたのを目にした。「気持ちで選んだ地であり、この地に選ばれようといろんな動きをしたのかなと。」まさに、こういう話をしたいんだと思い、インタビューさせていただいた。

根っこにあった原体験〜葉山との出会い、建築への思い〜

大澤 まず、なかむーが今どういうことをしているのか、どんな経緯でそこに至ったのか、そんな話から聞いてもいいですか?

中村 私は、北海道の札幌で生まれて、生後3ヶ月で、親の転勤で大阪に引っ越し、そこに年少までいました。年中で、神奈川県のあざみ野の剣山に引っ越したんですが、その頃からやっと記憶がある感じなんですよね。9つ上と、6つ上の兄がいる3人男兄弟の末っ子なんですが、当時、父親が車を買うのに、私にトヨタかニッサンかどちらにするか選ばせてくれて。自分で選んだ車って嬉しいから、ドライブに行ったこととか覚えているんです。あざみ野から湘南や箱根方面を目指して走っていた記憶があります。両親が石原裕次郎好きだったから、きっと葉山にも行ってたと思うんですよね。その時、海側のくらしっていいなあと思いました。度々の転勤だったけれど、神奈川にはいい思い出やいい景色の印象が色濃くあるんですよね。海へのドライブもそうだし、車も選ばせてもらったし、学校も楽しかったし。小1で札幌に戻りましたが、絶対また神奈川に戻ってくるぞ、って思ってたと思います。

大澤 札幌ではどんな暮らしだったんですか?

中村 札幌では、鍵っ子だったので、夏は毎日学校から帰ってすぐに公園に行っては約束もしない友達たちと遊ぶのが日課でしたね。新聞配達の手伝いもして駄菓子代を稼いでいました。
 冬は寒いからほとんど家にいましたね(笑)。もちろんスノボやスキー、ソリもやったりもしましたけど、基本、ホームアローン見ながらコーヒー牛乳飲んで家の中にいました(笑)。 子どもの頃から、まちづくりや建築、インテリアに興味があったんです。当時、「大改造ビフォア・アフター」というテレビ番組が始まった頃もあり、人が生きてることって、全部建物に関わるんだなあと思ってたんですよね。
 寝るってこと一つ取っても、公園に寝るにしてもベンチの上だったり、地べたよりハンモックだったり、風除けのテントだったり、何かの建造物が守っていてくれるなあ、と。寒い土地に住んでいていたから、その感覚も強かったのかもしれません。それで建築に関する仕事に進めればいいなと思い、高校で理系に進んだんです。このことが今のスタートに近いですね。
 東海大学の付属高校からだと大学進学はエスカレーター式で行きやすくて。全国に東海大学ってあるけど、工学部建築学科があるのは湘南キャンパスだけで、進学面談の時、パンフレットを見たら、ウィンドサーフィンとか海の写真があって、神奈川に住んでた時のドライブとか楽しい思い出が脳裏に広がり、これはこの大学に行きたいって思いました。実際は、湘南キャンパスは秦野市なんで海まで原付で30分ぐらいで、海はありませんが(笑)。そこから札幌から単身1人暮らしを初めました。18歳の時ですね。
 大学時代は建築学科の模型や設計の授業も受けながら、150人ほどいるテニスサークルの会長もやるようになって、その頃からですかね、コミュニケーションに興味を持つようになったのは。好きな人も、苦手な人も関わったことないキャラの人もたくさんの人種がいて、でも会長という立場だったので、同じように接しなければならなかったりして、それに面白みを感じていました。大学時代は運転もするようになり、サークル活動で後輩たちを乗せて、海の方に行けるところまで行ってみようってなったとき、やっぱりというか、葉山に来たんですよね。森戸海岸のところにある石原裕次郎の石碑とを見て、「あれ?石原裕次郎って知ってる」ってなって。母親にそのことを話したら、「そうそう、子どもの頃にドライブで行ってたわよ、石原裕次郎の顔を撫でてあげるの」って嬉しそうに話してくれたのを聞いて、なんかこの場所に私がいることを家族や地域が認めてくれている、っていう感覚を持ったのを覚えています。
 大学を卒業して、建築家になろうというのはなくて、自分はリフォームをやりたいって思って、大手のリフォーム会社に就職しました。

内側の直感と外側の流れに導かれる

大澤 それは直感的にそう思ったんですか?

中村 そうですね、直感的に。家というものはずっと修繕していかなければならないだろうなと思ってたし、住まい手が暮らしをしていくにつれより心地よく生活できるようにすることに関心がありました。都内に勤務してリフォームの工事担当や営業もさせていただき、新規部署ができるとそこに配属!という異動が多い経験をしてたんですが、新卒7年目に転機が来て。入社した会社は三井不動産系のリノベ会社ですが、三井不動産って、まちづくり開発、商業施設、新築住宅、注文住宅、売買仲介、賃貸仲介、リフォーム、修繕など、それぞれの分野に会社が分かれているので、同じ三井の看板背負ったグループなのに縦社会的に営業して、横のつながりや顧客の紹介などが少なかったんですよね。そこで、そのことを解消する役割として一人のコンシェルジュがお客さんに寄り添って、暮らしの多面的な提案、例えば、新築マンションと中古マンションをみて比較することや、建て替えがいいか、中古リノベがいいかをできる形の営業する部署が親会社にできたんです。そこに会社から初めての出向者が私だったんですよ。これまで、リフォームや建築のことばかりだったけれど、宅建の資格もすぐ取得し、不動産の人や業界の話を聞くようになって、世界が広がったというか。これも運命かと。

 リフォームって、すでに住んでいるお客さんが「こうしたい・こう直したい・これが使いづらい」という思いがあって依頼され色々考えて提案しても、住んでいる経験がプロだからなかなか難しかったりもするんですよね。でも、不動産なら、0から携われるし、このコンシェルジュの経験を活かせば、新築も、中古も、リフォームも、賃貸もあらゆる方向から提案できるなと感じるようになりました。二級建築士も、宅建も持っているし。
 その出向先が武蔵小杉で、横須賀線一本で逗子駅(葉山町の最寄駅)までいけるじゃんいうことを知って、住んでみたかった葉山に住むには今しかないんだと感じ、職住接近が基本だった会社に掛け合い、上司の反対を押し切って無理言って葉山に越してきました。

葉山移住後の上司の一言「お前、表情が変わったな」

大澤 実際に葉山に住んでみて、どうでした?

中村 仕事で大変なことがあっても、一晩で忘れるようになりましたね。空を見上げて「夕日がきれいそうだな」と思ったら、そこから走って行っても日没に間に合うという条件で物件を選んだから、海にもすぐ行けるし、仕事と生活がいい具合に切り離されて、リラックスできるようになったと思います。それで、朝の活動時間に変わり、実際、仕事の効率も上がったし、上司からも「お前、表情が変わったな」と言われました。
 葉山に住むようになって、心の余白ができてくると、自分自身を見つめ直す機会も増えてきて、考え方とか、着るものとか、食べ物とか、自分は何が好きなんだろというのを考えるようになりました。実際、住んでいる人も、自分が好きなものが明確な人が多いし、そういう影響もあって。

 武蔵小杉と葉山を行ったり来たりしているうちに、自分が選んだ町でこんなコンシェルジュみたいな仕事をしたいと思うようになり、会社をやめて、鎌倉にある20−30人規模の会社に転職しました。不動産だけでなく、まちづくりにも関わる会社だから、いろんなことが学べるかなという思いもあって入ったんです。その時のトレーナーが現会社の社長でした。社長は今まで十数ぐらいの仕事やアパレル、音楽もやってきていて、私とは正反対に近い人生を送っている上司だったので、話を聞くだけでも面白くて。やっぱり価値観も違うんだけど、見ている方向や意識は一緒だったりして、そこからのご縁で私がありますね。大学進学で一人ポツンと神奈川に行かせてくれた親にも感謝ですね。色々な動きがあった中でのこの縁が結ばれる環境や、出会った方々は奇跡ですし、感謝ばかりです。

純粋 REAL ESTATE併設のコワーキングスペース。居心地がいい。

1つ1つの出来事が織りなす奇跡

大澤 いやあ、本当に、いろんなことが重なって、今、葉山に住んで、逗子に勤めて、葉山の物件に携わってというのがあるんですね。

中村 本当にそうなんです。父親がテレビ局に勤めて母親と結婚して、私が生まれて、親の転勤がなければ神奈川に来ていないし、葉山までドライブしてなかったら、大学で神奈川に出てきてなかったらとか、1つでも言葉や判断が違ったら今がないなと思います。こうやって、お話しさせてもらっている出会いも奇跡みたいなもので、それが本当に楽しいですよね、人生って感じ。

不動産のプロから見た葉山〜葉山をキャンプ場に例えると〜

大澤 なかむーは、葉山のどの辺に住んでいるんですか?葉山も場所によって、雰囲気が違いますよね。お客さんを案内しながら感じることもあるだろうけど、どんな感覚がありますか?

中村 まず、お客さんに葉山のことを説明するとき、「空が広い」ってよく話します。高い建物がないし、目の前は海、後ろは低山、そして、目の前が山、後ろは穏やかな海ともいえます。視界を遮るものがないんですよね。葉山に住む人のエネルギーとか、森が多いので、空気がきれいなことも、空の広さに繋がっている気がします。人も植物も光合成しやすいんだと思いますよ。
 私自身は、武蔵小杉まで通勤してたときに、バスで何分という縛りがあったのと、海まですぐに行けるという条件から、葉山の都会である堀内(元町)に住んでます。
 エリアの違いでいうと、お客さんと話す時に、自分がキャンプ地を選ぶ時にどんな環境がいいかを例えて話をしています。
 葉山の中でも、駅から近いところや区画割された住宅街、山際、海側、里山、同じ町でもそれぞれの起伏や起きている気が全然違います。風の吹き方や地域の雰囲気も違いますよね。なので、キャンプで例えると、昼間はキャンプ場でBBQとかするけど、寝る時だけは洗練されたホテルじゃないとという人のエリアや、川沿いの石が多い、誰もこないようなところでテントを張る人のエリアや、広大な芝生のキャンプ場でイベントも催せるところで人の交流が好きな人のエリアや、キャンプ場でも川寄りなのか海側なのか、森側なのか、その中でもキャンプ場際の僻地なのか、自販機側なのか、トイレ近いところなのか、テントなのか、コテージなのか、車内泊なのか、それぞれの過ごし方や自然との共生の仕方が違うので、それを葉山のエリアになんとなく当てはめていくようにしてます。
 同じ葉山でもエリアによって、乗ってる車の雰囲気も違えば、ガレージの様子も違えば、家の雰囲気も違えば、着ている格好や、履いている靴、持っているもの、生活していく上で必要なものまでエリアによって全然違う。このことがパーソナルごとに紐解かれると、エリアってその人の雰囲気の拠り所や落ち着くところがどこかというところの安心感が生まれるのでそれで決まってきますね。大まかにいえば葉山町というキャンプ場のどこに敷物敷きますか?という探し方です(笑)。

葉山は空が広い

葉山移住で生まれる心の余白〜生き方を見つめ直せる場所〜

大澤 最後に、改めてですが、なかむーにとって葉山はどんな場所で、これからどうなって行って欲しいかというのはありますか。コロナ後に、自然を求めて、移住者も増えている感じがしますが。

中村 先ほども言ったように、葉山は「空が広い」というのが一番ありますね。御用邸があったり、続いて別荘がたくさんできて、そこで働く人や移住者が増えた歴史があるから、外から来る人に対して、受け入れ態勢ができている感じがします。
 それと、やはり、ここに住んでいると、心に余白ができて、自分に生き方を見つめ直すチャンスがもらえる気がします。葉山は、駅もないし、不便ではありますけど、それを越えて集まって来る人は、自然を大切にする思いとか、ゆったりした暮らしを大事にする感覚が共通していると思います。自分の感覚を大事にできる人が多いから、人との関係性も適度な距離感だし。私自身も、会社都合とか、進学都合とかの外的要因でしてきた「引っ越し」と違って、葉山には選んで住んだ「移住」だったなと。それと、不思議なんですが、葉山に引っ越してきた人が次の移住先を離島や海外にするっていうケースが結構多いんですよね。葉山に住んだことで、自分が好きなものがよくわかるようになって、改めて住む場所を選んで行くのかなあという気もしています。より奥地に行こうとする人が多いですね。
 だから、これからも葉山案内をして、まずは好きになってもらって、選んで越して来る人に来て欲しいなと思いますし、ビジネスビジネスするより、ローカルの人が大切にされる店が増えて、暮らしを楽しむ町であり続けてくれたら嬉しいですね。だから、仕事の上でも、お客さんの今までの人生をよく聞いて、心地よく住めるニーズにあったこれからの場所をご紹介して、葉山を好きになってもらいたいと思っています。

大澤 でも、なかむーは、今度、葉山の南側に隣接した横須賀の秋谷に移るんですよね。

中村 実は、そうなんです。こんなに葉山推しなのに、なんで?って感じかもしれませんが(笑)。今の堀内の家は貸家だけれども、子どもができたこともあったのと、前々から持ち家に対しての意欲は強かったのですが、なかなかタイミングも合わずで。いい物件が出てもお客様優先で紹介してたので(笑)。
 なので、なかなか癖がある地ですが、やっと家を持つことに決めました。堀内に引っ越したときと同じように、夕陽が見たいこと、海から近いのは絶対の条件だったのと、予算と、いろいろ考えた末、秋谷に「ここに住んでみよう」と思える土地が見つかりました。秋谷から逗子に通勤する際に、必ず葉山は通るし、外から見ることで、かえって全体像が見えて、仕事にも活かせるかなというのもあると思っています。これからも、葉山の魅力をお客さんにお伝えして、葉山を好きになって移住してくれるような提案をして行きたいです。

(2023.01.13)

純粋REAL ESTATE


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