ほんとの自分の色。〜ひと色展〜ローアンバー
先生が「下書きはアンバーで描いて」と言った。
あんばー??
色の名前といえば、赤とか青とか黄色。
せめて、レッドとかブルーとか。
アンバーってなに?
絵の具のチューブに書いてあるカタカナを順番に読んでいって、「アンバー」を見つけた。
薄茶色ってとこかな。
これで下書き?
下書きといえば、鉛筆でうすく描いてあとで消すものと思ってた。
高校の選択科目で、美術を選んだ。音楽、書道、工芸、どれでもよかったけど、なんとなく美術がかっこいいと思ったから。
で、いきなり、この授業だった。
外に出て、風景を描く。
とりあえず見えるものを、アンバーで描く。電柱とか塀とか木とか空とか。
水をたっぷり混ぜたアンバーの絵の具は、なにを描いてもすごくきれいだった。楽しくてどんどん描いた。
「そろそろ色を入れて。始めは薄い色から。」って先生が言った。
まず空を塗った。塀を塗った。木を塗った。
たちまちわたしの絵は、幼稚になった。そうだった。わたしの絵なんてこんなもんだった。
それからずっと、高校の授業でも専門学校でも、自分の下書きを超える絵を描きたくて筆を持っていたのに、結局一枚も描けなかった。
暖かくて優しい、ローアンバー。
薄い色を重ねると、深みを添えてくれる色。
じゃましない、でも消えないでそこにいて、根っこを支えてくれる大地の色。
塗り重ねたたくさんの色を、全部削ぎ落として、ほんとの自分になったときに、ローアンバーで描いた下書きみたいに、きれいだったらいいなと、思う。
イシノアサミさんの、企画に参加させていただきました。
絵を習っていた時のことを思い出して書いてみました。アサミさんが書いてらした、この色のことが、まさになりたい自分だったので、とても腑に落ちた気がしてます。
アサミさん、いつもかわいくて優しい絵をありがとうございます。
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