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翠とカワセミとカヌレとお守り。
上の娘がお腹のなかにいた頃、わたしは女の子ってことがやっとわかっただけのその子を、かわせみちゃんと呼んでいた。
名前を考えている段階で、わたしがずっと考えていた「のんきちゃん」は自分で却下し、「朝ちゃんか夜ちゃん!」は夫に却下され、じゃあ色の名前で「青ちゃんか緑ちゃん!」って言ったら、緑ちゃんならいいかもってなって、じゃあ漢字は「翠」ね!ってなった。
で、翠という字を調べてみたら、「雌のカワセミ」という意味だった。その時のわたしの浅い知識のなかでは、「カワセミ」と言えば、けららけらけらけけらけらって笑う、笑いカワセミの歌しか思い浮かばなくて、えー?カワセミーー??って思って、2人で却下しました。
でもなんか、その名前が妙に頭に残り、生まれてくるまでずっと、かわせみちゃんって呼んでた。妊娠の記録ノートに、かわせみ日記というタイトルをつけたりしてた。
生まれてきた娘には、違う名前をつけたし、それ以来カワセミのことを特別に思うこともなく、20年以上がたったわけなんですが。
まさかこんなにも、カワセミのことを考える日が来るとは、思いもよらなかったです。
わたしが愛と尊敬を込めて、こぼーろさんと呼ばせていただいてる、拝啓 あんこぼーろさんの作品の、「カワセミカヌレ」。
これは、同じく素晴らしく素敵なエッセイを書かれている、折星かおりさんの世界を、こぼーろさんが素晴らしい小説で表現されたものです。
その登場人物である、まみちゃんが、わたしにとって他人とは思えず、その舞台の、ベーカリー喫茶に行きたすぎて、わたしが勝手にクロスステッチでお店のロゴみたいなものを作ってしまいました。
これを作るときに、カワセミの写真をたくさん見ました。なんてきれいな鳥なんだろう!!
羽根の色が美しい。羽根の色とお腹の色のコントラストがあまりにも美しい。
カワセミに特別な思いを持ち始めたころに、こぼーろさんから素敵な依頼を受けました。
小説に登場する、まみちゃんのおばあちゃんが作った、クロスステッチのカワセミのチャームを作ってくれませんかって。
実はそれ作りたいって思ってました!!!
だけど、クロスステッチのチャームってどんなものかわからなかったし、わたしはクロスステッチが大好きだけど、まだ初心者だし、細かいものはできないし、オリジナルを作れるわけでもなく、しかも、こぼーろさんの依頼は、羽根を広げたカワセミ。探しても参考にするパターンもなくて。困った。けど、絶対作ってみたい。
わたしが参考にした写真。ここから絵を描いて、クロスステッチの四角四角にしてく。
とりあえず、2種類作ってみた。
こぼーろさん、カワセミに見えるか不安なんですけど!ってこれを送ってみたら、カワセミには特別な思い入れがあるので、カワセミに見えないのは困る!と。
こぼーろさんが、そんなに思い入れがあるのなら、これはもう、どうにかせねば!
そして、優しいこぼーろさんがこんな感じ!って送ってくれた、飛んでるカワセミの絵を参考に、四角四角四角!!って作って、カワセミ色の刺繍糸を探して、チクチクして、出来上がったのが、これです。
出来上がったら早くお届けしたくて、慌てたので、完成品の写真を撮るのを忘れました。かわいくラッピングもしたのに、それも撮るの忘れました。
なので、こちらでご覧ください!
願いが物質化するって、なんだかとても元気が出る言葉です。
わたしにも誰かの願いを叶えることができたのが、とても嬉しいし、同時に、わたしの願いも叶いました。
日々生きてる誰かの、お守りになるような、持っていたらほっとするようなものを作るのが、わたしの願いなので。
こぼーろさんを、落ち込みや悲しみや寂しさから、少しでも守ってあげられるアイテムになりますように。
わたしにとって、カワセミがとても大事な特別な生き物になりました。縁があったのかもですね。お腹のなかでへその緒で繋がってたのかもですね。
カワセミカヌレが映画化されたりしたら、おばあちゃんの手元の手タレで出演したいです。
こぼーろさん。どうもありがとうございました。