青山通り歩いて左に曲がって階段降りたとこにあった好きな場所。
イントロのギターで手が止まった。
手仕事をしながら流してた配信ライブ。久しぶりに聴いた歌。
懐かしいというほど時間はたってない。
ほんの、2年前。
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わたしはこの人のライブに月に一回通っていた。ブラジル料理が美味しい小さなライブレストラン。
いつも同じテーブルについて、椅子をちょっと斜めにして、その投げつけるみたいな歌を浴びていた。
いちばん好きなアーティストではなかった。顔見知りも数人しかいなくて、行きも帰りもひとりなのもよかった。
いちばん好きな歌声は、刺さりすぎるし揺さぶられすぎる。にばんめに好きなのが、とても心地よくて、ちょうどよかった。
幸せすぎて、今ここで消えたら幸せのまま終えれるって思った夜があれば、もう苦しくて息してんの嫌なんだけどなって目覚める朝もあった。どっちにしても消えたいって思ってる。浮き沈みが激しい日々だった。
そのにばんめに好きなアーティストの歌は、すごく力強いのに優しくて、乱暴なように見えて紳士的で、論理的で、あったかかった。いつも救われた。
だけど、一曲だけ、とても悲しくなる歌があった。
君が欲しかったものがわからないわけじゃないのに、一緒にずぶ濡れになりたかったのに、この雨が止んだら君を置いてきぼりにするっていう歌。
すごく優しい歌なのに、震えるくらい悲しかった。
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たった2年前なのに、わたしはこの歌のことを忘れていた。
ふいに聴こえたイントロで、その時の全部が蘇って襲ってきたけど、悲しくはなかった。
なんにも変わってないって思ってたのに、この歌を聴いても、悲しくなかった。
息するのは楽になったけど、悲しくないのって案外悲しい。
乗り越えたくない辛さもあるよねって思いました。
✳︎そのお店は今はもう閉めちゃったんだけど、メニューにないハイボールが美味しくて、そのウィスキーの銘柄を教えてもらえばよかったって後悔してます。