イタリアで変態に遭った話

学生時代、よく旅に出た。
というとかっこよくきこえるが、実際は旅行会社が企画している学生旅行。
添乗員さんについて、多くの大学生とともに、バスでいろんな町を訪ねた。

大学1年のときに、友人と初めて海外へ行くことになった。
この友人というのは、大学の新歓コンパで知り合い、現在でも仲良くしてもらっている。

同い年でありながら、当時からしっかりとしていた彼女は「社会人になったらそんなに海外旅行とか行けなくなるから、いまのうちに安く海外に行った方がいいらしいよ!」と言っていた。

そのときはそんなに実感がわかなかったが、本当にそうだと思う。
決してグレードの高い宿に泊まれるわけでもなく、豪遊ができるわけでもないのだが、やっぱり海外に行くと、自分の世界が広がる。

少なくとも、日本のよさに気づくことができる。

また、友人との海外旅行自体がほぼ未経験であったため、それもまた勉強になる。

大学4年間、彼女とは数回海外に行くことになる。
ひとえに友人の懐の広さ、企画力、行動力に感謝。

その中でも、印象深いのは、イタリア&フランスの旅である。
記念すべき友人との初海外にふさわしいチョイスで、友人が手際よく予約してくれた。

イタリアの各都市をバスで周り、毎日違う宿へ宿泊するため、いま思えば、移動が長かったり、荷物の出し入れがあわただしかったり、終始落ち着かないわけだが、まったく気にならなかったのは、学生だったからかもしれない。

なにもかもがはじめて経験で、面白かったのだ。

添乗員さんもベテランのおばさんで安心感もあったし、何よりリモワのめちゃくちゃちっちゃいスーツケースが、彼女のスキルをすべて物語っていた。

イタリアのどこの町であったか忘れてしまったが、
自由行動の日で、夜8時頃にバスで宿に帰ることになった日があった。

先日行ったトレビの泉はスリだらけと聞かされ、現にどこかですられた大学生もいたりして、夜というだけで、なんだかこわかった。

誰もいないバスターミナルで待つこと数分、バスがきた。

そのときに乗ったイタリアのバスは、日本のバスに似ていたが、最後列の座席は、長いタイプではなく、二人がけの座席であった。

↑席数もろもろ適当です。

乗客は、われわれ2人と、男が1人。
この男というのがきわめて謎で、空いている席がたくさんあるにも関わらず、われわれの席の横に立った。

不審感。
すごい不審感。

わたしはA、友人はBの席であった。

「こいつ絶対スリ」
「こいつ絶対スリ」
「あやしい」

と、日本語で2人で言いながら、バッグをしっかりと膝の上で抱えた。

添乗員さんが、何度も何度もスリに気を付けろと言っていたおかげで、われわれは不審感に敏感になっていた。

(とられてなるものか…!!!)

これしか考えていなかった。

それにしても、一向にアクションを起こさない。
というか、しっかりとバッグを抱えているし、すられないことに対しての絶対的な自信があった。

なぜ、まだいる。

とくに男と近い友人は「こわいんだけど!!」とずっと言っていた。

「大丈夫!大丈夫だよ」と、はっきり言って友人をはさんでいるから少し気持ちに余裕があるわたしは(←)、窓の外の景色に目をうつしながら、友人を鼓舞した。

すると、あれほど弱気だった友人の声が聞こえなくなった。

ふと気になったわたしは、友人を見た。

友人は、右下を直視していた。

下半身が…(以下ご想像ください)

いままでスリだと疑わなかった相手が、変態であったことが確定した。

人間、このような時にどのような心境になるか。

わたしと友人の場合、
①友人が右下を直視
②わたしは友人の目線を追う
③至っている
④友人と顔を見合わせ、爆笑

となった。
マンガのように、きれいに起承転結。

「この人やばくない!?!?」
「マジでヤバイんだけど!?!?」
「うける!!」

急に強気。

変態認定されたところで、われわれは、誰かに言う、バスの運転手に告げ口する等、決して途中下車しようとしなかったところがなんとも言えないが、結果、席を変えようとなった。

バス停でバスがとまった時に立ち上がった。
すると、男は一目散に外へ駆けていった…

このあとは、無事に宿につき、興奮冷めやらぬ感じで添乗員さんにことの顛末を話した。

いまでも笑い話だ。

帰国し、両親に話すとだいぶ叱られた(心配された)。
たしかに、自分のこどもが同じ目にあっていたら、わたしも不安で仕方ない。
本当に無事でよかった。

この経験から、海外にいる際は、女子同士で夜遅くまで出歩くのは避け、夜はバスや電車などに極力乗らないように心がけている。

もちろん日本でもありうる話ではあるが、初めての経験であったため、日本がひどく安全に感じた。

そのあとも、この友人とは色々な場所へ行ったが、すべて平和な旅であった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?