【ここに来るまで】 1994年 高校の英語教師だった僕が日本語教育の直接法の授業参観で受けたショック
REXプログラムへの選抜
公立高校の英語教師だった僕のキャリアの転機の一つは、文部省(当時)の「外国語教育施設日本語指導教員派遣事業」(REXプログラム)に選抜されたことでした。この選抜により、日本語教師としてニュージーランドへ20ヶ月間派遣されることが決定しました。
REXプログラムに参加したいという願望はありましたが、群馬県は教員の公募制度でなかったため、たまたまあのタイミングで選抜されて派遣されたのは本当に幸運でした。この「たまたま」は、その時には全く予想していない未来と繋がっていくことになります。
東京外国語大学の留学生日本語センターでの4ヶ月の研修
高校で5年間の英語教育の経験はありましたが、日本語教育については知識も経験もありませんでした。そのため、派遣前の準備として、東京外国語大学の留学生日本語センターで日本語教育に特化した約4ヶ月間の集中研修を受けることになりました。この研修は、全国から選ばれた22人の先生方と共に学ぶ貴重な機会であり、僕にとって大変充実した時間でした。
直接法の授業参観
研修の中で特に衝撃を受けたのは、直接法による日本語授業の参観でした。
留学生日本語センターでは、日本政府の奨学金を受けて世界中から集まった国費留学生が、大学進学前に日本語を集中的に学ぶコースがあります。学習者は様々な国から来ており、共通言語がないため、全て日本語で行われていました。
直接法は学習言語だけで場面や状況が提示され、学習項目を帰納的に学んでいく教授法なので、教師の力量と準備がとても重要です。教授法の一つとして、もちろんメリットもデメリットもあります。メリットとしては最初から学習言語の多量のインプットとアウトプットの機会があること、デメリットの一つは学習者の理解度を把握しにくいことなどがあります。
僕は英国の大学での交換留学時に、大学の講義が始まる前にロンドン郊外の英語学校で1ヶ月間、英語の直接法授業を受けたことがありました。しかし、自分の母語である日本語での直接法授業の参観は全く新しい体験で、ショックを受けました。
当時教えていた高校での英語の授業は受験対策中心だったこともあり、本来の語学教育のあり方や、コミュニケーションを中心とした語学教育実践について考える機会となりました。そして、言語習得研究への関心が深まり、これがその後の修士号、博士号の研究につながっていきました。
この直接法参観の体験は、未知の分野との出会いが視点を広げ自己成長につながることを教えてくれました。30年経った今でも大切にして、意識していることの一つです。
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