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推しとM-1と私(M-1グランプリ2024開催によせて)

もう今から10年以上前のこと、わたしが大学生の頃。メディアの授業の初回導入で、教授が学生一人ひとりに「好きなテレビ番組」を順に聞いて回ってくる時間があった。そんなに人の多くない授業だったので、教室にいた全学生に聞いていた。その後、教授が何の話をしていたかとかは覚えていない。
けど明確に覚えているのは、順番が回ってきたときわたしははっきりと「M−1」と回答したこと。それまでに聞かれた学生たちが毎週レギュラー放送している、あるいはしていた番組ばかりを挙げていくなかで、教授はわたしの回答を聞いて一瞬 頭の上にハテナが浮かんだような表情をしていた。

めちゃくちゃオタクの自己顕示で恥ずかしいなと思う記憶ではあるものの、でもまあ、とにかくわたしは旧・M−1の時代には、それくらいM−1グランプリというテレビ番組、ドキュメント、賞レースが大好きだったんだと思う。


M-1をリアルタイムで見た最も古い記憶は、多分2004年のアンタッチャブル優勝回。それから少なくとも旧M-1が終わる2010年までは必ずリアタイしていた。
いつもM-1が終わってからチャンピオンを好きになることが多いわたしが今までで最もハラハラしながら見たM-1は間違いなく2009年。前年チャンピオンであるNON STYLEが連覇を狙いエントリーした回である。

NON STYLEのこと、優勝前から好きは好きだったけど優勝して露出が増えてもっと好きになっていた。わたしにとっては「好きな芸人が出る賞レース」をちゃんと見るというのは初めての経験だった。


2009年12月。
お弁当の時間が近づくお昼の教室で、机の中にガラケーを隠しながら情報を更新しまくった決勝進出者発表の日。塾に行く途中のセブンイレブン、おにぎりコーナーの前、ケータイで彼らのエントリーナンバーをもう一回確認して噛み締めた敗者復活戦間近のあの日。全部ありありと蘇る。

敗者復活戦の結果は、決勝1stステージが始まってからオンエア中に発表される。
司会の今田さんが、エントリーナンバーとコンビ名が書かれた手紙を受け取る。封を開けて、エントリーナンバー4603番、とそこまで読み上げられた時点で、居間のテレビの前で正座したまま前のめりになって「ウワッ」って声が出てしまったこともはっきりと覚えている。


当時はわたしもまだ若かったけど、あの頃だって「優勝してほしい」とかの一言で終わらせられるほど単純な気持ちではなかった。優勝翌年にまた出場することをよく思わない人たちもいる中で、彼らに傷ついてほしくない気持ちもあった。けど、それ以上に「初めて『連覇』に挑んだのが彼らであるならば、そんな彼らの熱量が報われる結果であってほしい、どうか負けないでほしい」と願っていた。
敗者復活から勝ち上がってきた彼らを見て、出来すぎた物語だと思った、けど負けた。悔しかった。

その年チャンピオンとなったパンクブーブーのネタは面白かったし、彼らのことを憎いと思ったことも一回もない。もちろんNON STYLEに失望もしていない。
本当は、本人たちが『俺たちが一番おもしろい』と思えるならなんだって良かったのかもしれない。ただそれを証明できるものがM-1優勝しかないのなら、彼らがそれを望むなら、叶ってほしかっただけ。

あの時の負けにこだわっているわけじゃない。その挑戦をやってのけた彼らを応援できていることが誇りでもある。
わたしがM-1を好きだから、わたしはM-1を好きな芸人のことが好きなだけ。



昨年 2023年のM-1グランプリ、優勝が決まった後のエンディングで令和ロマン・くるまさんが「来年も出ます!!!」と言ったとき、言葉にならない感情が湧いてきた。
「優勝直後に『来年も出ます』って。なにそれ、聞いたことねえ。めちゃくちゃ楽しんでるやん。M-1に出ることが楽しい人やん。そのスタンスは、わたしが好きなやつやん」。
その瞬間はまだ、令和ロマンを追いかけることになるとは1ミリも想像していなかったのに。

連覇狙いのチャンピオンなんて長年いなかったから、ノンスタやパンクが特異だっただけでまあそういうもんだと思ってた。というか、普通、多くの場合、「まあそういうもん」だと思う。

ところがどっこい現れてしまった。出会ってしまった。M-1でワクワクさせてくれるコンビ。


年明けからジワジワと彼らに脳内を占拠されるようになり、春くらいからそれなりに現場に足を運ぶ生活をしてきました。
配信を買ったり、関西に来る際には寄席を観に行ったり。勝負できるネタ数の多さには圧倒されました。特に最初のうちは、こんなに観る公演観る公演ネタが違うのかとびっくりしました。
チャンピオンイヤー、こんなに劇場出ずっぱりなことある?と驚くほど全国の劇場、色んなライブに出まくっていたように思います。わたし自身は関西から動いてないのにそれでこんなに現場入れるの嘘みたいだなと思ったし、何なら今もまだ思っている。
チャンピオンの漫才をたくさん追えた2023年、本当に楽しいものでした。


そしてまた今年もM-1が幕を開けました。こんなにコンスタントに劇場に通いながら現役M-1戦士を応援するのは、長いオタク人生の中でもなんだかんだ初めての経験です。
めちゃくちゃ楽しみなんだけどめちゃくちゃ胃が痛くて、でもそれも込みで楽しんでいるつもりです。



M-1グランプリ2024、一層の盛り上がりを期待しています

願わくは、前人未到のM-1連覇を叶えたチャンピオンの姿が見られますように



#推しの芸人 #M1グランプリ #お笑い #エッセイ #令和ロマン #NONSTYLE


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