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【ロンドン発】2024年週刊ジャーナル(10月14日~10月20日):ロンドン在住ライターが見たこと、感じたこと。


10月14日:「バンドはツアーで、より多くの町や都市をスキップしている」という田舎出身の私には心が痛むニュース。


 英国の多くの町や都市では、1990年代に比べてライブ・ミュージックが激減している。ミュージック・ヴェニュー・トラストの最新の統計によると、1994年には22公演が行われていた草の根ツアーに対して、今年は平均11公演だったという。ライブ・ミュージックの業界団体Liveの最高責任者であるジョン・コリンズ氏は、この数字について、「中規模キャパのヴェニューやアリーナ・レベルのツアーについて我々が聞いていることと一致します」と語った。
 リサ・ナンディ文化相は金曜日に開かれた音楽業界の会議で、昨年100件以上の音楽ヴェニューが閉鎖され、「この国の多くの地域が文化の砂漠と化した」と語った。「より幅広く、より豊かな人生を送るチャンスは、私たちみんなのものであるべきです。さらに、ポップはよりポッシュになりつつあります」。
 2005年からGet Cape Wear Cape Flyとして活動し、現在はミュージック・ヴェニュー・トラストとともに活動しているシンガーソングライターのサム・ダックワースは、大物アーティスト、ヴェニュー、プロモーター以外のすべての人にとって「危機が渦巻いている」と語った。「私の最初のメジャーツアーは54公演でした。今ではそんなツアーなど行えません」と、マンチェスターで開催されたBeyond the MusicカンファレンスでBBCニュースのインタビューに答えた。「それが本当に意味するのは、国内のある地域のファンは、長距離を移動するしかないということです。それは経済的な危機だけではありません。国内には、1時間半かけて行くしか選択肢がない地域が広がっています。しかも、あらゆるものが値上がりしています。コンサートチケットだけでなく、移動費も。ですので、おそらく、私たちが否定しなければならない業界の秘密のひとつは、ギグを開催するのにどれだけの費用がかかるかということになります。バンド・メンバー全員のギャラを確保し、移動のバンにガソリンを入れ、全員がホテルに泊まる必要があるとしたら、ギグを開催するのに何千ポンドもかかることになります。会場費やスタッフの人件費もカバーしなければなりません。コストが上がり過ぎて、ツアーが赤字になってしまうなら、アーティストが収支を均衡し、その赤字を食い止める最善の方法は公演を減らすことしかありません」。
 ミュージック・ヴェニュー・トラストによると、同トラストのメンバーは通常、年間約2000万枚のチケットを販売しているが、今年は1500万枚まで落ち込む見込みだという。「私たちのコミュニティにおけるライブ・ミュージックの総量は劇的に減少しており」、「ツアー・サーキットに含まれる場所の数は年々少なくなっている」と、同団体は述べている。
 ビヨンド・ザ・ミュージックでも講演したコリンズ氏は、次のように語った。「私たちは、国際的アーティストが英国をスキップしたり、英国で6公演する代わりにロンドンで2公演にする、という話を耳にします。ツアーを組むとなると、マンチェスターでやる意味はあるのか?バーミンガムは?もしその2つをやるなら、リーズとリバプールでもやる意味があるのか、それともこれらの都市は近すぎるから、(都市を減らして)ファンを通わせるべきか?そのような議論の後、最終的に、ロンドン、マンチェスター、バーミンガム、グラスゴーといった国の背骨となるようなツアールートが取られ、その結果、国の大部分がそれらのアーティストを見る機会を失ってしまうというリスクがあるのです」。
 コールドプレイは、来年の夏にHullで公演することを選択し、その傾向に逆らった。Hullのクレイブン・パーク・スタジアムとロンドンのウェンブリー・スタジアムは、コールドプレイの2025年ワールドツアーにおける唯一のイギリス公演会場となる。他の都市のホテル、バー、タクシーなどのビジネスは、バンドが訪れないと収入を逃すことになり、海外のアーティストは、短いイギリス・ツアーのためにイギリスのクルーを雇わないことが多い、とコリンズ氏は言う。彼は政府に対し、ギグチケットにかかる付加価値税を20%から引き下げることを望んでいる。フランス、ドイツ、イタリアなどでは10%以下だ。「この税制は、我々が行えるショー、ツアー、フェスティバルの数に誤った上限を設けることになる」と彼は言う。これに対し、財務省の広報担当者は「財政的なイベント以外での税制改正に関する憶測についてはコメントしません」と答えている。
 また、音楽会場トラストは、小規模ヴェニューを支援するために、すべてのアリーナやスタジアムでのコンサートに1ポンドの課税を行うよう求めている。今年初め、下院の特別委員会は、音楽業界が9月までにこのような補助金を導入することで合意に達しない場合、政府はそれを法的義務にすべきだと述べた。その期限は過ぎ、Live業界団体は資金を分配するための信託を設立している最中だが、コリンズ氏は業界内で合意に達するのは「複雑」だと語った。「標準的なスキームの合法性と実行可能性については、業界全体で見解の相違があります」。一方でコリンズ氏は、ウェンブリーとHullでの公演収益の10%をミュージック・ヴェニュー・トラストに寄付するコールドプレイの取り組みに倣うアーティストを増やすよう呼びかけた。
 このようなスキームは、ハリファックスの地元レベルではすでに行われており、6,000人を収容できる野外会場、ザ・ピース・ホールのチケット売上が、他の5つの小規模な会場の補助金となっている。初年度は、各会場に少なくとも6500ポンドが支払われ、施設の修復に充てられる予定だ。
 ナンディ氏は会議で、政府は「ライブハウスの閉鎖と、既存のライブハウスが今直面している大きな課題を深く憂慮している」と述べ、この問題は「確実に政府のアジェンダのトップにある」と語った。さらに、音楽教育や楽器へのアクセスを改善するための他のイニシアティブの中で、空きビルをコミュニティ所有の会場にする手続きを簡素化したいと述べた。ナンディ氏はチケットの徴収については言及しなかったが、文化・メディア・スポーツ省のスポークスマンは、「草の根からメインステージまで、才能あるミュージシャンのキャリアを支援するために、音楽業界が自主的な徴収を検討していることは心強いと思います」と語った。

BBC:Bands are skipping more towns and cities on tour

地方出身者にとっては、頭の痛い問題。宮崎なんて陸の孤島なので、すっ飛ばされることの方が多いが、ファンであることには変わりないし、観たい気持ちは募るばかり。だからこそ宮崎をツアー日程に組み込んでくれるアーティストには感謝しかなかった。幸運なことに、今はロンドンに住んでいるので、スキップされることはまずないが、地方在住者にとっては、たった一夜のコンサートが大規模な移動を含むとなると、それはもう一大事だろう。チケット代が家計を圧迫するようなことがあってはならないとは思うが、その負担がアーティスト自身やスタッフにかかってくるというのも問題だ。しかし、記事で述べられているハリファックスのように、黒字の出る大規模ヴェニューの利益の一部が小さいヴェニューに分配されるというのはとても良い取り組みだと思う。とは言え、コールドプレイのような大物アーティストが公演収益の一部を寄付するというのを、道徳上義務化しても良いのではないかと思うのだが。



10月15日:「No10は、テイラー・スウィフトのチケットが英首相への”お礼”だったことを否定」というニュース。ダウニング・ストリートのキア・スターマー卿は、8月にウェンブリーで開催されたテイラー・スウィフトのコンサートに警察がエスコートしたことへの "お礼 "として、テイラー・スウィフトの無料チケットを受け取ったことを否定した。

 スウィフトはロンドンのスタジアムに向かう途中、警察からこの手配について当初は難色を示されていたにもかかわらず、バイク護衛を与えられた。ダウニング・ストリートがロンドン警視庁に肩入れしたことに対する "お礼"なのかと問われ、首相の公式スポークスマンはこう答えた。「そのような表現は完全に否定する。このような大きなイベントに関する運営上の決定は、最終的には警察に委ねられている」。
 2 人の政府筋が BBC に語ったところによると、首相のチーム幹部は、彼女の警備態勢をめぐってマネージメント側と接触したという。ダウニング・ストリートはこれを否定することを避けたが、スポークスマンは次のように述べた。「主要なイベントを安全かつ円滑に進めるために、政府がそれに関する取り決めについて話し合い、対話することは正しいことです」。
 しかし、政府筋によれば、キーア卿はコンサートのチケット4枚(2,800ポンド相当)を、彼女のレコード会社ユニバーサル・ミュージックから受け取った。というのも、この会社はロンドン中心部の彼の選挙区に本社を置いていたからだ。後日、サー・キアーはユニバーサルにチケット代を返済した。首相とその家族は、スウィフトと母親のアンドレアと10分ほど話をしたようだが、その会話は、テイラー・スウィフトをテーマにしたダンスワークショップで起きたサウスポート襲撃事件についてのみだった。
 テイラー・スウィフト・コンサートの無料チケットを受け取った労働党の政治家には、ダレン・ジョーンズ財務長官や、ベッケナムとペンゲの議員に当選したリアム・コンロンがいる。イヴェット・クーパー国務大臣とサディク・カーン・ロンドン市長が、ウィーンでのライブがキャンセルされたことを受け、テロ計画阻止のために警備について協議していたことが先週明らかになった。クーパーとカーンの2人は、ウェンブリー公演の無料チケットを受け取っていた。

BBC:No 10 denies Swift tickets were 'thank you' to Starmer

テイラー・スウィフトのロンドン公演が行われた8月、このブログには書かなかったものの、私は怒っていた。それは、首相であるスターマ―とロンドン市長のサディク・カーンが同シンガーのコンサートでの自撮りをSNSに投稿していたからだ。それはシンプルに、チケット代が高すぎて手が出ないティーネージャー達や、さらには生活費の高騰で食料すら買えない国民がいるのに、一人500ポンドもするコンサートに家族と出席し、にこやかに写真撮影などしている政治家たちに無性に腹がたったからだ。さらに言えば、彼らはチケットすら購入していないわけで、私はこれは特権の誇示だと怒り狂った。しかし、彼らの挙動に違和感を感じたのは残念ながら私だけだったようで、夫は「国民と同じ趣味を持つ政治家として親近感を味合わせるためのPRだよ」と言っていたし、別の友人は夫の言う通り、首相に親近感が沸いたと言っていた。なんとおめでたい!テロ予告によるウィーン公演のキャンセルやサウスポートでの惨たらしい事件の後、今回のロンドン公演が何事もなく終了したのは、ほんとうに良かったと思うが、国民が安全に過ごすためのセキュリティー対策は政治家の義務であるわけだから、それをやった後の見返りをSNSなどに投稿するのは逸脱した行動だと思ったのだが、あの時はいまいち周囲の同意が得られなかったのだ。しかし、今このようにBBCが取り上げるのには、やはり違和感をぬぐい切れないからではないのかね?


10月16日:これちょっと面白い。英国人が良く使うWhite Lie を並べてる。

Everything's fine.
I'm on my way.
I don't remember.
I am listening to you.
It's not you, it's me. 

イギリス人がこれを使ったら、本心ではないことを覚えておきましょう(笑)。


10月17日:1984-85年のマイナー(炭鉱)・ストライキから40周年を記念する写真展が、ベスナル・グリーンにあるフォーコーナーズで開催されていたので、ちょこっと行ってきた。『ONE YEAR!』と題されたこのエキシビションは、ストライキ中に写真が果たした重要な役割を探求し、抵抗の道具として写真を使用することに内在する力と矛盾を探求することを目的としている。

警察の列や暴力といったアイコニックなイメージもあれば、「炭鉱閉鎖に反対する女性たち」や「鉱夫を支援するレズビアンとゲイ」といったグループによるコミュニティ支援も描かれている。写真は、世論を動かし、イギリス史におけるこの変革期を記録した。

マイナー・ストライキに関するドキュメンタリーをまとめたので、こちら(↓)も読んで欲しい。

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ランチはブロードウェイ・マーケットのカフェで。

クリエイティブなサラダの盛り合わせが美味しかった。夜はバーになるようなので、再訪したい。


10月18日:こういうの日本ズルいな~と思う。あまりにもゴージャス過ぎて、失神しそう。でもなぜ東京だけなの??


10月19日:友人宅で、持ち回りのディナー。いつもの4夫婦が集まった。例の家を大規模レノベーションした友人夫婦宅がベニューだったので、お宅拝見から始まった。ウチもそろそろキッチンの改装をしないとマジでヤバいレベルまできているので、いろいろと参考にさせてもらいながら各部屋をまわった。食事はあまり美味しくなく、食べきれなかったので少し罪悪感。しかしながら、ホストの旦那の方が、80sミックスをBGMに延々と流していて、会話がまったく頭に入ってこなかった。


10月20日:英コメディアン、ポール・チャウドリーのスタンダップ・ショーを観に、ブルームスベリ―・シアターへ。

スカイTVの撮影ショーだったので、チケットを買った時点でカメラに映るのをご了承くださいとのことだったのだが、席が割と近かったので、マジで映ってるかも。彼のコメディーは基本、白人とインディアンのカルチャーの違いをネタにするものが多いので、オーディエンスはアジア人が半数以上を占めていた。放送できるんかいな!?というギリギリのネタもあり、会場は大爆笑。大いに楽しませていただきました。

ちなみに前座は、Tom Ward。この人も結構長くコメディアンしてる。

RIDEのTシャツ着てるから、親近感爆上がり。

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ディナーは、Coal Drops Yard のMere Street Kitchenで。

値段の割にはポーションがジェネラスだった。

日曜夜だったからか、ひっそりしていたけど、来がけに通ったDishoom は行列が出来ていた。Paul Choudhry 曰く、Dishoomは白人のためのインド料理店なのだそうだ。まあ、ウマいがな。


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今週の1曲:Dexys Midnight Runners, Kevin Rowland - Come On Eileen (1982 Version)

土曜日のディナーでBGMだった80sミックスの中の1曲。久々に聴いて頭から離れないんだけど。

そしてCome On Eileenといえば、『The Perks of Being a Wallflower(ウォールフラワー)』のこのシーンも好き。


(今週終わり)

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