見出し画像

“Oscar for Husavik (Husavik にオスカーを)!『ユーロビジョン歌合戦 ファイア・サーガ物語』がアイスランドの小さな漁港町にもたらした大きな希望。

昨年6月にNetflixで配信された、「Eurovision Song Contest: The Story of Fire Saga(邦題:ユーロビジョン歌合戦 ファイア・サーガ物語)」。ウィル・フェレル主演という事もあって、期待が高すぎたか、評価はイマイチだったが、実は、この映画でレイチェル・マクアダムス演じるシグリットが歌った曲『Husavik (My Hometown』が(実際にこの歌を歌ったのは、スウェーデン人のポップシンガー、Molly Sandén)、オスカーの「ベスト・オリジナル・ソング」部門にノミネートされ、地元が大いに沸いている、という。
アイスランドに行ってみたくなったぞ、と思わせた、FTウィークエンドの記事(筆者注:この記事が出た時は、まだショートリスト内だったが、先日15日に正式にノミネートされた)を紹介。

北アイスランドにあるHusavik は人口2,300人(とニシツノメドリ7万羽!)とクジラ博物館がある小さな漁港町。この町の名前を冠につけた曲があのオスカーにノミネートされているのだから、町民達が盛り上がるのも無理はない。現在は、“Oscar for Husavik (Husavik にオスカーを)”キャンペーンまで繰り広げられ、宣伝ビデオでは子供達が『Husavik (My Hometown)』を歌い、エルフに供え物をし、漁師がタラに(まるで勝者がオスカー像にするように)キスをしている。

実はHusavik が、一つの曲をきっかけにムーブメントを引き起こそうと躍起になっているのには訳がある。アイスランドの観光ビジネスはコロナ・パンデミックにより大打撃を受けており、2020年の最終四半期にはツーリストの数は前年の同時期に比べると96パーセントも落ち込んだ。そのなかでも、住民の3分の1が観光収入に頼っている、Husavikのような小さな町への衝撃はことのほか大きく(昨年6月には100人以上が職を失った)、今まで自分たちの生活に何の関係もなかったあのハリウッドが救世主になり得る可能性があるので、この機会を絶対に逃したくない、と言うのが本音なのだ。

しかし、なぜこのようなアイスランド北部の小さな町が、ハリウッド・コメディ―の撮影場所に選ばれたのだろうか?それは本当に偶然だったようだ。ウィル・フェレルがスウェーデン人の妻であるViveca Paulinの実家を訪れていた際、たまたま「ユーロビジョン」をTVで見たのがきっかけだったという。フェレルはそのキラキラした衣装や賑やかな舞台パフォーマンス、歌唱力抜群のコンテスタントなどを見て、すぐにこれはコメディ―映画にできる可能性がある、と確信した。ただ、主人公をスウェーデンではなく、アイスランド出身にしたのは、アンダードッグであるがゆえにもっとドラマ性が生まれると思ったからだという。じゃあなぜ、Husavikだったのか?それは、「共同ライターのアンドリュー・スティールがたまたま地図で見つけたから」ーーFTライターのトム・ロビンスは「恐らくHusavikは他の町Skagafjordur やSiglufjordurに比べると地名が短く、 Hofnのように発音が変わっている訳でもないので、歌詞にしやすい地名だったのだろう」と推測するーーと言うが、本当だとすれば、ラッキーとしか言いようがない。

映画は2019年、主演のファレルやマクアダムス、そして父親役のピアース・ブロスナンをて招いてHusavikで撮影され、地元のエキストラも多数出演した。映画自体は昨年の6月に配信されたものの、評価はイマイチ。さらに2020年の「ユーロビジョン」は、コロナ・パンデミックにより、その64年続いたその歴史上初めて開催が中止され、Husavikは、町興しの機会を逃してしまった。しかし、その間も『Husavik (My Hometown)』はどうやら一人歩きをしており、オーストラリアでチャート8位、カナダで15位、そしてアイスランドでは2位に輝いた。またアメリカではサウンドトラックの売り上げ部門で5位、そしてグラミー賞にもノミネートされた。

そして、ここにきてオスカーである。
「オスカーのノミネーションから授賞式まで約1か月半あり、少なくともその間はHusavik がスポットライトを浴びることができる。ここの観光ビジネスのほとんどは地元の小さな会社でまかなわれており、次の観光シーズンに向けて、少しでも多くの観光客を迎えるべく、準備をすすめている。コロナ禍で暗い日々が続いていた中、この映画が私たちを前向きな姿勢にしてくれたことに感謝するよ」と担当者は語る。

もし、この夏にこの小さな町を観光で訪れる人があれば、彼らはエルフの家やケープ・ホテル内の❝Jaja Ding Dong❞バーなど、撮影場所のツアーに参加できることになる。使われていなかったウェアハウスをユーロビジョン・ミュージアムにする準備もすすめられており、映画で使われた衣装や、実際にユーロビジョンで出演者たちが身に着けていたものも展示される予定だ。

担当者は「以前は、観光客の10人に8人はクジラ・ウォッチングが目的でこの地を訪れていたが、これからは、ユーロビジョン物語のイメージを持ってやってくる人もいるだろう。今年は良い年にしたいね」と語る。


2分弱の短いプロモーションビデオですが、本当にかわいい町。エルフの家も見たいし、オーロラも見たい!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?