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事故物件の幽霊


人の運命は生まれながらにして決まっているんじゃないだろうか


そう思えてくる私の平たい手のひら。


手相の線はあまりにも薄く、


『あがいても、もがいても、何もつかめないよ』
 と、語りかけてくる。


小説家を目指す木村真理子(きむらまりこ)は、
そう思って、掲げた手のひらを降ろした。


事故物件の部屋。
古いアパートの、西日だけがやたらと差し込む部屋。
畳の上にゴロンと横になって、何時間経っただろうか。


跡形もないし、安いし、幽霊なんて怖くないし……。

いっそ、ここに幽霊が出てきてくれたら、ネタになる。
幽霊とラブロマンスとかどうだろう……


そう考えていたら、

西日に照らされた、透明な幽霊が現れた。

「なんだぁ……、姿も形も見えないのかぁ……」


真理子が言った瞬間、幽霊の振り上げた腕が
真理子を引き裂き、血しぶきがあがった。

真理子の返り血で、幽霊の造形が真っ赤に浮かび上がってくる。
意外とイケメンじゃないか??

そう思いながら真理子はこと切れた。。。




………… ああ、……ダメだ、これじゃつまらない。
幽霊の腕が、私を引き裂きって。
どこを?どうやって?

幽霊は透明じゃない方がいいのかな、
白かな。黒かな。

そもそもそんな次元のことではないか……。


小説を考えるのは楽しい。
目の前の景色をどんな風にも変えてくれる。

でもわかってる。
私の話は面白くない。


もう疲れた。
いっそのこと、再び事故物件にしてしまおうか……。

そう思っていたら、今度こそ
本当に透明の幽霊が現れた。

『死んだら本当に何もできなくなるよ。休んでいいよ。ゆっくりしなよ』


案外幽霊って優しいものだな、と真理子は思った。



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【血しぶき・ゆうれい・一人暮らし】

の三題噺、作りました。

体調を崩し、熱にうなされながら書いたので
そういう感じが出てるようなw

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