発熱と散髪
めんどくさい……。
シンクを見た加奈子はため息交じりにつぶやいた。
息子の夏休みが終わり、やっと1人になれると思ったのに
風邪をひいて熱を出した。
解熱剤を飲もうと思ったがコップがない。
夫や息子が散々、新しいコップを出しては
シンクに置いていくのだ。
よれたスポンジに洗剤を出してガラスのコップを1つ洗う。
水を出したとたん、全身が震える。
(早く……早く……薬を飲まなければ……)
ビショビショのコップに水を入れ、薬を飲みこんだ加奈子は
倒れるようにソファに眠った。
シャキ シャキ ……
しばらくして、はさみの音が聞こえてきた。
振り返るとエグザイルにいそうな、色黒のイケメンが
真っ白な歯を見せて
「それでは切っていきますね」
と二コリと笑った。
「あ……はい……」
あたりを見回すと、真っ白で爽やかな美容室に加奈子はいた。
こんなイケメンが切ってくれるならキレイになれそう……。
加奈子が目を閉じた瞬間ー
ピンポーン
インターホンが鳴った。
(なんだ……夢か……)
加奈子は よろよろ と玄関へ向かい、
ドアを開けた。
「うわっ!バケモンだ‼」
扉を開けた加奈子を見て、息子が叫んだ。
「んもー、もう学校終わったの?」
加奈子は眉間にシワを寄せながら靴箱に張り付いている
全身鏡を見た。
どんな寝相をしたらこうなるのか……。
爆発に巻き込またコントのような髪だ。
元気になったら、絶対にイケメンのいる美容室へ行こう。
加奈子は心に誓った。
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【洗剤・はさみ・薬】をお題にして、
3題噺、のショートストーリーを作りました。
考えるのに30分、文字に起こすのに30分、何とか1時間で完成した。。。
これを毎日続けていれば文章力がつくと思いたい。。。
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