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あまのじゃくだね、天野くん。その2
先日書いた短編小説の続きです。
告るねと言ったレナが天野へ向かっていく。田中と松尾は肩を寄せ合ってそれを見守っている。
「天野くーん」
食べ終わったアイスの棒を、自分が持っていたゴミ袋へ投げ入れる天野。「何?」
長いサラサラな茶髪を、派手なネイルの手でかき上げるレナ。
「あのさー、えっとねー」
「なんなの?」
レナを見上げ、眉間にシワを寄せる天野。
「天野くん、いまぁ、彼女いる?……いないならー、私と付き合わない?」
照れくさそうにレナは、身体をくるくると揺らした。
天野は瞬間、動揺したように見えたが、平然とした顔になり、すくっと立ち上がった。
「彼女は今いないよ。付き合う……。まぁ、いいよ……」
「あはっ!」レナは噴出したように笑った。「うそうそ冗談。私、年上の彼氏いるし」
ケラケラとレナは笑っている。
「なんだよ。まじで。そういう冗談やめろよ」
天野はホッとしたようなイラっとしたような顔になった。
レナは、「じゃね」と言って手を上げて5人の元へ帰ってきた。「脈ナシだったわ。ちょっと残念」
田中はレナに拍手を送った。
「レナすげーよ。勇気あるわ」
松尾はしばらく顎に手を当てて考え込んでいたが、「あ」と言い、ピンと人差し指を立てた。
「いおりちゃんさー、天野に声かけてきてくんない?なんでもいいからさー」
「えっ?私⁉」
いおりは目を丸くした。
「なんで私?いいけど……」
いおりは不安そうに、キョロキョロ後ろを振り向きながら、天野に近づいて行った。ゴミ拾いに気を取られている天野はいおりにまったく気づかない。
いおりが、トント……と肩を叩いたかと思ったら、振り向いた天野が飛び跳ねた。
「何俺に近づいてんだよ!あっち行けよ!ブス!」
叫びつつ後ずさりしている天野の顔は真っ赤だ。
「わかりやすっ!」
田中と松尾は笑った。
「あー、でもいおりはピュアだから。言葉そのまんま受け取っちゃいそー」
半泣き状態でいおりは戻ってきた。
「私っ、天野くんにすごく嫌われてるから……ぐすっ」
「いや、いや、いや」田中と松尾とレナは右手を振った。
「いおり、うちらの話聞いてた?」
「えー?なんて言ってたっけ?」
美緒は1人天野をまだ見つめていた。「またやってしまった……」とでも言いたそうな背中だ。
(私が告ったらOKしてくれるのかな?それはそれで悲しいな……。)美緒はまだ頭を抱えている天野を、切なそうに見つめた。
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