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彼がコーヒー屋をはじめるというので

今年の春に結婚10年になり子供は小学生、出会ったのは16の時やからそう考えるともう付き合いは何年になるねんというダンナ。
授業をサボって遊んでる感覚が延々続いているような。

「コーヒー屋さんになりたい」とは学生の頃から言っていた。
なんならコーヒーが飲めへん時から言ってた気がする。
18の時に突然洒落た森ガールが持ってるようなふわふわの写真の「神戸カフェ本」みたいなのを買ってきて「店を巡りたい」と言ってもっぱらデートは神戸のカフェになった。

乙女なんかなと思ってたけど話を聞いてたら小学校の卒業文集かなんかに「喫茶店の店長になりたい」と書いていたそうな。

就職した最初のボーナスでコーヒー問屋さんみたいなところで「ナイスカットミル」ってなにやら本格的ですんごい音がするミルを買ったり。

そのあとなんでか私がそんな飲みもせんのにKONO式のドリッパーを持っててコーヒーを淹れ始めたり。

片鱗はずっとあった、
それを子供の頃からずっとずっと拾い集めていたんやと思う。

そしてたぶん、集めて集めてしたカケラが両手いっぱいになったので
「コーヒー屋さんをします」
と、
言った。

その片鱗集めを横で何年も見てたので「ついにやんのね」くらいの感想やった。
ニコニコとこれをああしてこうしてこうしたくってこうでああであれをああしてこれを買ってそしてこうでこんな感じです、と。

屋号を決めましょう、と二人でああだこうだと話し合ったり
そんなことを言ってる間にお知り合いのデザイナーさんに頼んでロゴを作ってきたり、
その時点で思いました

「今回はマジのやつや」

彼は突っ走るとすごい、ものすごいスピードで走っていきそしてものすごいスピードで別のことを始めて何もなかったように新しいことへうつっていく

すごく飽きやすい
ご本人のお墨付きですごく飽きやすい
なので今回もなんかわちゃわちゃと言っている間に飽きて終わるのだろうと思っていたら張り切っていろんなことを調べていた

そしたらあれよあれよと言う間に焙煎機が届いた

焙煎機。

ご家庭に、焙煎機

焙煎機!?と思ってたらそこへ生豆がどんどこ届いた
ご存知でしたか
焙煎する前の豆はなんとも言えないペールグリーンというか、とても可愛い色をしている

なんて思っている間もなく、我が家はいつだってコーヒーの匂いが漂うようになった
ドアを開ける前からわかるコーヒー臭

コーヒーの香りにはリラックス効果があるというのをご存知でですか?
でもね、毎日毎日焙煎したてのコーヒーの匂いをかいでると頭が痛くなります、部屋いっぱいのコーヒーの香り

ニヤニヤとコーヒー豆をそれはそれは楽しそうに焙煎している(のは機械やけど)ダンナに対し
「嗅ぎすぎてもはやくさい」とは言えず、そっと換気扇を回しそっと窓を開けていたのだった

そして炒った豆は冷やさんとあかんらしく、部屋用の小型のサーキュレーターで冷やしていた
そしたらチャフというコーヒー豆のカス?が部屋いっぱいに舞うようになった
彼がよく掃除機をかけるようになった、当然である

夏のある日、午前中遊びすぎて息子と寝室でうとうとしていた
エアコンの効いた部屋でまどろむなんと気持ちいいこと、寝に落ちる寸前が一番気持ちいいいよね・・・
と、思いながら意識がずいぶん遠くにいっていた

そしたらずいぶん遠くのほうで警告音が聞こえる

ウィッウィッウィッ 火事です
ウィッウィッウィッ 火事です

飛び起きた

わたしには可愛い息子と可愛い猫と可愛い犬がいる
布団から飛び起きた

慌てて音の方に行くと
「違うねん!違うねん!!」と言いながら片手にザルにいれたコーヒー豆を持ちサーキュレーターで冷やし、もう片方の手を天井に伸ばし警報器をどにか無効化しようと激しくうろたえている彼がいた

この時点でわたしは思っていた

「ずいぶん楽しそうやな」と
(深煎りってどんなもんかなーと長めに焙煎機にかけたら見事にこがし煙が充満したらしい)

とりあえず今日はこんなもんで。
次回へ、あるのか?次回

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