通勤列車に佇むささやかな楽しみ
初めに
私は通勤手段として電車を使っているが、
最近の電車通勤時間は、いつにも増して
ハッピーな気持ちになることがあったので
それを伝えたい。
先に忠告しておくが、ここから先は
ただの自己満話である。
電車の中でタイプの異性を見つけたことがある人に関しては、どうかこの話を聞いてほしいので(かまちょか)最後までお付き合い頂きたい。
そしてオチが全くない話であり、ほぼ独り言に近いので、お見知り置きを。
いつもの電車の中での私
私は家から職場まで電車で45分くらいかかる。
昔から長時間立っていること自体がきつい体質である。
そのため、長い時間電車に乗る際は
少しの時間でもいいから座りたいがため、
席が空いていなくともなるべく座席の目の前が
空いていたら、さりげなく空きスペースに
移動するようにしている。
(気分を悪くした方や嫌な気持になる方がいらっしゃいましたら申し訳ございません。)
今の職場で働くのは6月の最後と決まっていて、七月からは部署に配属になり、今とは違う職場で働くことが決まっている。
つまり、この時間帯のこの電車に乗ることも6月末までとなるのだ。
なので最近は座れなくともあと少しの辛抱だと
思って、音楽を聴いたりして何とか座りたい気持ちを紛らわせていた。
違う景色と時間が流れていた日
そんな中、先週のことだった。
諸事情が重なり、いつもの時間帯の電車で
通勤することが出来なくなり、6月末まで
一本後の電車に乗って通勤することになった。
私は一本後の電車に乗った。
いつものように座席前に向かって歩き、
空きスペースに立つ。
ふと視線を目の前の座っている人に向けると
目の前には、雰囲気や顔ともに自分のタイプの
サラリーマンの方が座っていた。
栗色の髪をセンター分けにしていて、
ハーフリムの眼鏡(レンズの上半分だけを囲んでいるフレームタイプの眼鏡)をかけている。
高身長でスラっとしていて、背筋が真っ直ぐで
きっとこういう見た目を「インテリ男子」と言うんだろうな。そんなルックスをした会社員らしき方である。ボーダーのワイシャツが似合ったまじめな雰囲気の方だった。
自分のタイプと一致した異性が目の前にいるという状況に出くわした私であったが、こうなると冷静を装いつつも内心は少々興奮状態。
「わーめっちゃタイプの人やー。」
「ドンピシャなルックスやー。」
この通り心の中の複数の私が歓喜の状態である。
まあマスクをしているから正確にかっこいいのかどうかは分からないのだが、なんというか、醸し出す風情がイケメンそのものなのだ。
こっそり彼を何回かちらっと見ては、惹かれるオーラをしているなあと思った。
まあ当たり前だが少女漫画のような展開を迎えることはもちろんなく、サラリーマンの方は
自分の降りる駅の一つ手前の駅で降りた。
「ずっと乗っていてどこで降りるんだろうと
思っていたけどひとつ前の駅で降りるんだー」
と思い私も次の駅で降り、その日は終わった。
目の保養
次の日。昨日と同じ時間の電車に乗り、いつものように座席の前の空きスペースに移動する。
...あれ?この光景は昨日も見たぞ?
目の前を見るとどこか既視感のある光景だった
...!目の前にいるのは昨日もそこに座っていた
高身長ハーフリム眼鏡インテリ会社員の方ではないか!!
思わぬ光景に、私は少しばかりテンションが上がってしまった。毎日この時間帯のこの電車のこの場所に座っているのだろうか。
そんなことはどうでもいいが、また昨日の眼鏡の会社員の方をお目にかかれるのは正直嬉しかった。
そうだ。
この時間のこの電車に乗ることも6月が最後だし電車の中では音楽を聴く以外はすることもない。
ということで、日常の本当に些細な楽しみとして6月末まで、誠に勝手ながらその会社員の方を
目の保養にさせていただくことにした。
話しかけようという気持ちも湧いてこなければ、そのような気持も全くないし(話しかける気があるのだとしたらとんだ変人である)何をするというわけでもないのだが、目の保養のとなる方が近くにいると、そういう感情は全く抜きで自然とうれしい気持ちになる。
それが人間の本能なのであろう。なので、その方の仕草などを自然と目で追ってしまう。
スマートフォンを鏡代わりにして髪を整えている姿をかいま見ると
「そんなことしなくても、元々かっこいいから大丈夫ですよ」
と心の中で勝手にツッコミを入れてみたり
今どきの若い人はハーフリムの眼鏡なんて選ばなそうなのにセンスあるなーしかもめちゃくちゃ似合ってるし。
何でコンタクトじゃなくて眼鏡なのかなーと思ったり。
何の職種の方なんだろう?見た目からして理系感が漂っているからPGやSEだったりするのかなあと勝手に想像してみたり、
眼鏡をはずしていた時なんかは
「いや待って?眼鏡をはずしてる時ですらイケメンなんだが?」
と、もはやアイドルかよ。と言わんばかりに。
何があろうと明日は確実にやってくる
そして今日を更新すると共に6月の残りの日数が減っていき、もう会社員の方とも一生会わなくなるんだなーと考えるとちょっと寂しかった。
推しが芸能活動を引退するくらい悲しいとまではいかないが、やっぱりいつも目にしていたタイプの方を見れなくなるのはまあまあ悲しい。
自分にとっては、いつからか朝の通勤時間帯の楽しみにしていたため、誰しもそうだろうが何か楽しいことがひとつ消えると、ひっそりと寂しくなってしまうのではないか。
今日も通勤列車に佇む私のささやかな楽しみ
6月の最後の日。
いつもの時間のいつもの場所には、会社員の方はいなかった。
と思ったら、別の席に座っていた。
(どっちやねん)
いつものようにボーダーのワイシャツ着て。
電車に乗りながら、率直に楽しかったなあーと半月の間を思い出した。
電車の中で大抵の大人はみんな背もたれに寄りかかって猫背で小さな端末を眠たげに見ている。
だけど、その中でも姿勢を真っ直ぐ伸ばして凛と佇んでいるその会社員は、何だかすっごくかっこよく見えたのだ。
自分がもし男だったら、こんなふうスマートで凛々しい大人になりたいなと思うくらいに。
七月から頑張ろうと思った。ちゃんと本気で働こうと思った。私はめんどくさがり屋で、他人と自分を比較しがちで、それで時々自己嫌悪に陥ることがある。自己嫌悪なんか吹き飛ばすっくらい自分らしさで頑張ろう。
こんなふうに思わせてくれた会社員の方には少しばかり感謝の気持ちである。
毎日の満員電車の中ちょっとした楽しみをくれて、頑張ろうと思わせてくれてありがとう。
通勤列車に佇むささやかな楽しみは今日も私のひとつ手前の駅をあとにした。
そんなことをふつふつと感じながら、自分も駅を後にして職場に向かっていると、まさかの自分の目の前に、あのイケメン会社員の方が職場に向かってる道中であろう姿を見かけてしまった。
電車より早い会社員の足取りに少々驚きつつ、ふっと笑ってしまった。