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アリスとは聖なる悪魔の別名である。

ドーマウス協会

が企画制作し、1973年5月1日に発行された”アリスの絵本 絵と文によるアリス狩りのためのワンダーマップ”(牧神社出版刊)のひそみに倣い、個人的ながらわたくしにとってのアリス、を極私的に蒐集め、残しておきたい(誰に?)と常々心のどこかで思い思いしてきた。

特段注視分析がすきなわけではないが、例えば先達のアリスをきっかけにした様々な想いたちを目にすると、”ではわたくしは”の問いとなる。

たとえば澁澤龍彦のこの文章、

 「少女は人間の中で最も(あからさまに)性的でない存在であり、性をいちばん安全な場所にしまっている存在であるが、一切の性的なるものを、そのような少女の中に封じ込めてしまいたいという願望こそ、ドジスンが少女に惹かれる大きな動機をなしていた」と書いているは英国の批評家ウィリアム・エンプソン(「牧童としての子供」(高橋康也訳)である。
 私は、『アリス』の作者たる偏屈な独身者ルイス・キャロル氏の精神の秘密を白日のもとに暴き出した、これ以上に的確な評言を知らない。私もまた、エンプソンと同様、かねがね『アリス』の中に、最も性的なものと最も純潔なものとの秘密の共存を愛してきた者のひとりだからである。

  アリスの絵本 牧神社刊 P.42

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