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2020秋アニメ感想まとめ

2020秋アニメの感想をランキング形式でまとめています。


<29位> 魔王城でおやすみ

評価:B

お気に入りキャラ:さっきゅん

人質として魔王城に囚われの身となったスヤリス姫が安眠を求めてドタバタと騒動を巻き起こすというどう考えても読み切りが限界としか思えない内容にもかかわらず、週刊誌で長期連載作品となっている事実にまず驚きを禁じ得ない。週刊連載の何話分がアニメ1話の分量に当たるのかは定かでないが、本作品の安眠ネタを絞り出すことに毎週頭を使っていたら自分はひと月と持たずパンクする自信がある。実際、アニメで1クール追っていた範囲ではなるほど今回はこう来たかと毎週唸らされそこまでマンネリ化は感じずに終わってしまったのだが、その疑問は是非作者に聞いてみたいところである。作画も上質の部類であり癒し系作品(?)として楽しめなかったこともないのだが、個人的には今期の視聴作品の中では残念ながらワーストになってしまうだろうか。それにしても、何度でも言うけどこのネタで週間連載が継続できる作者をホント尊敬しますわ…。


<28位> 神様になった日

評価:B

お気に入りキャラ:伊座並杏子

長年鍵作品に触れてきた自分にとってはなんとも残念な気分になった作品。「重層的世界観」ではなく「一度きりの世界観」、「奇跡の尊さ」ではなく「日常の尊さ」、「ファンタジー要素」ではなく「SF要素」とある意味これまでのアンチテーゼともとれる要素がストーリーの根幹をなし、そういうものを期待していたファンにとっては大いに肩透かしをくらう形となった。それが結果的に功を奏して新たな魅力に繋がっていればよかったのだが、結局のところ秀逸なBGMと共に感動路線でまとめるという流れはいつもと同じで、ひなが回復の兆しを見せたきっかけもはっきりとせず若干の茶番臭すら感じてしまった。最終話のCパートで10年後とかに飛ばされなかったことだけは大いに評価するがもはや時遅し。直近の『Summer Pockets』がかなりの良作だっただけに、やはり鍵作品の主戦場はノベルゲームであるという結論を深めてしまう結果になったのではないだろうか。


<27位> おちこぼれフルーツタルト

評価:B+

お気に入りキャラ:貫井はゆ

『ハナヤマタ』でお馴染みの浜弓場双先生によるおちこぼれ系アイドル作品。しょっぱなからこれってアイドル要素必要か?と思ってしまったが、ドタバタ寮生活コメディが大好きな自分にとってはそちらの要素をもっと濃くしてくれた方が好みだったかもしれない。『ハナヤマタ』と比較すると作画方面では正当に進化しており各キャラは可愛かったものの、アイドル系作品としては何ら目新しい要素はなかったというのが本音で、作者が一度はこういうのをやってみたかっただけという気すらしてくる。なので個人的にはいっそ純粋な寮生活ものとして振り切ってしまうか、それこそ「よさこい」のようなマイナー要素と組み合わせた方が作品としての個性にも繋がり望ましかった。そんな中でメンバーの日常生活に迫る5分のミニ番組ネタはもっと広げればいくらでも面白くなりそうでもったいなかったので、今からでもそっち方面に方向転換してくれたらグッとよくなりそう。


<26位> 半妖の夜叉姫

評価:B+

お気に入りキャラ:もろは

あの『犬夜叉』も遂に二世シリーズへ突入。殺生丸(相手は不明)の娘で双子のとわとせつな、犬夜叉とかごめの娘のもろはのトリオが妖怪退治をしながら絆を深めていく様は元祖を彷彿とさせるが、物語のシリアス度はやや控えめか…というか、全員女の子の時点で色々お察しである。懐かしのキャラたちも十数年後の姿で再登場するが(ちなみに当時の自分の推しキャラは珊瑚)、犬夜叉やかごめや殺生丸が今どのような状況になっているのかはまだ謎に包まれており物語の核心部分はまだまだこれからといったところ。自分のような深夜アニメオタクにとっては長くとも2クールぐらいでビシッとまとめてくれるのがありがたいのだが、夕方の『コナン』と抱き合わせで放送しているあたり当初の懸念どおり長期シリーズ化しそうな様相である。これはこれで当時の視聴の流れを再現した粋な計らいともいえるが、元祖の原作同様完走はちと厳しくなったか…。


<25位> いわかける!

評価:B+

お気に入りキャラ:笠原好

最終話の怒涛の展開には若干苦笑いだったが、なんだか中途半端なところで終わりそうな気配を盛大に吹き飛ばしてくれたのはなにより。ちとキャラが二次元に寄りすぎているきらいはあるものの、「スポーツクライミング」というマイナーよりの競技の導入作品としては及第点か。これが女子スポーツ作品でなかったら…というのも考えたが、エンタメ作品としては現状が正しい選択だろう。ただ、それこそ今期の『ハイキュー!!』のようにスポーツ作品で男性視聴者に真の感動を与えるにはやはり男同士のガチバトルが必須。作者にそこまで描き込む自信がなかったのかは定かでないが、これは女子スポーツ作品における永遠の枷であろう。なお、個人的には『ラブライブ!サンシャイン!!』の鞠莉役でおなじみの鈴木愛奈さんによるOPの歌唱、花宮女子クライミング部部長としての好演が大いに印象的であった。しかし、彼女に感じるこの謎の身内感はなんなんだろうか…(笑


<24位> くま クマ 熊 ベアー

評価:A-

お気に入りキャラ:ユナ

「俺TUEEEE!」じゃなくて「クマTUEEEE!」な異世界ものという表現そのものの作品。視聴感としては非常に軽く、ストレスフリーでサクサクと楽しめた。自分の周りの環境が快適になるようにという動機ではあるが、チート級の能力を駆使してユナが異世界の発展に多大な貢献をする様は「他の人にはできない大きな働きができる」という概念にも繋がり、特に社会人の視聴者にとって心地よいものであったのでは。そういう意味で萌えと優越感と安心感を上手に満たしてくれる本作品は、今の時代のマーケティングとしては実はかなり優秀だったのかもしれない。そんな中、終盤チラリと垣間見えたひたすらに自分にとっての快適な時間と空間を求めるだけで心は満たされるのかという疑問は、本来の世界のユナにとっての疑問であると同時に我々にも同じ疑問を投げかけられている気がした。本作品の終着点は結局はそのようなところに落ち着くのではないだろうか。


<23位> ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうかⅢ

評価:A-

お気に入りキャラ:ヘスティア

安定したハイクオリティな作画はさすがの一言。しかし、2期と同様にあまりに展開が早すぎて常にダイジェストを見ているような気分になってしまうのはちと残念。展開の端折り方は悪くはないしこれしかないとも思えるが、もうこれは原作とは別物と捉えた方がいいのかもしれない。ただ、今期の「異端児(ゼノス)」のストーリーは原作でも大きな転換期であり、正直迷走の始まりのようにも感じていたので、この辺りをサラッと流してしまうのはそんなに悪くない判断のような気も同時にしている。とはいえ、最終話のベルとアステリオスとの死闘は原作ではベルの英雄譚の復活に相応しい好敵手との戦いぶりにかなり晴れ晴れとした気分になったものだが、このシーンまで駆け足気味にサラッと流してしまうのはなんか違うと言わざるを得ない。今後の展開的にも重要なシーンだっただけに、ファンと監督との認識の乖離が垣間見えた気がして少し不安になってしまった。


<22位> GREAT PRETENDER

評価:A-

お気に入りキャラ:アビゲイル・ジョーンズ(アビー)

正直、後半戦でここまで伸びるとは想定外であった。1話の時点から始まり各エピソードに物語全体に関わる伏線が大いに散りばめられており、それを終盤にかけてどうだとばかりに美しく回収して見せる手腕には見事にしてやられた。また、ストーリーの区切りでの種明かし回も丁寧かつ粋な演出であり、視聴者が完全にスッキリするところまできちんと描写してくれたのは◎。ただ、個人的にはあの貞本義行氏によるキャラデザがそこまで刺さらず、視聴意欲としてはそこまで…といったところであった。思うに、本作品については毎週追っていくよりも放送後に一気に視聴した方が、世界観にもより入り込めストーリーに勢いも出てよかっただろうと思われる。最後はエダマメたちがギャフンとしっぺ返しに合うという予想も頭にはあったのだが、然るべきとは思いつつもそれでは大いにエンタメ性が損なわれ後味も悪くなってしまっただろうから、これで正解だったのだろう。


<21位> 土下座で頼んでみた

評価:A-

お気に入りキャラ:豊房麗

ついつい女の子の色んなものが見たくなっちゃう主人公・土下座(どげ・すわる)がひたすらに土下座を繰り返しなんとかかんとか女の子をなだめすかしおっぱいやパンツを見せてもらうまで口説き倒すというなんとも世も末な5分アニメ。『One Room』と同様に一人称視点でストーリーが進行するのだが、こちらはサイレント主人公ではなく巧みな(?)話術で女の子を口説き倒す様も見所となっており(テロップ付)、こういう濃い味付けで能動的な主人公の方が今はウケがいいのかもしれない。毎回違う女の子が登場しおっぱいかパンツを見せてもらうのだが、その振り分けはランダムの模様。個人的には毎回おっぱい回でもよかったぐらいなのだが、残念ながら配信時点では山頂には到達できない。地上波では仕方がないにしても、有料媒体ならもっと開放的に放送してもいいと思うんだ。とりあえず、dアニメストアの料金が2倍になるぐらいなら自分は構わんよ?(爆


<20位> One Room サードシーズン

評価:A-

お気に入りキャラ:琴川晶

一人称視点が斬新な意欲的作品…というか、要するにギャルゲー視点で女の子とイチャコラしちゃおうという非常に分かりやすい作品である。まあ、自分はそれなりの数をこなしているので言うほど物珍しさは感じないのだが、近年の作品はストーリー重視で主人公にもきちんとキャラ付けがなされていることが多く、純粋に「プレイヤー=主人公」という古典的なシステムはむしろ貴重だったりする。そういうわけで、主人公の名前を入力する時の葛藤や妙な気恥ずかしさなんかも今は共感を得られにくくなっているのかな、なんて物思いにも耽ったりするわけであるが、何が言いたいかといえばそういう感覚をアニメで体感できる本作品はギャルゲーへの導入として非常に優秀だという話。疑似恋愛の何が悪い!都合のいい女ばかりで何が悪い!そういう理想とロマンに真摯に向き合う姿勢を改めて思い出させてくれたのは、間違いなく本作品の功績なのである。


<19位> 無能なナナ

評価:A

お気に入りキャラ:空野フウコ

全く前知識のないまま1話を見られて心の底からよかったと思えた作品。タイトルからミスリードを誘い、なんてことのない異能力バトルものと見せかけて痛烈などんでん返しを見せてくれたことだけでかなり満足してしまったが、そこからのナナの主人公化も『DEATH NOTE』のようなダークヒーローものを見ているようでなかなか新鮮でよかった(ちなみに同作品では月派)。個人的にはキョウヤの投入は少し早すぎた気もしていて、ナナがスマートに暗躍するターンをもう少し見ていたかったのだが、この辺りの感じ方は人それぞれか。ナナは無能力者でありズバ抜けた天才肌でもないので心も体もかなり無理をしてボロボロになりながら暗躍をするのだが、そんな中でのミチルとの友情の芽生えはベタでありながらもかなり胸にきた。その後のナナが感情を完全に滅して文字通りのキリングマシーンになってしまうのかは非常に興味深いので、2期も是非期待したい。


<18位> D4DJ First Mix

評価:A

お気に入りキャラ:出雲咲姫

『バンドリ』『レヴュースタァライト』に続く「音楽メディアミックス三部作」として発足したDJをテーマにしたメディアミックスプロジェクト。DJに関する知識がなくとも完全にアニメ作品の方程式で制作されているので、前二作を楽しんだ人なら違和感なくその世界に溶け込めるだろう。『バンドリ』同様にフル3DCG化がなされており作画面での不安は皆無。ライブシーンもDJならではのノリとテンポが心地よく、今後の展開も含めその実力は保証された作品である。ストーリーについては、帰国子女のりんくが転校先の高校でDJに出会い徐々に仲間を集めてユニットを形成していく純王道系であり、少し順風満帆すぎるきらいはあるものの無難に楽しめる内容。他には『バンドリ』でもお馴染みの愛美さんのカッコいい歌声に大いに驚かされた。OPでの響子と咲姫の掛け合いのシーンは大のお気に入りで、そのシーンのおかげで本作品の評価がグッと底上げされたのは間違いない。


<17位> おそ松さん

評価:A

お気に入りキャラ:十四松

1期、2期からの劇場版でこれにて締めと思いきやまさかの3期。ネタとしてはいつまでも続けられるので不思議でもなんでもないが素直に喜ばしい。さすがに勢いが落ちてきた感はあるが「本作品でしか成り立たないネタ」という武器を確固たるものとした今となってはその立場を脅かす競合相手も皆無であり、後は完全に自覚とやる気だけの問題だろう。ある程度のマンネリ化によるだらけた空気感も六つ子たちのクズニート設定と噛み合ってしまっており、そこがかえって「らしさ」にすら繋がってしまうのはある種の奇跡といってもいいかもしれない。このように定期的に続編が制作されるならいつまでも見ていられる気がするが、きっとそれでもいつかは終わりがやってくる。終盤には毎度そのような気分にさせられてしまうが、きっとこの先もこんな感じで続いていくんだろうな…。個人的には十四松と彼女ちゃんのその後を是非制作してほしいので後半戦に期待。


<16位> 呪術廻戦

評価:A

お気に入りキャラ:釘崎野薔薇

ポスト鬼滅を虎視眈々と狙っている、いや狙わされている感のあるジャンプの新星。当初は「女の子少なめだけどなかなかおもろいやん!」的な感じで視聴していたのだが、腐女子が発狂したとかしないとか噂の五条悟の領域展開シーンから「あ、そういうことね…」という見方になってしまい、『弱虫ペダル』と同じ路線を辿りつつあるのかと少し不安も感じている。素直な見方をすれば設定的にはむしろ地味で堅実な印象を受け、実力のある作者が丁寧に描いている印象があり好感触。なにより主人公の悠仁が他作品なら主人公の親友キャラになっていてもおかしくないぐらいとにかくいいヤツで、人気投票でちゃんと上位にランクインしそうなところがよい。こうした大人の事情が見え隠れするアニメ化による盛大なバフ効果って作者としてはどうなんかなあと近頃は思ってしまうのだが、確かな地力は感じる作品なのでしっかりと地に足を付けた展開を今後も希望する。


<15位> 炎炎ノ消防隊 弐ノ章

評価:A

お気に入りキャラ:プリンセス火華

そろそろ改めて述べることもなくなってきた気がするが、秀逸なキャラデザと作画の安定感はやはり何物にも代えがたい。まあ、もう少し森羅が無双してくれた方が見ていて気持ちがいい気がするのはあいかわらずだが…。敢えて今述べる必要があるかはさておき、本作品は意外とあっさりと人が死ぬ作品である。消防隊の殉職者も多いし、焔ビトとなってしまった人々を次々と「鎮魂」していくのも日常茶飯事である。「ラートム」の一言で何か許されたような気分になるのは本作品の最もシステマチックな部分であるし、そういうものだと割り切ってしまえばさして気にもならなくなるが、ある種「異質」な世界観であるのは否定できない事実であろう。そうした重みを感じさせないのは少年誌ならではの配慮であるだろうし、気軽に楽しめる原動力にも繋がるだろうが、自分はその陰に潜む「闇」の部分からこれからも目を反らさないでいたい。ただ、それだけのことである。


<14位> 戦翼のシグルドリーヴァ

評価:A

お気に入りキャラ:六車・宮古

各キャラが立っており戦闘シーンも華がありギャグシーンのノリもよいと序盤はかなり勢いがあったのだが、ストーリーのシリアス度が増すと同時にその勢いも失速。キャラを愛でるにはストーリーのシリアスさが邪魔をし、かといってそのストーリーが滅茶苦茶面白いかと言われればそうでもないというアンバランスな結果に。序盤の勢いを1クール継続するためにはメインキャラも足りていなかった印象で、OPの最後の一枚絵などは絶対にキャラが増えていくやつだコレと思っていたら最後までそのままで非常に残念であった。美少女のミリタリーものとなればやはり『ガルパン』という大きな存在があるが、キャラを前面に押し出すならこのぐらいの緩さは最低限必要であり、そういう意味ではまだ序盤はそのバランスに近かったといえるだろう。貴重なオリジナルアニメということで期待値も高かったのだが、「人が死ぬ」作品の難しさが改めて浮き彫りとなる形となった。


<13位> ゴールデンカムイ

評価:A+

お気に入りキャラ:アシリパ

実は1期も2期も未視聴だったのだが、周りの評判が良かったのでこの機会に一気に追いついた。当初はアシリパがいなかったらキツかったと感じることが多かったものの、徐々に杉本を筆頭とした男たちの荒々しい生き様にも魅力を感じるようになり、いつのまにか純粋にストーリーを楽しむように。とはいっても、3期は早く杉本とアシリパの再会が見たくてずっともどかしかったのだが(笑 北海道や樺太の現地の伝統料理が毎回のように登場するのもひそかに楽しみにしており、食事シーンが美味しそうな作品は例外なく名作というのをまたまた証明する形となった。個人的には杉本がアシリパのことを「さん」付けで呼ぶところが気に入っており、彼女と話すときだけ声色が優しくなるのもまたよい。純粋にカップリングされるには年齢差が気になるのかなというところだが、二人の関係が目下のところ一番の関心事なので続きもアニメ化してくれることを切に願っている。


<12位> 魔女の旅々

評価:A+

お気に入りキャラ:イレイナ

『キノの旅』を思い出した人も多いであろう魔女の冒険譚。毎話ごとに、心に染みる人情系、残酷なホラー系、ゾッとする人の心の闇系、コミカルなトラブル系などなど作風がコロコロと変わるのでどういった作品であるのかを説明するのがなかなか難しい。これが「旅」をテーマにした作品の特徴だと言ってしまえばそれまでなのだが、終始一貫していたのはイレイナが旅を通じて見て知って学んだ経験や教訓の先には常に「そこに生きる人々」がいたという点である。そうした一期一会の出会いを繰り返したり、時には懐かしい顔に再開したりしながら心に養分を与えていくのが本作品の楽しみ方だろう。そんな中での個人的ベストストーリーは『瓶詰めの幸せ』。無垢な良心が実は一番残酷なことであったという展開はショッキングでありながら多分に教訓的でもあり、生まれた環境の不条理や人の心の闇を上手く表現しており締め方も含めかなり完成度の高い話であった。


<11位> 安達としまむら

評価:A+

お気に入りキャラ:しまむら

額面通りの百合まっしぐらの内容ではあるが、本作品はダウナー系社会不適合者の二人が狭い世界に閉じこもりながらその関係性を深めていくところに特徴がある。青春とモラトリアムの空気が入り混じった高校生活の中で、クラスメートと微妙な薄い関係を築いたり上手く馴染めずに虚無感を感じたりあるいは達観した心持ちに達したりというのは個人的には少しばかりの痛みを伴ってかなり共感のできるところであり、安達としまむらの関係性を通じて描かれるその辺りの空気感の表現は実に上手い。ストーリーが進むにつれ、しまむらさえいてくれればいいという域まで依存を深めた安達に対し、しまむらは核心には触れないようにしつつも徐々に沼に嵌りつつあるようにも見える。そういう意味で本当に知りたいのはこれからというところで終わってしまったのは非常に残念だが、エンタメ作品としてはここまでがボーダーラインだというのもまた真実なのであろう。


<10位> 魔法科高校の劣等生 来訪者編

評価:A+

お気に入りキャラ:司波達也

終始シリアス展開でギャグシーンなど皆無のはずなのだが、その全てがもはやギャグシーンにしか見えなくなる唯一無二の個性を持った作品。達也は終始真剣かつ真面目に次々と起こる事件に時折ピンチに陥りながらも冷静沈着に対応しているのだがそのレベルが人知を超越しており、また達也と深雪の禁断の兄妹愛も本人たちは普通の関係であると疑わず周りのキャラと視聴者を共に置き去りにする二人だけの世界を瞬時に作り出し、全てが壮大なギャグにしか見えなくなってしまうのである。その新たな被害者となったのが来訪者編のヒロインであるリーナであり、最強の魔法師というプライドをへし折られての帰国となったものの悔しさよりも呆れの方が大きかったであろう(なお、ポンコツ可愛いという個性は手に入れた模様)。深雪の愛と信頼が重すぎる達也の心と体の負担は計り知れないが、お兄様ならきっとこれからもさすがな活躍をしてくれるに違いない。


<9位> ひぐらしのなく頃に 業

評価:A+

お気に入りキャラ:鷹野三四 園崎魅音

昔買ったまま眠らせていた「一気見BD」に遂に本腰を上げたところ思いの外スイスイと完走できてしまい(『解』『礼』『煌』含む。)、さて視聴体制は整ったと思いきや(放送直前)「え?リメイクなの?」→(放送後)「リメイクちゃうんかーい!」となり今に至る。こうなってくると、一通りの知識はあるだけに色々予想・分析しながらの視聴となったのだが、おそらく『業』の回答編に当たる作品はないのではないかと予想している。というのも、ここまでの展開は無印をなぞりながらも『解』の成分を含んだ内容となっており、このまま最後までいけば物語の全容は掴める気がしているからである。というわけで、「結局は展開を再構築したリメイクであった」という結論に至り、結末が大きく変更される可能性は薄い…というのが自分の予想なのだが、それをさらに覆されても一向に構わないというのが本音。あと、キャラデザ変更は個人的には正直イマイチだったのを付け加えておく。


<8位> アサルトリリィ BOUQUET

評価:A+

お気に入りキャラ:楓・J・ヌーベル

同作品のメディアミックスプロジェクトの一環としてのアニメ化だが、そのクオリティは本物。さすがのシャフト制作だけありバトルシーンはヌルヌル動き、武器(チャーム)も各々の個性がありカッコよく、百合成分満点のストーリーもこれがなかなか熱くて総じて高レベル。キャラが尋常じゃなく多いので覚えるのが大変だが、登場毎に名前のテロップが入る辺り制作陣もよく分かっているご様子。スマホゲーのリリースを控えこの機会に視聴者に推しキャラを見つけてもらおうという狙いなのだろうが、その目的は十二分に果たしたのでは。また、各キャラのネーミングがいい感じに厨二心をくすぐるのだが、このセンスはキライじゃなくむしろ大好きまである。さらに、OP/ED共に良曲であり、OPの「Sacred world」のアーティストはなんとあの「RAISE A SUILEN」(『バンドリ』より)。作品の垣根を超えた粋なコラボレーションに新たな時代の風を感じたのは自分だけではないはずだ。


<7位> まえせつ!

評価:A+

お気に入りキャラ:凩まふゆ

序盤から終盤にかけての伸びしろは今期の中でもトップクラス。当初は美少女キャラと漫才の相性ってどうなんだ?と思っていたのだが、結果的にそこはほとんど問題にならなかった。思うに「お笑い」に造詣が深い人からは各種要素を厳しく見てしまうと色々とツッコミどころも目に付くと思われるのだが、自分はそこまでではないので純粋にストーリーに集中でき作中のネタも普通に楽しく見ることができたことが大きかったと思われる。完全に下積み時代の話なのでまふゆたちの芸人としての実力はまだまだなのだろうが、そんな中でも日々真摯にお笑いに向き合い失敗を繰り返しながら成長していく過程がきちんと描かれていたのはなにより。お気に入りキャラはともかく、芸人としては「R凸」のネタの方が面白かったのが正直なところで、「ふりいくっ!」のオタクネタも一度通しで見てみたかったと思ったらなんと実在するコンビだったらしい。これはチェックせねば…。


<6位> トニカクカワイイ

評価:S-

お気に入りキャラ:由崎司

何か斬新なアイデアを常に求め続けねばならないという発想からは到底生まれないであろう、もはや古典的という表現すら躊躇われるほどの純粋なイチャラブコメディー。しょっぱなの事件の成り行きからヒロインの司が不可思議な存在であることは明らかなものの、その後はひたすらに主人公の嫁として甘々な新婚生活を送るだけという壁ドンまっしぐらのストーリーは、よくぞここまで振り切ったものだともはや感動を覚える域に達している。これが万人受けしないのは理解できるし、大部分にとっては退屈極まる内容なのかもしれない。だが、このご時世にあえて作者に「俺が気持ちよくなりたいだけだけど何か問題でも?」と言わんばかりの態度を示されれば、こちらとしては只々「トニカクカワイイ」という万の同意を込めた首肯を繰り返すしかないのである。そういう意味で、まさに分かる人にだけ分かればいいという気持ちにさせてくれる貴重な作品であった。


<5位> ハイキュー!! TO THE TOP

評価:S-

お気に入りキャラ:田中龍之介 天内叶歌

スポーツ作品においては、創作物であるが故の「試合の勝敗が予想できてしまう」という壁が大きな課題となる。その点で切っても切り離せないのが、やはり『SLAM DUNK』という偉大な先輩の存在である。そのおかげで「主人公の入学年度で連載終了」「最後は負けて終わる」といった一見不条理にも思える展開も正攻法として認知される土台が既に出来上がっているのである。故に「どうせ勝つんだろう」が「ここで負けてもおかしくない」と変換されることは、試合の緊張感と熱中度を数段上に引き上げている。今期の稲荷崎戦はさすがにここで敗退するとは全く思わなかったが、次戦以降はどうなるか分からない。ここは完全アニメ勢の自分の利点を最大限に生かして是が非でも無垢の状態で続きを待ちたい所存である。そういった土台を利用しつつ、本作品はそれらの課題と上手く付き合っており、ある種現代のスポーツ作品の集大成となっているようにも思われる。


<4位> ご注文はうさぎですか? BLOOM

評価:S

お気に入りキャラ:リゼ

チノたちの志望校の選択に始まり、ココアたちの学園祭の様子などカフェの外でのイベントが中心となり一気に世界観に広がりと深みが増した感のある3期。これまではキャラは可愛かったもののストーリーは若干退屈な印象を受けていた本作品であるが、チノたちの志望校の選択はココアたちと築いてきた絆の集大成といえる内容でありシリアス成分も含み非常に感慨深く、これまでになく純粋にストーリーを楽しめた。また、チノがマヤとメグとは別の高校を志望することになったことで結果的により強い友情を育むこととなった展開に拍手。マヤとメグが高校入学後はラビットハウスでアルバイトを始めると知ったチノが安心して思わず泣いてしまった場面では完全にもらい泣きしてしまった。この名場面の影にはココアたち高校生組が学校の垣根を越えて仲良くしていることも大きかったであろうと思われ、ファンにとっても最高のご褒美となったといえるだろう。


<3位> メジャーセカンド 「中学生編」

評価:S

お気に入りキャラ:椛島アニータ

原作の魅力は元より、アニメとしてこれ以上ないクオリティを誇った「中学生編」は間違いなく今後の野球作品を語る上で欠かせない指標となることだろう。この偉業は単に作画が綺麗という言葉ではとても表現しきれず、「野球の動き」というものに対するきちんとした理解、女子選手としての「華」を最大限に生かそうとする姿勢、そしてなにより滲み出る原作愛が存分に伝わり、原作ファンも大満足の仕上がりとなっていた。ストーリーにおいても「女子選手であること」に対するアプローチは他作品とは一線を画しており、男子に真っ向から立ち向かおうとするからこその壁や諦観の念といったリアルを真摯に描くことには、「華」の一言だけでは片付けられない大きな意義に溢れていたといえよう。なぜここまでの製作環境が整ったのかは全くもって謎だが、これが奇跡とならないのであれば日本のアニメの未来は明るく、今後の楽しみが増えたのが素直に喜ばしい。


<2位> ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会

評価:S+

お気に入りキャラ:近江彼方

「グループとしてではなく一人ひとりがやりたい夢を叶えるスクールアイドル」というコンセプトを徹頭徹尾守り抜き、その中で満点の回答を見せてくれたという感想に異論はないハズ。そして一介のラブライバーとしても活動してきた自分にとっては、「ラブライブのくせに普通に面白いじゃね~かよ…」という捻くれた思いも抱いてしまったというのもまた事実。自分にとってラブライブとは(あくまでもいい意味で)盛大な茶番劇にキャラ萌えを交えて楽しむ作品であり、そのツッコミどころの数々や未完成の余白に様々な妄想や議論を重ねて愛してきたコンテンツなのである。しかし本作品には隙らしい隙がなくキャラデザ変更も当たり、美しい鑑賞品として完成された作品にまで磨き上げられていた。これはファンとして非常に喜ばしいことに間違いはないのだが、「らしさ」という意味ではほんの少しの心のすきま風を感じてしまったというのも偽らざる本音なのである。

―キャラ総評(兼ランキング)—

近江彼方 【1位】

当初はいつも眠たげで幸せそうな感じがツボにハマったという理由だったが、アニメ化に際して重度のシスコン設定に加え家計を助けるためにアルバイトを掛け持ちする頑張り屋だったことが発覚し、その魅力は確固たるものに。一方、楽曲はこれまではスローテンポなものが多く正直イマイチだったのだが、「Butterfly」はまさしくこういうのを待っていたという楽曲。なお、中の人の人気が急上昇しているのは少し気になる点。

天王寺璃奈 【2位】

長らく素顔が謎だったキャラであるが、アニメでは最初から顔出ししていたのでむしろ順番が逆に。マスコットキャラとしての愛くるしさが素直に可愛く、だんだんと周りに心を開いて友達が増えていくエピソードにも心がほっこり。キャラとしては色物ともいえるが、こうしたピーキーな属性を持つキャラも採用してしまえるのが虹ヶ咲の特長であり、これまでのラブライブにはなかった点。こういう子に懐かれるとたまらんやろなあ…。

中須かすみ 【3位】

アニメ化に際して評価が急上昇したキャラ。濃厚な矢澤にこ先輩の系譜を感じさせるキャラなのだが、可愛いというよりも男前なカッコいいところが大きく印象に残った。スクールアイドルとして最も折れない自信と芯の強さを持っているのがきっと彼女であるし、なればこそ多少のお調子者な言動も持ち前の空回り芸で中和されてその全てが愛嬌として映ってしまうあたり、キャラとして非常に高い完成度を誇っている。

桜坂しずく 【4位】

正直この設定で1年生というのはズルいとすら感じる。きっと2年後にはもう誰も彼女に追いつけないだろう。ある意味最も正統派美少女のビジュアルであり、虹ヶ咲のセンターになっていてもおかしくはなかったと個人的には思っている。彼女の初期楽曲「あなたの理想のヒロイン」は超絶的な名曲であり、歌詞とメロディーラインがとにかく身悶えするほどに素晴らしい。今後この曲を超える曲はきっと出てこないだろう。

エマ・ヴェルデ 【5位】

スクフェス勢にとっては、彼方、しずくと共に昔からお馴染みのキャラ。他の二人はともかくなぜ彼女がこの立場を勝ち取ったのかは謎なのだが、その声質はメンバー内でもトップクラスにお気に入り。果林とのカップリングは副次的な要素として彼方が3年生組の中であぶれてしまうという個人的なマイナスポイントもあったが、彼女の世話好きな面を表現するにはナイスな設定だったのでは。なお、「声繋ごうよ」はかなりの良曲。

朝香果林 【6位】

虹ヶ咲のお色気担当。彼女の中の人のリアルライブでのパフォーマンスはマジでヤバイ(深刻な語彙不足)。サンシャインの果南同様にどこかで人気が爆発しそうな予感もある。初っ端の「TOKIMEKI Runners」のCDランダム封入特典で彼女のカードを引き当てたのでそういう役回りなのかと思っていたが、その後音沙汰は無い模様。部屋が片づけられない設定は現実ならともかくキャラとしては親しみが沸いてかなりの好印象。

上原歩夢 【7位】

\アッカリ~ン/を彷彿とさせる物理法則に反したお団子ヘアーが特徴的な虹ヶ咲のセンター。正直キャラとしては最下位もありうるのだが、楽曲に非常に恵まれているので総合でこの位置に。なにげにセンターなのにオレンジ系統のイメージカラーではない。彼女と一緒に頑張ろうと思わせてくれるあたりセンター適正はあるのだろうが、皆を引っ張っていくという点では少しキャラが弱い気もする。まあ、これも虹ヶ咲らしさか。

優木せつ菜 【8位】

芸名とかいう新たな一手を投じてきた虹ヶ咲のソロアイドル活動の一番の体現者。髪の結び方でどう考えても損をしているが、あれは溢れすぎる戦闘力を抑える縛りだと自分は結論付けた。意外と小柄なのは見逃せない点で(にこと同じ)、あと5センチ身長が高かったら真の意味でスクールアイドル界を席巻していたに違いない。彼女のオタク設定はあまり活かされていなかったが、色々と諸刃の剣の設定のようにも感じている。

宮下愛 【9位】

一見ギャルっぽいけど…というのは最近では定番の設定になりつつあるが、個人的にはそれならギャルに振り切ってしまう方がいいかも。いや、そんなことはないのか…う~ん、わからん(汗 彼女の場合はせつ菜とは逆にあと5センチ身長が低かったらもっと威力が出た気がする。アニメ化に際して髪型がマイナーチェンジされたが、個人的にはこの変更は◎。ポニーテールの印象が強くなり可愛さがグッと増した気がする。

高咲侑 【番外】

虹ヶ咲のアニメ成功の最大の功労者。とにかく足がエロい!ニーソックス最高なのはさておき、常にメンバーとパーフェクトコミュニケーションを取り続けるたらしっぷりには全てのPが敬服したことだろう。そして、終盤の歩夢との百合イベント(闇)は順調すぎる流れに一石を投じるスパイスとして抜群のキタコレを提供してくれた。アニメ限定にしておくには実に惜しいキャラなので、きっとこの先も色々と出番があるに違いない。


<1位> 体操ザムライ

評価:S+

お気に入りキャラ:荒垣玲

個人的今期の覇権は本作品。閑話も言葉足らずも一切ない1クールアニメとして正しい選択を最後まで貫き通した偉業に盛大な拍手を贈りたい。引退を撤回し体操選手として復活を志す主人公・城太郎の生き様、それを支える娘・玲、謎のニンジャ・レオ、コーチ・天草、期待の新星・南野、その他大勢の人との繋がりの中で日本の体操界の未来に繋がる栄光を手にするまでの道程は存分に涙腺を刺激し、大きな感動を味わうことができた。本作品を単なるスポーツ作品に留めない最大の要因は、やはり数年前に妻を亡くした城太郎と娘の玲との親子の絆である。こういう頑張るお父さんと小さな体で懸命に父親を支える娘の姿にはどうにも弱く、最初期の『MAJOR』のおとさんのエピソードのように大いに感情移入して毎回のようにホロリときてしまった。ていうか、玲ちゃん良い子すぎやろ…(涙 こうした未来に繋がる素晴らしいオリジナルアニメがもっと増えていってほしい。



<劇場版4位> 魔女見習いをさがして

評価:A

お気に入りキャラ:川谷レイカ

「おジャ魔女どれみ20周年記念作品」。その謳い文句に心躍らないファンがいるだろうか。放送当時既にオタクとしての片鱗を開花させていた自分もその例外ではなく、女児向け作品ながら時にシリアスに社会問題や学校生活の闇に切り込む作風に畏敬の念すら感じていた。本作品は共に『どれみ』のファンであったことから意気投合した三人の20代の女性がその聖地を訪れながら上手くいかない現実に向き合っていくというものであり、ある種メタ的な仕掛けの作品となっている(制作陣は厳密にはメタではないと語っている。)。鑑賞した率直な感想としては、「映画」というよりは「TVスペシャル」といった方が相応しい内容であり、「らしさ」は垣間見えつつも資金も情熱ももう少しかけられたのでは?といったところ。ここまで「大人」の世代に振り切った内容になっていたのは良くも悪くも潔く、前の席に座っていた子供の姉妹が終始退屈そうだったのが一際印象に残った。


<劇場版3位> 劇場版 鬼滅の刃 無限列車編

評価:A+

お気に入りキャラ:―

炭治郎の「ヒノカミ神楽の呼吸」の発現時から強烈に想起されていた「彼」の結末。「やはり」というべき展開であり、こんなに早くその時がくるなんてという驚きの方がむしろ大きかった。それを描くために本劇場版は制作されたといっても過言ではなく、前半部分はオマケみたいなものだろう。劇場内からすすり泣く声も聞こえてきたが、前述の既定路線感から自分の頬は濡れるには至らず。だが、体の前で組んだ両の手が痛いほどに軋んでいたのはやはりそういうことなのだろう。そしてその時気付いた。彼はけしてここで「散る」ために生まれたのではない、「託す」ために生まれたのだと。それこそ『キングダム』の王騎将軍のように主人公と積み上げてきたものあればこそという思いがないではないが、炭治郎に受け継がれた炎の意志と仇敵ともいうべき存在。それらが今後の物語に深みを与えるのは間違いなく、「正着」の一手であったといえるのではないだろうか。


<劇場版2位> グリザイア:ファントムトリガー THE ANIMATION スターゲイザー

評価:S-

お気に入りキャラ:狗駒邑沙季(いこまムラサキ)

PCゲーム『グリザイア:ファントムトリガー』シリーズの劇場版アニメ続編。グリザイアシリーズではお馴染みの天衝氏が制作総指揮&シリーズ構成を担っているだけあって相変わらず「いい端折り方」がなされた作品に仕上がっており、非常に安心感を持って鑑賞できた。各キャラの魅力もさることながら、ミリタリーマニアをも唸らせる武器への蘊蓄や緊張感に溢れた殺伐とした戦闘シーン、物語に深みを与える政治的な駆け引きなどけしてそれだけに頼らないテキストの魅力は、エロを目的としない一本道のルートでありながら自分をどっぷりハマらせていることからもその非凡さを推し量っていただけるかと思う。作画面も申し分なく、渡辺明夫氏によるミリタリー要素が溶け込み若干大人びたそのキャラデザは、同氏の手掛けた作品の中でもトップクラスにお気に入り。このようにファンの期待に毎回見事に応えてくれるシリーズなので、これからも存分に応援していきたい。


<劇場版1位> ジョゼと虎と魚たち

評価:S

お気に入りキャラ:ジョゼ(クミ子)

車椅子の女性と男子大学生の純愛ラブストーリー。ヒロインのジョゼの年齢が24歳ということに本作品のポイント…ひいては主題があり、可能性という名の未来に思いを馳せるばかりではいられない、健常者ではないからこその孤独や今後の生活の問題が浮き彫りになる様が物語の重みとなって観客に生々しく語り掛けてくる。ジョゼは言葉遣いは乱暴だが可愛らしいし、純粋にラブストーリーとして楽しむには十分すぎる内容であるが、これからどうやって生きていくかという現実を見なければならない環境においての恋愛は、特にジョゼにとっては生涯に渡って相手に負荷を強いることになる非常に重たいものであったことだろう。なればこそ、それもひっくるめて彼女を求めた恒夫とのこれからをもっと見ていたかったというのが本音であり、ため息の出るような美しい作画と共にまさに映画らしい映画を見られたという充足感は本年の締めに相応しいものとなった。


<おまけ> 

イラスト2

麻雀回は滅茶苦茶だったけど、伊座並さんのリアクションだけはよかった。

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