『あなたのおかげで』は私には麻薬ではない

夫の5回目の命日を迎えました。
旅立ったのは、2016年8月8日。ちょうど前回のオリンピック開催中でした。
そして、葬儀を行ったのが初めての「山の日」だったのです。
よりによって、今日、「あの日」を呼び起こす3つのことが重なっています。

今朝は激しい雨の音で目が覚めてしまい、彼が旅立った時間には、あの日と同じように空を見ました。その時間だけ雨がやんだのです。雲が静かに流れていました。

画像2

今年になって、なんで私は「がん」に関わる活動をしているのだろうと考えこんでしまうことが増えました。
夫が「がん」を告げられた日から、私の毎日は「がん」という言葉でいっぱいになっている。
夫は希望の会を続けてほしいとも言っていなかったのに、この日々を選んだのは自分。
気持ち的にキツイことも多いのに、なんで私は続けているんだろうって。

そんな中、最近の朝ドラの中で『あなたのおかげは麻薬』という言葉がありました。
『自分は無力かもしれないと追っている人間にとって、これ以上の快楽はない。脳が言われたときの幸福を強烈に覚えてしまう。麻薬以外の何ものでもない。そして、また言われたいと突っ走ってしまう。その結果、周りが見えなくなる』という言葉でした。
これは、私には当てはまりません。
私の場合は、『あなたのおかげ』と言われるたびに、苦しいです。
希望の会が接している状況は常に厳しく、「あなたのおかげ」と言われる時は、誰かが旅立った時だからです。その度に、こんな言葉を受ける価値は私にはないと消えたくなります。
『快感』とは正反対であり、『麻薬』ではありません。
無力と虚しさが募ります。じゃあ、なんで続けているんだろう…。

たぶん、私が活動を続けている理由は、「哀しみ」と「後悔」
かけがえのない存在を連れ去ってしまった病への『悔しさ』だと思います。
流せないから続けている。
そう考えると『自分のため』なんでしょう。

5年前は朝焼けでした。

画像2

『本当に夫は死んでしまったのだ』と思い、朝焼けが、新たな日々の始まりを告げているように感じていました。その時に、理事長になることを決めました。
無我夢中で毎日を重ねたら5年になったという感じです。

今朝は、流れる雲に、流れていく時間が重なりました。
夫は、『いつか患者会が必要なくなる日が来てほしい』と言っていました。
私もその日が来ることを願っているし、5年の日々で医療の進歩を肌で感じてもいます。
ただ、『あの時に、この治療があったら…』とも思い、いろいろな想いも抱きます。
どの気持ちも私。
5年間、とても多くの人と出会い、支えていただきました
ありがとうございました。
そのことの有難さを胸に刻み、感謝を忘れずに、これからも自分の日々をコツコツと重ねていこうと思います。



全国胃がんキャラバン、多くの人にがん情報を届けるグリーンルーペアクションに挑戦しています。藁をもすがるからこそ、根拠のある情報が必要なのだと思い、頑張っています。