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21.01.20 匂い

旅の経験や思い出について考えていると、

その当時の美しい情景や、経験に対するシンパシーや違和感とともに

その場面を印象深くさせているのは、その場所の温度や湿度、空気の密度も

含めた香り、匂いなのだと改めて気づきます。

例えば、

アメリカ系の航空会社や空港に降り立った時に香る甘いコーヒーの匂い

ゲストハウスで忙しなく回るランドリーから漂う柔軟剤の香り

晴れた日のSan Francisco Ocean Beach、                日差しの暖かさとすこし肌寒い風が運ぶ穏やかな日常の香り

セドナで、吹き抜ける、澄んで乾いた大地の匂い

中国に降りた時から変わる、セメントや石、排気が混ざった独特なにおい

山西省の石炭や鉱石採掘で生じる塵の混じった排気のにおい

会食に迫りくるにぎやかさを連想させる白酒漂う中華レストランの香り

食欲を誘うバターやオリーブオイルなどの濃密なイタリアのレストラン

アンダルシアを彩り、華やかな香りを感じさせるオレンジの街路樹

ヨーロッパの乾いた風に運ばれ、歴史を感じさせる遺跡の荘厳な石の匂い

吹き抜ける風以外何も聞こえない、運ばれてくる乾いた西サハラの砂

マラケシュの人間の躍動感が伝える市場の雑多が運ぶスパイス

バンコクの強い日差しとともに排気と湿度を含んだ濃密な大気

少し旗寒い、カオヤイの自然が作りだす澄んだ癒しの風 

ビーチで優しくささやくように触れる穏やかな風

まだ開発の進んでいないウブドの、緑で溢れた密度のある香り

寺院に漂うお香、美しいバリ舞踊、躍動感のある島国に流れる神秘的な香り


思い出すと、時々に感じられる嗅覚で溢れる

匂いの思い出がなかった旅の場所はないとさえ思わされます。

匂いは文字であらわすにはあまりに不十分で次元が異なります。

香りによって結びつく特定の記憶や感情を呼び起こす現象は、プルースト効果といわれるそうです。嗅覚と脳との伝達プロセスの特徴から、情動に特に関連付けをさせやすくなっているのだそう。

どんなに当時の経験を思い返したり、写真を見つめていても記憶の中に漂い、その一場面を彩る空気、香りは、体験として欠かせないのだと思います。

確かにそこにあった匂い、だけど今は遠くて再現ができない匂い。

生物が匂いを通じて、自らの経験を記憶として蓄えておけるのは、感情がそこに宿っているから。生物にとっての匂い、香りは、地球の呼吸、人々の活動、その一瞬一瞬を美しく彩ってくれているものです。

だからこそ匂い、香りは美しく、愛くるしい感覚であり、旅にとって欠かせない感覚なのだと思います。

これからも新しい場所で、思い出の場所で、思いっきり深呼吸をして味わっていきたいです。

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