福造と魔太郎|日々の雑記#70
「この世は老いも若きも男も女も、心のさみしい人ばかり。そんな皆さんのココロのスキマをお埋め致します。いいえ、お金は一銭もいただきません。お客様が満足されたら、それが何よりの報酬でございます」
なんていつもの台詞をキメながら、帽子を取り、ネクタイを緩めつつ壁ドンしてくる喪黒福造。確実に、カラダのスキマも埋めにきています。
のっけから怪しい雰囲気ですが、
「おいしい話には気をつけよう」
って内容なのでご安心ください。
いつの時代も大声で「良いことだ!」と喧伝しているものは、得てして胴元にとっての「良いこと」です。
そもそも善意や善行は、広告宣伝費がつくシロモノではありません。小さく目立たずとも、社会に受け容れられるものでしたら、自然と広がっていくことでしょう。
穿った見方をすれば声の大きい案件ほど、掛け金を回収し、尚且つ儲けを見込んでいるんだと思います。その証拠に旗色が悪くなった途端、あからさまに鳴りを潜めるじゃないですか。
別に金儲けがいけないなんて思っておりません。儲け話があれば一枚、さらには裏でもう二、三枚は噛んでおきたい人間です。
だのに近頃は個人も企業も、果てにはお国でさえも、やり口に節操が無くなったと感じてしまうのは、果たして自分だけでしょうか。
技術の進歩によって稼ぐネタも多様化し、手前勝手な理屈が増えました。たとえ無理筋な主張でも、唱えているうちに罪悪感は薄まります。物事には限りがあるのですから、目先の利益を求めた結果、誰かへ皺寄せがいくのは火を見るよりも明らかなんですけれどね。
このままでは割りを食った魔太郎たちに
「コ・ノ・ウ・ラ・ミ・ハ・ラ・サ・デ・オ・ク・ベ・キ・カ」
と復讐されるのが関の山です。
……などと知ったふうなことを語るのは、酔っ払って高額のカード決済を切られたことを思い出したからです。
単身赴任時代、いつもの店で呑んでいたとこまでは覚えていますが、帰り道でキャッチ&リリースされたんでしょう。千鳥足で歩く夜のアーケード、ハンターにとっては格好の獲物だったことと思います。甘い言葉か旨い話に乗せられて、記録に残る出費を体験しました。
ちなみに泥酔していたのでその場では気付きませんでしたが、翌朝レシートを見て「ギニャー」となったのはお約束です。
後日、しらふでその界隈を歩きましたが、件のお店は見つけられませんでした。きっと知らないうちに“魔の巣”に迷い込んでしまったのかも知れません。
これから歓送迎会の季節です。皆さまも呑みすぎとおいしい話にはご注意ください。
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西日暮里BOOK APARTMENTさんの棚をお借りして、酒と料理の読みものを中心に、集めた本を販売中です。
次回は3月4日(土)12:00〜16:00で店番に入ります。
お江戸の東、谷根千エリアのご近所。季節は春。お散歩のついでに、ぜひ足を伸ばして頂ければと思います。