小川糸さんの「とわの庭」を読んで、小説の世界に舞い戻る
子供のころから読書が大好きでした。
今でも活字中毒の気があるなと思う程度には、日常的に文字を読んでいます。
が、もっぱら読むのは、エッセイ、実用書、教養関係の本。
いつのころからか小説は読まなくなっていました。
忙しかったので、まとまった量を読むだけの時間を取れなかった。
加齢により集中力と小説世界を理解するだけの想像力がなくなった。
老眼が始まり、文字を追うのがつらくなった。
・・・などなど漠然とした原因らしきものは思い浮かびますが、本好きだった母親も年を取ってからは小説を読まなくなったと言っていたので、そんなものかと思っていました。
そういうわけでしばらく小説から遠ざかっていたある日、小川糸さんのエッセイ本を読みました。
その中で、ご自身の著作、「ライオンのおやつ」という小説に少しふれられていて、がぜん興味が出ました。
エッセイを拝見する限り、ベルリン在住の小川さんは、自分の考えをしっかり持って地味だけれども日々の暮らしを大切に生きておられる方。
しかもおいしそうな食べ物の記述がいたるところに出てきて、読みながら何度食べてみたい~、と思ったことか。
こういう方が書く小説はどんなものなのだろう。
時間はたっぷりあるし、一度、読んでみようかなと図書館へ。
あいにく「ライオンのおやつ」は見当たりませんでした。
でも、せっかくだし、何か1冊ぐらい読んでみようとタイトルをながめ、装丁が愛らしい「とわの庭」を借りて帰ることにしました。
そんな感じだったので、この時点で小川さんの小説に関する知識は皆無。
きっと食べ物に関係のある、かわいらしい小説を書いているんだろうな、なんて思いこんでいました。
しかし、いざ本を読み始めたら、あっという間に、小説世界の中に引きずり込まれました。
あれは、引きずり込まれたとしか言いようがない。
母親の子供に対する絶対的な権力。
どんなに理不尽な状況下に置かれても、失われることのない盲目的な子どもの母親への愛情と信頼。
息苦しくなって、途中で読むのがしんどくなったのに、やめられない。
暴力的なまでに圧倒的な力で本の世界に放りこまれ、ぐるぐる感情を振り回されて・・・。
ああ、これが小説というものだった・・・と久々に没入する感覚が蘇りました。
やっぱり小説はいいですね。
これを機に、再びいろいろな小説を読み始めることにします。
「とわの庭」、人間の強さと愛とやさしさにあふれた、素敵なお話です。
機会があれば、ぜひ!
本日の写真:バンダ(ラン科)
最近、植物園に行ったのでアップする写真が熱帯の花ばかりになっております・・・