企業のサステナビリティ情報開示の義務化と価値創造ストーリー
5月23日、金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループ報告(案)が公表されました。
この中で、気候変動、人的資本、多様性など企業のサステナビリティ情報について有価証券報告書(以下、有報)に「記載欄」を新設する見通しであることが明らかになりました。
■ TCFDの4つの柱に基づくサステナビリティ情報開示
有報へのサステナビリティ情報開示に関する主なポイントは以下のとおりです。
TCFDの4つの柱に基づくサステナビリティ情報開示については、ISSB(国際サステナビリティ基準審議会)が策定中の開示基準の考え方を参考にしたものです。
有報への具体的な開示内容については、ISSBの動向などを踏まえ決定されることになります。
■ TCFDの4つの柱を踏まえた自社固有の価値創造ストーリーの構築・発信を
これまで、日本企業のサステナビリティ情報開示は、国内外の様々な開示基準やフレームワークを参考に行われてきました。
今後、有報は勿論ですが、統合報告書やサステナビリティレポートなどでも、重要性があると判断されるサステナビリティ情報の開示は、TCFDの4つの柱に基づいて行われる(方向に収斂される)ことが想定されます。
この意味する所は、企業のサステナビリティ課題への取り組みが自社のガバナンス、戦略、ビジネスモデルなどと密接に結びついている必要があるということです。
企業は、経営戦略にサステナビリティ課題を統合し、持続的な価値創造を目指す取り組みと成果を、TCFDの4つの柱を踏まえた価値創造ストーリーとして分かり易く開示することが重要です。
先ずは、自社固有の経営環境や事業状況に応じて、企業価値の源泉となる要素(企業理念/パーパス、重要課題、⻑期ビジョン、ビジネスモデル、リスクと機会、 戦略、経営資源、ステークホルダーとの関係性、KPI・成果、ガバナンス体制など)を統合的な視点で整理・把握します。
その上で、企業価値に関連する内容全般を対象とする国内外のフレームワーク(経産省の価値共創ガイダンス、IIRC(国際統合報告評議会)のフレームワークなど)を参照しつつ、 自社固有の価値創造ストーリーを構築・発信します。
企業が、自社の価値観やメガトレンド(外部環境変化の大きな潮流)に基づき、重要なサステナビリティ課題の解決に取り組み、そのプロセスと成果を自社固有の価値創造ストーリーとして構築・発信することは、有報提出企業に限らず、すべての企業に望まれます。
そのことが、企業への投資家を始めとするステークホルダーの理解促進と信頼感の醸成に繋がり、延いては持続可能な社会の発展にも貢献することになると思います。