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シンガポールのショップハウスとは? その建築をひもといてみる

カラフルで華やかなこの可愛らしい建物のことを、シンガポールでは「ショップハウス」と呼んでいます。南国らしい色合いと模様でいっぱいの外観は、見るたびにグッときてしまいます。

花柄いっぱいのマジョリカタイル。そこで撮った写真はどれも可愛くて。

愛すべきこの建物。ショップハウスと言うからには、ショップ+ハウスなんだろうとは想像がつきますが、もうちょっと深掘りしてみました。最後までお楽しみいただけたらうれしいです。


これがショップハウス。特徴その① 縦割り長屋

一目でわかるショップハウスの特徴といえば、2階建てや3階建ての長屋。大きな一棟の建物を縦割りにして家が並んでいます。

一軒の家は2階建てまたは3階建てで、1階の玄関から入り、室内の階段で2階や3階に上がる構造です。

建売住宅がつながっているイメージですが、ポイントはお隣さん同士、同じ壁を共用していること。壁を壊すと、お隣さんこんにちは、となってしまいます。


特徴その② 1階のアーケード廊下「Five-foot Way」

一目でわかるショップハウスの2つ目のポイントは、建物の1階がアーケード廊下になっていること。

一棟ドーンとまるごと1階前面部分が共用廊下になっています。端から端まで廊下が続いて見通しもいいですね。しかも2階が張り出して屋根の代わりになっているので、雨に濡れないアーケード仕立て。張り出した2階を支える柱もおしゃれにデザインされています。

南国の気候といえば暑さと湿気。冷房がない時代に建てられたショップハウスでは、このアーケード廊下が灼熱の太陽やスコールから住民を守ってくれていました。

この廊下は「Five-foot Way」と呼ばれます。その由来は足5つ分の幅を目安に作られた歩道だから。

昔はここに住人が緑を植えたり、商品を置いたり、屋台が出店して屋外食堂になることもあったそう。雨が降れば雨宿りし、暑ければひと休みし、住民だけでなく地域の人たちも利用される場所だったんですね。


特徴その③ 2階の木枠窓

2階の前面部分には開き窓が2つまたは3つあります。木の枠で飾られたかわいい窓は、時代ごとにデザインの変遷を見ることができます。

Singpost(シンガポール郵便局)で見つけた、ショップハウスの窓枠デザインのポストカード

ショップハウスが出現したのは1840年代。この頃はまだガラス素材がなかったので窓は木製で、通風できるようにブラインド状になっていました。

その後、ガラスが登場すると、色ガラスをはめ込んだおしゃれ窓が一大ブームになったそうです。


特徴そのほか色々

当初ショップハウスに住んでいたのは、中国南部から移民してきた華僑の商人たち。1階は店に、2階は住居にして暮らしていました。

シンガポールでショップハウスが建てられたのは、1840年代から1960年代の間。初めの頃は飾りもなくシンプルな2階建て長屋でした。

その後、貿易拠点として発展していったシンガポールでは財を成す人も増え、ヨーロッパの流行を取り入れた華麗な装飾も取り入れるようになります。時代と共に変化していくショップハウスの建築デザインはとても興味深いです。

最後に、外からは、間口のそれほど大きくない家に見えますが、実は奥行きが深いのもショップハウスの特徴。室内には中庭があり、自然に換気をしたり、灯り取りの効果も備えていました。


ショップハウスの特徴まとめ

  • 2階建てまたは3階建ての縦割り長屋

  • 1階のアーケード廊下「Five-foot Way」

  • 2階には2つまたは3つの窓

ざっとショップハウスのイロハを調べて、ご紹介してみました。

もっと詳しく知りたい方は、シンガポール都市再開発庁(Urban Redevelopment Authority)をのウェブサイト(英文)もおすすめです。


最後まで読んでいただき、ありがとうございました。近く、ショップハウスのデザインの変遷もご紹介してみたいと思います。どうぞお楽しみに!


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