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1人では気づけなかったこと

今日でパラリンピックが終わる。

東京パラリンピック2020のコンセプトのひとつは、「多様性と調和」だった。

多様性と調和について語るには、私自身もっと勉強や経験が必要だし、その学びに終わりはないと思う。
そこで、私が最近身近で感じた「多様性」について書かせていただきたい。

私の職場には外国人の方もたくさんいる。
一緒にランチをすることもあったが、最近はコロナの影響でその機会も減っていた。
そんな中、先日久しぶりに会った方から、こんな話を聞いた。

彼は、欧米出身の30代。
アメリカの大学を卒業し、数年のキャリアをつんでから来日。そこからもう数年、私と同じ職場で働いている。

彼に彼女ができたらしい。
アメリカ人の父親と日本人の母親を持ち、仕事もプライベートも楽しんでいる彼女とのお付き合いは、とても幸せであることが伝わってきた。
しかし、ひとつだけ問題があった。彼女の母親に好かれていないらしい。

彼は、明るく気さくで、どんな人とも分け隔てなく接し、またどんな人からも学ぼうとする人だ。
そんな彼に好感を持たないことなんてあるのだろうか。

いまいちピンと来ないまま理由を訊ねると、
「Because, I'm black.」
衝撃的な答えだった。
「今どきそんなことってあるの?」
それが私の率直な感想だった。

そう、語弊を恐れずに言えば、彼はいわゆる黒人だ。
しかし、そのお母様にそう言わせてしまったことにも理由はあった。
自分がアメリカ人男性と結婚したことにより、当時の時代的なものや地域性から、苦労したことが多々あったらしい。そして、その苦労を娘には味わせぬよう、必死に守ってきたようだった。

もちろん彼はお母様の気持ちも理解していた。
そして、こう言った。
「きっと本当は、僕自身が好かれていないんじゃなくて、僕と彼女が一緒にいることによって生まれる差別に不安を感じているだけなんだ。」

私も、彼の言うことはきっと合っているのだろうと感じた。そして彼はこう続けた。

「まだ“違い”と“差別”の区別がつかない人が多い。でも、それは日本だけじゃなく欧米も同じ。僕は黒人だから、欧米で生活していたらそれなりの差別を受けるし、最悪殺されちゃうかもしれない。変な話だけど、母国よりも日本の方が安心して暮らせるよ。」

「母国よりも日本の方が安心して暮らせる。」
恥ずかしながら私はそんなことを少しも想像したことがなかった。彼は冗談交じりに話してくれたが、自分の勉強、経験不足を痛感した瞬間だった。

今の私には、まだ見えていないものがたくさんある。
それは、日本という島国に生まれ育ったことに起因しているかもしれないが、様々なツールが普及している今、そんなことは言い訳にならない。
普段の生活から、もっと多角的な視点で物事を見なければならない。
そして「多様性」について、もっと学ばなければならない。

もちろん、私は差別には反対だ。
しかし、「私は差別をしない」とは思ってはいけないのだと学んだ。
その思い込みが悲劇を生む可能性だってある。しかも、自分が気づかないところで。

多様性。
それは、良くも悪くも様々な意味を含むことばだ。

今の私は「多様性」について、「交流や理解へのきっかけになるもの」と考えており、そうしたいと思っている。
これは、あくまでも現時点での私個人の考えで、合っているかはわからない。正直、かなり難しい。
まだまだ道半ばどころか初期段階すぎるが、これを考えるきっかけをくれた彼にとても感謝している。

そして、彼は散々彼女との惚気話をした後にこう言った。

「彼女が僕を深く愛していることは明らかだからね。その愛は必ず彼女の母親にも伝わるし、僕の魅力を理解するのにそう時間はかからないよ。」

すげー自信だな。

私が同じ立場にあったとしても、そう言い切ることは恐らくないだろう。しかし、彼らしい発想を聞いて、私はとても幸せな気持ちになった。
これもまた多様性というものなのだろうか。

その後、彼にはまだ続報を聞いていない。

しかし、きっとうまくいっている。
そんな気がしてやまない。

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