そらとび ウミヘビ

「そらを とびたい おてんきだ!」

はしゃいだ声が ひびく。 今日の海底は そこそこげんきだ。ウミヘビの ビンは 海の中を おさんぽ中。 きれいなあわに 見とれながら ヤドカリさんのお店へ 向かっています。

今日は おおやすうりの日。おしゃれな ヒゲの ヤドカリおじさんは しゃっきりとした お洋服を 売っています。

「はい、いらっしゃい。きょうは なにを かうのかな?」
「ぼく、パパにおしゃれな ちょうネクタイを あげたいの。」

ビンは お父さんの たんじょうび プレゼントを 探しに来たのです。

「それなら、これは どうだい?」
ヤドカリおじさんは 草の実でできた グリーンちょうネクタイを さしだしました。
「うーん。なんだか サラダみたい。」
おやおや、ビンは 気に入らなかったみたいです。

「そうしたら、こっちは どうだい?」
続いて 出てきたのは サンゴのように 真っ赤なちょうネクタイ です。
「わぁ!じょうねつのいろ。 なつには あつそうだね。」
あらあら、ビンは まだまんぞくでない様子。

「ビンくんや、きみは おとうさんと どんなことをしたいかな?」
ヤドカリおじさんの 急な質問に すこし 迷ってしまいました。

「ぼくはね、パパと あそびたくて、おはなししたくて、だいすきだよっていいたいんだ。でも、もしできるなら・・・。ぼくは、ぼくは、いっしょに そらを とびたい!」

「それじゃあ、これだな。」
ヤドカリおじさんは 店のたなのおくから、とっておきのちょうネクタイを 取り出しました。

空色のちょうネクタイです。雲みたいなもようの入った、すてきなちょうネクタイでした。
ビンは もう、めろめろでした。
「きめたよ!これにします!」

帰り道、ヤドカリおじさんに結んでもらった リボンが くずれないように、そっともちかえりました。

空の色が かわっていきます。お家に つくころには あたりの家から 夕飯のかおりが してきます。

「ただいま。」
「おかえりなさい。そろそろパパが 帰ってくるよ。」

プレゼントが お母さんにも ばれないように お部屋に かくしました。
急いで ペンを とります。

「ずっと、おとうさんと そらを とぶみたいに すごせますように。」

思いを たくさん こめて、手紙を ぎゅっとだきしめました。もうすぐ、お父さんが 帰ってきます。

ごちそうの 音が 聞こえます。あたたかい光を つけました。