JIGGER'S SON『ワンダイムの夢』レビュー/すべては君がその手を伸ばせばいい
ラジオ番組から生まれた『ワンダイムの夢』
JIGGER’S SON『ワンダイムの夢』は、1997年3月20日発売のシングル『素敵な日々』のカップリングに収録されています。
『ワンダイムの夢』は、宮城・東北で放送されていた、坂本サトルさんがDJを務める同名のラジオ番組から生まれた楽曲だそうです。
番組の制作スタッフは、宮城で知らぬ者はいない、ラジオDJの”本間ちゃん”こと本間秋彦さん。
当時、ラジオの制作会社で働いていた本間秋彦さんが、この番組の担当ディレクターで、番組タイトルもまた、本間さんが名付けたそうです。
同番組内の、「番組タイトルと同じ曲を作る」という企画のもと、リスナーから募集した歌詞を参考に作詞され、編曲もバンドメンバーのみのアレンジで作られたとのこと。
ワンダイムとは、アメリカの10セント硬貨のことで、1アメリカドルの10分の1の価値だそうです。(1ドル100円とすると、ワンダイムは10円)
「ワンダイム硬貨から始まる夢」とは、ほんの些細な、小さな夢からでもスタートすればいい、スタートできる、そんな意味合いでしょうか。
(追記)
シューイチラジオ(ファンコミュニティ『サトル部』アプリでの配信ラジオ)でのサトルさんのお話によると、
「公衆電話に10円玉を入れて、オーディションの電話をかける。そこからスタートする夢」みたいなイメージだそうです。かっこいいですね。
ラジオ番組で制作された曲ということで、
「まだ見ぬ君が胸を痛めて 誰かを思っていることを知っている」というフレーズは、顔が見えないリスナーと手紙やメールで深いやりとりをする、ラジオDJとリスナーの関係を表しているようです。
「僕の声は君に届いているだろうか」というのも、ラジオDJからリスナーへの呼びかけを想起させます。
夢を見ること
「夢を見る力をもっと」
これは、佐野元春さんの「太陽」(アルバム『THE SUN』(2004年)収録)という歌に出てくるフレーズですが、いま、「夢を見る力」という言葉の意味が、とてもよくわかります。
長引くコロナ禍によって日本の社会に深く食い込んだ傷あと。
一線を越えてしまったような、ショッキングで暴力的なニュース。
何か大事なものが損なわれてしまったようで、世界はもう悪い方向にしか進んでいかないんじゃないかと、打ちひしがれ、諦めの思いに捕らわれてしまいそうです。
自分の手に負えないような、「社会の不安」や「不誠実な現実」に直面すると、未来に夢を見ること、より良い明日を想像する気持ちが奪われてしまう。
夢を見るにも「力」が必要なんだ、と実感しています。
絶望的な状況の中でも、夢を持たないと、明日に希望をイメージしていかないと、その明るい日はいつまでもやってこない。
その「夢を見るための力」を、縋るような思いで歌の力を借りて、絞り出して、なんとか生きていく。
美しくあたたかな言葉の韻律に、世界の愛おしさを思い出す。
心震わすメロディーと、優しく力強い歌声に、希望を見出し、
「すべては君がその手を伸ばせばいい」というフレーズに、
背中を押してもらう。
JIGGER’S SON『ワンダイムの夢』は、今なお、大人が聞いても、
明日を夢見る力をくれる1曲だと思います。
※歌詞は耳コピです。間違っている箇所があるかもしれませんのでご了承ください。
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