2022年7月30日 坂本サトル カフェミルトンライブ「Miltoniana~新しい夢への挑戦」
※本記事にはライブのセットリスト、ライブのネタバレが掲載されています。
2022年7月30日現在、世の中はコロナの第7波が到来。
全国でコロナウイルス感染者数の最多を更新するなど、ライブやイベントを開催するには、まだまだすんなりとはいかない状況。
坂本サトルさんのカフェミルトンでのアンプラグドライブは、そんな中での開催となりました。
宮城県白石市のライブレストラン「カフェミルトン」は、コロナ禍により2年半もの間、ライブの開催ができませんでした。
また、サトルさん自身も、約3年間ワンマンライブを行っていませんでした。
カフェミルトンのママの「有観客でのライブを再開するなら、坂本サトルさんのライブから始めたい」という強い思いのもと、'22年7月、サトルさんとミルトンは、一緒にライブ再開をすることを決めました。
観客の人数を30名にしぼったライブのチケットは、発売日に即完売となりました。
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ライブ2日前、チケットを予約した人に送信されたメールには、
参加者各自の感染予防対策のお願いのほか、いろいろな考えや置かれている状況によって、参加キャンセルしたくなったら、その考えを尊重するということ。ライブ前にはサトルさんが抗原検査をして、陰性が確認できたのちにステージに立つことなどが記載されていました。
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ライブ当日、入口前で検温がなされ、観客にはマスク(サトルさんが自腹でご用意してくださったそう)とポストカードのプレゼントがありました。
物販スタッフとして、『ミリオンレディオ』(FM青森)ご出演のモモさん、西村美鈴さん、石村プロデューサーがお手伝いされており驚きました。
当日のツイッターで、「万感の思いを込めて歌います」とつぶやいたサトルさん。「万感の思い」という言葉から、ここまでの道のりが平坦ではなかったことを伺わせます。
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ステージを取り囲むように着席した観客が、いまかいまかと、サトルさんの約3年ぶりのワンマンライブが始まる瞬間を待ち望んでいます。
そんな熱気あふれる空間の中、サトルさんが登場しました。
会場は大きな拍手で迎えます。
1曲目、ギターを鳴らしながら、「♪明日晴れたら出かけよう」(ごめんなさい、筆者うろ覚え)というフレーズから歌いだしたサトルさん。
「なんの曲だろう?」と聞いていると、「♪ミルトンに行こう」というフレーズが続きます。
ミルトンのためのオープニング曲から、ライブは幕を開けました。
続いて歌われたのは「愛の言葉」。
ノーマイクとは思えない力強いギターの音色と、会場いっぱいに響き渡る歌声で、観客は一気にサトルさんの歌の世界に引き込まれます。
今日の選曲は、「いまミルトンで歌いたい歌」を選んだというサトルさん。
「”会いたい”という気持ちの歌が多めだと思う」そういって歌ってくれたのは、
「君に会いたい」と「コーンスープ」でした。
「命が一番大事なのは大前提。だけど、彩りあってこその人生なのではないか」
「スリリングな状況をくぐりぬけて今日ここに来てくれて本当にありがとう」
「ミルトンのママ、マスター、正洋くんも2年半苦しかった思う。カフェミルトンは多くのミュージシャンにとってとても特別な場所。この場所を守ってくれた3人に大きな感謝の気持ち」
MCでは、カフェミルトンのマスター、ママ、息子の正洋さん3人への感謝の気持ちを何度も伝えていました。
ミルトンにもこんな時代があったのかな、とつぶやきながら歌いだした「やぶれかぶれ」。
「4月3日に生まれて」では、サビの「♪君に会いにきたよ」というフレーズが、ライブを待ち望んでいた観客の胸を打ちます。
「♪あれからずいぶん僕らは 遠くに来てしまったようだ
残された時間はあとどれぐらい?明日かもね このまんまでいいのかよ」
という歌詞は、まさに今のコロナ禍の状況を示しているようでした。
前半最後の曲は、ジガーズサン「缶ビール」。
ジガーズサンでデビューして今年で30年ということから、ジガーズサン時代の大切な曲を披露してくれました。
この「缶ビール」は、『JIGGER'S SON』(’94年)というアルバムに収録されていて、歌詞に17歳で初めて缶ビールを飲んだと受け取れる描写があります。また同アルバムには「14歳」という、14歳で煙草を吸った描写がある曲が収録されています。アルバムの中に2曲もそのような曲があるのは自主規制すべきと当時のレコード会社から言われたものの、その時、レコード会社の担当者が戦って守ってくれた、というお話をされていました。
前半終了。換気のための休憩時間が設けられました。
ミルトンの大きな窓が開けられ、そこにはサトルさん特製の網戸が設置されています。
窓と入口の2か所の網戸を、サトルさんご自身が取り付けしたそうです。
後半開始。
ライブ前半のサトルさんは水を飲みながらでしたが、後半にはビールをオーダーし、少しリラックスした様子でライブが再開されました。
後半のオープニングは、カバー曲から。以下の5曲から、観客のリクエストに応えて1曲だけ披露するとのこと。
(「夏のクラクション)「Woman)「少年時代」「ウィスキーがお好きでしょ」「戦士の休息」)
観客のリクエストがほぼ横並びでなかなか決まりませんでしたが、ミルトンママの希望により「ウィスキーがお好きでしょ」が選ばれました。
続いてもカバー曲「木蘭の涙」。
ミルトンママに、サトルさんが今日のライブで何が聞きたいか伺ったところ、即答で挙げられたのがこの曲だったそう。
サトルさんのお母さんもこの曲が好きで、歌うと喜んでくれるそうです。
1番はギターなしのアカペラで。体を揺らし、時々ギターのボディを叩いてリズムをとりながら熱唱。2番ではギターとともに歌い上げました。
「実は昨日は眠れなかった」と吐露したサトルさん。
「今日のために練習しすぎて左手が痛い」とも仰っていました。
サトルさんにとっても、有観客の2時間のワンマンライブは約3年のブランクがあり、「2時間最後まで歌いきれるかわからなかった」とのこと。
しかし、「ライブでは、お客さんから何かをもらって乗り越えられると実感した。この乗せ上手!」と、観客とともにライブを迎えられた喜びを伝えていました。
歓声や歌声を出せない観客は、大きな拍手とマスクの下の笑顔で応えます。
「アイニーヂュー」では、最後のフレーズを「♪この僕にはミルトンが必要だ」と歌い、会場からは割れんばかりの拍手。
続いての「メリーゴーランド」では、サビのコーラスを「マスクの中で小さく、心の中で一緒に」と。
「♪生まれたてのメリーゴーランド スタートはそう 1人で切るんだ」
「♪加速するメリーゴーランド 行けるまで そう 行くしかないよな」
という歌詞が、今日ここから新たにスタートを切るサトルさんとミルトンの決意を表しているようでした。
曲中にギターの弦が切れるアクシデントがあり、ギターを交換して再開しました。
続く「大丈夫」でもコーラスを「マスクの中で、心の中で一緒に」。
マスクの下の小さな歌声は、サトルさんへの思いとともに、溢れてこぼれてしまいそうでした。
サトルさんからは大粒の汗がこぼれていました。
「10年後の僕ら」この曲が作られた経緯と、この歌に込めた希望の意味をお話しされて、歌いました。
そのあと、どうしても弦が切れたギターで演奏したいのでと、弦の交換タイムに。
弦の交換をしながらお話しされた「言葉では説明できないけど(弦の張り方を)体が覚えている。たぶん年をとっても自然にできると思う」という言葉は、サトルさんがいかに長年ギターとともに人生を歩んできたかを物語っているようでした。
弦を交換したギターで歌われたのが、本日最後の曲「天使達の歌」。
発売から23年経つ、今までも何千回と歌っているであろうソロデビュー曲を、サトルさんはいつも大切に、丁寧に歌います。
歌い終わった後、サトルさんは、観客ひとりひとりの顔を見ながら、「ありがとう」と何度も繰り返していました。
会場からはアンコールを求める大きな拍手が続きますが、
「アンコールは9月の追加公演で」とのこと。
ここで終了になるかと思いきや、サトルさんはギターをかき鳴らします。
オープニングで披露された「ミルトンへ行こう」の歌詞が変わっており、エンディングver.になっていました。
「♪始まったよ 新しいミルトン」と、今日ここから、ミルトンが新しい夢に向かって歩み出す思いを歌い上げ、ライブ締めくくりました。
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サトルさんから、ミルトンへの大きな愛と感謝、
そして今日足を運んでくれた観客への感謝。
カフェミルトンのマスターたちが抱く音楽文化への深い尊敬と愛情。
観客から、サトルさんの音楽への大きな愛。
3者すべての、音楽への愛情、尊敬、感謝の思いが満ち溢れたすばらしい空間で行われた、一夜限りの特別なライブ。
サトルさんとミルトンの新しい夢、新しい一歩に立ち会うことができて、本当に幸せでした。
ライブ終了後、CD・グッズの販売会および、参加できる観客のみで開催された食事会では、ライブの感想を直接サトルさんにお伝えすることができ、またこちらからの質問にも、とても真摯に答えてくださいました。
「約3年もライブを離れていた自分は、以前と同じように歌を歌うことができるのか。声帯が弱くなっているかもしれない。2時間歌いきれるかわからない」と、前日眠れないほど、ナーバスになっていたと話すサトルさん。
ミルトンでのライブは、生歌・生ギターの完全アンプラグドのライブなので、ごまかすことができません。
私は当初、なぜサトルさんは、約3年ぶりの有観客ワンマンライブを、PA(音響機材)なしの、生声・生ギターの完全アンプラグドライブを選んだのか、少し不思議でした。なぜあえて自分のハードルを上げたのだろうと。
しかし、サトルさんは
「ミルトンでのライブは必ず生歌・生ギターでやる。ここだけは特別な場所だから。他とは違うからミルトンでやる意味がある」と仰っていました。
つまり、ミルトンママの「ライブの再開は坂本サトルさんで」という思いに呼応する形で、サトルさんも「自身のライブの再開をミルトンから」と決めた時点で、アンプラグドでスタートするという覚悟を決めていたのだな、と思いました。
まさに、「新しい夢への”挑戦”」だったのでした。
ミルトンママが、「ライブを見ているお客さんの背中を見るのが好き。背中から伝わるものがある」と仰っていたのが印象的でした。
ミルトンとサトルさん、観客の三者の愛を確かめ合うような、和やかな食事会の雰囲気や、ライブ直後に、アーティスト本人に直接ライブの感想を伝えられるという距離の近さなど、レポートの文章では伝えきれないことがたくさんありました。
またいつの日か、ここに必ず訪れたい。
カフェミルトンでの、夢のような素晴らしい一夜となりました。
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