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ひたちなかで始まって終わった2024年の夏

2024年の夏は、ひたちなかで始まってひたちなかで終わりました。
ひたちなかで生まれて20年、日本最大級の夏フェスに成長したROCK IN JAPANと、その後を継いだLuckyFes。両者が遂に同年開催になった2024年の夏、いち参加者の目線でふたつのフェスとこれからを考えてみます。

RIJFのあゆみ

ひたちなかの夏といえば、かつてはロッキンことROCK IN JAPAN FES.(以下RIJF)がほぼイコールで語られていました。
2000年、ひたち海浜公園の大草原を舞台に、グラスステージの1ステージで始まったRIJF。20回めの2019年には5日間で30万人を超える動員を記録し、名実ともに日本最大級のロックフェスにまで成長しました。
個人的にはももいろクローバーZが初出演した2017年から3年連続で参加しました。2017年はステージもエリアもとにかく桁違いに大きいそのスケールに圧倒され、グラスステージをパンパンに埋めたももクロさんには驚きと畏敬の念を持ったものです。

初参加だけど前方キープできた2017年
めちゃくちゃ暑かった2018年
2019年はステージに最接近できた

2020年は感染症蔓延により中止、翌2021年は対策を万全に施した上での開催まであと1か月というところまで漕ぎつけた時点で、地元医師会からの勧告などをきっかけに開催を断念。これを機にRIJFはひたちなかからの撤退に至り、2022年からはJAPAN JAMを開催してきた千葉市蘇我スポーツ公園に場所を移して開催することとなりました。

2021年:RIJF撤退とLuckyFesの立ち上げ

RIJFが撤退を決めると、茨城県の地元メディアが中心となり代替のイベント継続に動きます。
2021年RIJFの主催に名を連ねていた茨城のラジオ局LuckyFMのオーナー堀義人氏が先頭に立ち、新たなフェスを立ち上げるに至ります。
準備期間わずか半年という驚異的なスピードでの開催を実現したLuckyFesは、1年目の2022年は2日間、2年目からは3日間に拡大、3年目の今年は大草原までエリアを拡大して、徐々に規模も内容も大きくしてきました。

2023年:LuckyFesに初参加

1年目のラインナップは個人的な趣向にあまり響かなかったこともあり、足を運ぶところまでは惹かれませんでした。
しかし2年目の2023年に事態は急変。
日程を3日間に増やしステージエリアも拡張したためか、ラインナップの幅が一気に拡がります。
夏フェス常連組のバンドから80-90年代に一世を風靡したアーティスト、更にはアイドルまで拡大したラインナップの中に、なんとAMEFURASSHIが呼ばれたのです。
数々のアイドルフェスに出演してきたAMEFURASSHIでしたが、ガチの夏フェスへの出演はこれが初めてです。これは行かない理由がない。ちょうど感染症の行動制限も撤廃されて初めての夏。
ということで2023年7月17日、RIJFではないひたちなかの夏フェスに初めてお邪魔してきました。

いい天気すぎる、夏
RIJFのレイクステージが最大のステージに
AMEFURASSHIが立ったHILLS STAGE

AMEFURASSHIはHILLS STAGEのトップバッターで、FRUITS ZIPPERさんの真裏というタイテながら、フロアを埋めたフレンズ(LuckyFesは来場者をフレンズと呼びます)に圧巻のパフォーマンスを披露しました。

2022年および23年は大草原エリアを使わず、ゲート直下の池周辺をメインステージに展開していましたが、AMEFURASSHI出演日の7月17日(最終日)はきゃりーぱみゅぱみゅさんやDa-iCEなど錚々たるラインナップで、大トリは湘南乃風が大盛り上がりで締める圧巻のパフォーマンスでした。

2023年の最後を飾る湘南乃風、熱かった

2024年:大草原エリアへ

先に書いた通り、2024年のLuckyFesは3年目にして遂に大草原エリアを開放。RIJFではグラスステージを設置する広大な草原に2つのステージを配置しました。
グラスステージはRIJFの象徴とも言うべき場所で、レイアウトから造形、周辺の売店やシートエリア等の配置まで全てがグラスステージを構成していると言っても過言ではないと思います。
逆に、もはやRIJFに於いてグラスステージのレイアウトを変更することは考えられないのでしょう。

LuckyFesが大草原に進出すると聞いてラインナップとかを差し置いて真っ先に考えたのは「ステージのレイアウトどうするの?」ということでした。
グラスステージと同じ横長ワンステージにすれば、壮大なグラスの再現にはなるけどラインナップを相当頑張らないと埋まらない。そもそもグラスの焼き直しとの誹りすら受けかねない。
そんな懸念に対するLuckyFesの回答は、大草原を縦横に使う2ステージというものでした。

LuckyFes、大草原エリアの配置図

RIJFでグラスステージを設置する場所の左右にステージを2つ、グラス上手奥にRAINBOW STAGE、下手脇にWING STAGEをそれぞれ配置したのですが、結論から言ってしまうと、このレイアウトが実に巧妙でした。
RAINBOW STAGEはイベント最大のステージでメインアクトのアーティストが次々に出演します。WING STAGEはそれに次ぐ規模のステージです。

RAINBOW STAGE
WING STAGE

広大なエリアにステージを2つ設置するレイアウトはフェスでよくあるパターンです。片方のステージが転換中にもう片方が稼働するため、両方のステージを見渡せる辺りに陣取ればメイン級のアクトを切れ目なく観ることができます。
とても合理的で観客としては好都合なレイアウトですが、グラスステージのレイアウトが固まっているRIJFでは日の目を見ることのないレイアウトだと思います。ゼロベースで組み立てられるLuckyFesだからこそ実現したレイアウトだったのでしょう。
そしてこれが本当によく機能していたのです。

2024/7/13:LuckyFes初日に行ってきました

この日はAMEFURASSHI with RAM RIDER(なんとRAM RIDERさんとのダブルネーム!)が朝イチでGARDEN STAGEだったので朝からそちらに張り付き、その後はRAINBOWの氣志團、GARDENに戻って私立恵比寿中学、WINGの大塚愛さんと続き、その後はWINGで石井竜也with杏里さんまで。WINGの転換中はかなり遠目ですがRAINBOWのアクトを眺めることができて(音響はとてもよく通ってました)、こうやってのんびり音楽に浸るのもいいものだと改めて思ったものでした。
この日のヘッドライナーはウルフルズでしたが、真裏のNight Tempo with FANCYLABOがどうしても外せなかったのでそちらへ。結果的に朝イチと締めがGARDEN STAGEになりました。

AMEFURASSHIに朝から痺れた
氣志團の撮可は初めてでした
私立恵比寿中学パイセン
Night Tempoさん、やっと観れた

撮可について

LuckyFesの特色のひとつが、上記の通り撮影OKをベースにしていることです。
国内の多くのフェスがアクト中の撮影は原則NGなのに対して、LuckyFesは「原則OK、ただし出演者の意向を最優先とし撮可を認めない演者はNG」というスタンスをとっています。屋外のフェスですから撮影機材などの規制はきちんとしていますが、それでも「原則撮影OK」に踏み切ったのは英断だと思います。
撮可に関してアーティストのスタンスは本当にまちまちで、一律OKまたはNGで括るのはもはや時代に即していないのではないかと思います。もちろん一括NGのほうが統制を効かせるのは簡単ですが、撮可をプロモーション上重要なツールと捉えているアーティストにとっては残念なことです。逆にパフォーマンスを意図せず切り取られることを良しとしないアーティストにとっては、撮可は相容れないものです。
2024年の出演者は、撮影OKとNGの比率が4:6ぐらいでNGのほうが少し多いような印象でした。一方で当初撮影NGとアナウンスされていた氣志團は告知のタイミング限定で突如撮影OKとしてくれて、柔軟な運用ができることを示唆しました。
いまだに撮影NGが主流の国内フェス環境を変えていくきっかけになるのか、LuckyFesの取り組みはこれからも見守りたいです。

LuckyFesの強み

LuckyFesの大きなアドバンテージはマンパワーにあるのでは、と常々思っています。
スタッフの人数がとにかく尋常ではなく、ちょっと困ったことがあればすぐに周りのスタッフに声掛けできます。7月中旬という酷暑のど真ん中で開催するフェスだけに、熱中症対策や落雷など自然現象への対応にはとにかくマンパワーをかけるしかない、という発想かもしれません。同じ北関東で開催された別のフェスでは実際に落雷事故が発生しており、他人事とは思えません。
そしてそのスタッフの皆さんが、普通のフェスでよくお見掛けする若い世代のアルバイトさんだけでなく、どう考えても地元の中高年の皆さんでは?という幅広い世代の方たちなのです。
この辺りにも、LuckyFesが目指している場所を象徴するものがあるようです。

大草原の奥から上がる花火も圧巻でした

ロッキン、ひたちなかへ帰還

かねてから周年のタイミングでひたちなかへの帰還を示唆していたRIJFでしたが、いよいよ25周年となる2024年を迎えました。
RIJFの帰還につきましては別記事に詳しいのでそちらをご参照ください。

ふたつのフェスに参加して思ったこと

7/13のLuckyFesで始まった2024年のひたちなかの夏は、9/23のRIJFで終わりました。
両方に参加してみて率直に思ったことは、全く違うふたつのフェスがそれぞれの特色を持っていて、これからも共存していけるのではないかということでした。
RIJFはフェス界の大巨頭というべき風格とブランド力を備えていて、さすがというほかない圧倒的な求心力でした。
ゼロから立ち上げて3年のLuckyFesは正直まだこれからの部分も多いですが、ホスピタリティやレイアウトの面ではRIJFにない強みも感じました。
LuckyFesはRIJFをトレースするのではなく、大人から子供まで楽しめるテーマパークのようなフェスを目指しているのだそうです。RIJFもいわゆるガチのロックフェスからは少し距離を置いたフェスになっていると思いますが、それでも観客には本気度が試されている感じはあります(特に今年はサザンのこともあって尚更に)。

もっと垣根を下げて、みんなが楽しいフェスであろうというLuckyFesが地道に浸透していき、唯一無二のフェスとして末永く続いていってほしいと願っています。
そしてRIJFの周年にはふたつのフェスが一堂に会する祝祭が行われますように。

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