シロノワールをフレンチとしてみる
※5年前?くらいの下書きですが発掘したのでそのままあげます
コメダ珈琲店で長年愛されている定番スイーツ、シロノワールをご存知ですか。
私は現在京都の片隅で日々を過ごしておりますが、実はコメダ珈琲店と同郷です。
そのため、コメダ珈琲店は大変身近な存在でした。
パイに似た不思議な食感のデニッシュパンの上に、冷たいソフトクリーム、お好みでケーキシロップをかけ、アクセントに赤いチェリー。
これがシロノワールの全体図です。
シロノワールをいただくとき、いつも同じ友人とコメダ珈琲店に参ります。その友人は私と同じコメダ珈琲店の故郷で生まれ育ち、コメダ珈琲店で5年以上アルバイトしている筋金入りのコメダっ子と言えましょう。
しかしながら、彼女はシロノワールのアクセントである赤く色付けされたチェリーを好みません。そのため、私はいつもチェリーを2つ食べます。これによって、シロノワールがフレンチとして楽しめるのです。
まず最初に、プルミエ(冷たい前菜)として、1つ目のチェリーを頂きます。ソフトクリームの横に鎮座するチェリーは、柔らかな冷たさと共に甘みがふんわりと広がります。
次にドゥジェーム(温かい前菜)として、ソフトクリームののっていない部分のデニッシュパンを頂きます。たった今焼き上がったかのような、芳ばしいデニッシュパンの温かさにうっとりとしてしまいます。
ポワソンには、ソフトクリームをつけたデニッシュパンを。温かいデニッシュパンと冷たいソフトクリームが、口の中でほどけるように混ざり合います。
ソフトクリームとデニッシュパンの割合を変えてみながら、様々な温度変化を楽しみます。
刻々と変化するソフトクリームの溶け具合と、デニッシュパンの熱の融解度、そしてケーキシロップの量の匙加減…。
何度食べても、1つとして同じ味わいになることはありません。コメダ珈琲のシロノワールとは、1皿1皿が奇跡なのです。
これこそ、コメダ珈琲で長年愛される所以ではないでしょうか。
さて、4切れあるうちの3切れを食べ終えたあと、2つ目のチェリーを頂きます。ソフトクリームの冷たさにほだされ、ひんやりとしたチェリー。そう、これはグラニテ(お口直し)です。
肉は身体をつくり、パンは空腹を満たし、ワインは踊りを踊らせる。これこそがフレンチの醍醐味なのですが、シロノワールの4切れとそそりたつソフトクリーム、奇跡の2つのチェリーはそれを実現させるのです。
メインディッシュは最後の1切れです。ゆるりとたれるソフトクリームにおぼれ、その縁を柔らかくしたデニッシュパンはほろりと口の中でほどけます。少しお行儀が悪いかしら?と思いながらも、溶けきったソフトクリームにデニッシュパンを滑らせていきます。スープにパンを付けるように、優しく染み込ませましょう。先程、何度食べても同じ味わいにならないと申しましたが、最後の一口はいつもほとんど変わりません。
私の友人は食べ終えたあと、9割の確率で「あ〜、なくなっちゃった…」と大変残念そうにつぶやきます。シロノワールの最後の一口はまさに「なくなっちゃった…」のショックを具現化したものと言えましょう。この麻薬的な作用も相まって、シロノワールの「また食べたい」の魔法が完成するのです。
名古屋での塾時代から大学生活まで共にした友人とは卒業後、離れて新しい生活を始めます。しかし、私達の再会のそばにはいつまでもシロノワールがいてくれることを願ってやみません。
食べ物とのつながりは人とのつながり。
私の身体は今日も、愛すべき人たちの手で作られる、愛しい食べ物でできてゆくのです。
ごちそうさまでした。
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