55歳の私が若者たちに何を伝えられるのか(12)「いらないという選択肢」
今日のバスもほぼ同じ顔ぶれ。脂ギッシュなおじさんはいつもの通り、スマホゲームを楽しんでいる。これもまたルーティン。
数日前、キッチンカーの二十代店主と言葉を交わす機会があった。
PayPayでお支払いした。
「現金のやり取りがないPayPayはほんとうに楽ですよ。利用者はダントツでPayPayが多い」
「私も財布を持っていない。持ちたくない」
明るい性格の店主が話してくれた。
なるほど、二十歳の息子も同じかもしれない。スマホで何でも行う。PRADAの財布はおしゃれ身の回り品なのだろう。
恋人も、マイカーも、地位も名誉もいらないという若者たち。今後、昔ほどは給料が上がらない現実を見据えての動きなのか。
体が可能なかぎり、きっと七十代まで働き続けるわれわれ世代をどうみているのだろうか。
かわいそう、とみているのか。
火曜日の朝、少しだけ気になる。
間もなく、私鉄駅に着く。
◆ ◆ ◆
スマホおじさんは次のバス停で降りる。
スマホ操作に力を込める。
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