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8月25日の山口市まち旅(中)「商店街のプロガイド」
「お供物が盗まれていたのよ。誰が盗むのか。信じられない」
道端でたまたま会った女性に「原口珈琲」の場所を聞こうと思い、近づくと、いきなりこう切り返された。憤慨しきりだ。
地元のことは地元の人に聞け、という教えを私は取材の中で実践してきた。
この日、このときもそうだった。
ただ、この女性に対しては、おしゃべりなこの私も、防戦一方だ。不思議と心地良い。
知らない街なのだから、聞くしかない。
路地に迷い込んだといっては、大げさだが、少し方向感覚を失い、その女性に声をかけたのだが、弘法大師空海の話になった。
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「中市町」周辺
昭和の風景が今も残る
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「南無大師遍照金剛」とのちょうちん。最近、新調したという。
弘法大師の話になったので、思わず心の中で、新聞記者時代に赴任した長崎県平戸市での慰霊祭の様子を思い浮かべていた。
「昔、そこ(駐車場)に山銀があってね。そのまで、うちの土地だったのよ」
突如、話が変わり、どうやら、商店街の人だと推測した。
私の相槌が上手かったからか、本来の目的である「原口珈琲」の場所を教えてもらう前に、「うちの店を見てみるね」となった。
まずはお庭へ。
アスパラガスが植っていることに驚いた。普通の人は分からない、と思いつつ。
「アスパラガスをまちなかで植えている人はいない」と私の思いをそのまま伝えると、その女性の〝プレゼン〟もさらにのってきた!
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建物の中も案内していただいた。
仕事が「金子染物店」であるとのこと。
創業は天保13年、1842年である。
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