母の介護と旅立ち、そして向こうの世界とこちらの世界の架け橋⑦
【新しい環境へ】
引っ越し
ある時突然引っ越しをしなくてはならなくなってしまったのです。
住んでいた集合住宅が老朽化の為、建て替えをすることになったというのです。
えーッ!!!
と、驚いていても仕方ないので、さっそく引っ越し先を探さなくてはならなくなりました。
経済的なこと、母の病院へも行きやすくて、仕事にも不便ではないところ・・・などなどの条件を考えていた時に出会った今の場所。
不思議な縁と言える出会いで、なんとか無事引っ越すことができました。
その時一番心配だったのは、やはり母への影響でした。
母に引っ越しの話をしても、重大なことなのに関心は薄いまま・・・
こんな状態の母が、ある日突然環境が変わってしまうなんて、本当に大丈夫なんだろうか・・・
もっとひどくなってしまったら・・・
と、そんな心配をよそに、引っ越してから母に少しづつ変化がみられてきたのです。
引っ越ししてからの母は、新しい環境を気に入ってくれたようで、今までずっと頭から布団をかぶったままの毎日だったのに、布団から出て、会話もできるようにと変化してくれたのです。
その家のエネルギーのおかげか、家との相性の良さなのかわかりませんが、確かにその家は私たち家族を待っていてくれたのでは・・・と思えてしまうような不思議な出会い方でした。
築年数は古くても、そこは不思議な居心地の良さが感じられました。
元気になってきたのは母だけではありません。
前の家では鉢植えの植物を南側の日当たりが良いところに置いていてもなぜかすぐに枯れてしまっていたのに、その家に来たら、枯れかかっていた植物たちも急に元気になってきたんです。
住んでる家が自分たちを快く迎え入れてくれたのなら、そこは自分にとっての最強のパワースポットになってくれるのかもしれませんね。
その家に引っ越してきてしばらく経った頃、友人から、近所に一軒家の落ち着いた喫茶店があることを教えてもらいました。
週末のある日、私はその喫茶店に母を誘ってみました。
母は昔から喫茶店が大好きだったんです。
外に出るなんて無理かなあ・・・
母の反応にはあまり期待はしていませんでした。
ところが・・・
行きたい。
えっ・・・?
・・・・・?
聞き間違い?
いえいえ、聞き間違いなんかじゃなかったんです。
母は本当に、その喫茶店に行きたいと言ってくれたんです。
もうびっくり!ひたすらびっくり!!!です。
母の気が変わらないうちに・・・と、早速、母を連れてそのお店に向かいました。
外観は普通のお家のようで、中もこじんまりとした静かで落ち着いた木の空間の窓際のテーブルに向かい合って座り、お店オリジナルのブレンドコーヒーをお願いしました。
しばらくしてテーブルに運ばれてきたコーヒーは、特別な香りと深みがあった気がします。
きっと本当においしいコーヒーだったのだとは思いますが、私にとっては、母と喫茶店にいるということがそのコーヒーを特別なものにしてくれたのでしょう。
まさかこんな日が来てくれるなんて・・・
外出中だった父にそのことを話したら、やっぱり
えっ!!!お母さんと喫茶店に行ってきた!?
二人でコーヒー飲んできた?!
その時の父の嬉しそうな、すっごい驚き方は今もはっきりと残っています。
それからは外に出ることはほとんどないままでしたけど、確かにゆったりと少しづつだけど、穏やかに何となく・・・ですが、良い方向には向かっていってくれていました。
この時間が続いていてくれたら・・・
でも、いろんなことが起こるのが現実ですよね。
その後、また思いがけないことが待っていました。