Latin Music Night@ちぐさ Vol.2 「デスカルガ」 講義録簡易版_20180625
この資料は2018/6/25に横浜は野毛のジャズ喫茶ちぐさにて行った
「Latin Music Night」という連続企画の講義録(簡易版)です。
【テーマ】デスカルガ
Descarga(デスカルガ) = ジャムセッションの事。
仕事ではない、ミュージシャンの表現本位の演奏。
Descegaはスペイン語で荷物を下ろすの意
接頭辞"de(s)"は除去の意味、carga は荷物や負担の意味なので、
荷物を下ろす=仕事ではない演奏という事。
ジャズでいう所のジャム・セッションと同義。
(現在ではデータなどのファイルのダウンロードの意味で使われている事も多いです)
ミュージシャンは「音楽の仕事」が終わった後でも演奏したい人種らしく、
仕事終わりに朝まで演奏を続けていた。
デスカルガをそのまま録音し記録しているレコードははあまりなく、
残されているものはデスカルガの熱気と勢いを短い時間に終わるようにしたデスカルガ・ミニチュアというものがほとんど。
(といっても長いものは10分を超えるものもありますが)
古いラテン音楽のレコードでは曲のリズムが表記されていることが多かった(60年代中盤頃まで?サルサの時代以降になるとリズム表記は消える)
下の画像は一例。
おそらく現場での演奏とレコードの発売には多少時期的なずれがあると思う。現場ではデスカルガが盛んに演奏されていたがそれがレコードに現れるのにタイムラグがあったのではないか?と。
上の図でCubaからUSにデスカルガが伝播したと説明してあるが、
これはキューバのベーシスト、カチャーオがTito Rodriguezのバンドに加入した事を指している。おそらくこの時期より前にデスカルガととれるような演奏はあったであろうと予測する。
キューバで鳴っていたデスカルガの音源を紹介する
他にもキューバのパナルトレーベルにデスカルガの音源が残されている
次にアメリカ側でのこされたデスカルガの音源を紹介する。
1960年代にかけてアメリカのラテン系レーベルではAll Starsものと呼ばれるデスカルガ音源が多く残された。
1960年代後半になると、スパニッシュハーレムの若い第二世代が「親世代の伝統的な感覚+自身の世代の新しい感覚」を融合したブーガルーという音楽を作り出す。
ジャズやラテンのエッセンスのみならず都市で生まれ都市で生き抜かねばならないヤサグれた感覚をもちあわせている。
(このヤサグれた感じはブーガルーに共通している)
1960年代の後半に一時的なブーガルーのブームが起こり、すぐに消えさった。そのあとサルサの大ブームが訪れる。
80年代に入ると伝統回帰の動きと録音手法の高度化によって「伝統回帰+都市型センスの新しいラテン音楽」的な動きもでてきた。
60年代後半に80年代の感性にてつくられたオーパーツとも呼ぶべき傑作が残されている。マーク・ウェインスタインの「Cuban Roots」という作品だ。
その内容のレベルの高さもさることながらチック・コリアが参加しており、オリジナルのレコードは彼の参加作のなかでも非常に見つけにくい一枚としていまでは知られている。
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ざっとデスカルガと呼ばれる音とそれに近い音をみてきたが、いずれも勢い・熱気ともに素晴らしいものだったかと思う。
ほんとはもっと山のように紹介したい音源はあるが、各自で調べてみて欲しい。(現在は調べる気があれば探索は容易なので)
この記事をきっかけにラテン音楽に興味を持っていただけたら幸甚です。
(なんかで一緒に遊びましょう!)