Latin Music Night@ちぐさ Vol.1 「マンボ」 講義録簡易版_20180527
この資料は2018/5/27に横浜は野毛のジャズ喫茶ちぐさにて行った
「Latin Music Night」という連続企画の講義録(簡易版)です。
【テーマ】マンボの紹介と代表的なアーティストの音源紹介
マンボの起源については諸説あるが、
マンボという言葉を世界中に広めたのはペレス・プラードで間違いない。
1949に発表した「Mambo No.5」が世界レベルでヒットした。
ただし、ペレス・プラードの“マンボ”とそのほかのミュージシャンの“マンボ”は随分印象が違うモノもある。
ペレス・プラードのマンボは「野生的だが緻密で歯切れのよいビックバンドジャズ」ともいえる音であり、当時の目新しいポピュラーミュージックだったと思う。
一方でペレスプラードのそれとは若干趣を異にするマンボもある。
おそらくキューバのガラーチャというリズムを発展させたようなモノかと思う。
本講義では特に後者に位置するようなものを紹介しているつもりだ。
(「DJの耳で聞いて面白いと思うもの」がそちらの方が多いと思うから)
1950年代から1690年代の終わりぐらいまで新しいダンスミュージック(リズム)の流行は新しいダンススタイルの流行とイコールであった。
(その”結びつき”の最後はサルサであると思う)
「リズムとステップ」がセットで流行の風俗になっていた。
(すくなくとも日本ではそのように見える。日本の古いペラジャケのダンスもののレコードを見ている人はご存じかと思うが、解説にはダンスの流行の勢いやその踊り方の解説なんてのも多く場所を割いて記載されている)
新たな驚きをもたらす音楽の新奇な要素(各種ラテンミュージックのエッセンス)はN.Y.など都会のショービズ楽団の演奏を通して洗練され、レコードとして商品化され、そして世界中に発信されていった。
その伝搬力はさほどタイムラグなく流行の音楽・ダンスは世界に伝播していったようである。
(もちろん、一瞬で地球を一周できてしまうインターネットと比べるべくもないが…)
マンボ黄金期に活躍したミュージシャンを紹介する。
Tito Puente(ティト・プエンテ)
まごうことなき”King of Mambo”と呼ばれるべき存在。
ジャズでいったらマイルスとコルトレーンを合わせたぐらいの存在感があるのではなかろうか?
ティンバレスという楽器をラテンバンドの花形にしたのがこの人。
いつの時代でも存在感のある音を紡いでいるが、キャリア中期の攻撃力・重量感・密度を兼ね備えたそのバンドサウンドはラテンコンボの完成形かと思う。
笑顔を絶やさず骨の髄までステージマナーがしみついている巨匠だが、笑顔の中のその目が全然笑ってないところをみると、きっとマイルス・デイビスやジェームス・ブラウンのバンドのように相当厳しい規律や緊張などがあったのかな?と変な想像をしてしまう。
キャリア最初期にしてラテンレーベルTICOの初めてのLPを紹介
中期の名盤。80年代のUK-Jazz-Danceシーンでの定番だったとか。
何れの曲も強力である。
Machito(マチート)
いつみても人のよさそうな笑顔でニコニコしているマチート。
明るい曲調のモノは「これぞラテン!」と呼べる愉快かつゴージャスな音。
妹のグラシェイラがVoをとることも多い。
Tito Rodriguez(ティト・ロドリゲス)
自身で歌も歌うバンドリーダー。
ソリッドなマンボから甘いボレロまでをカバーする彼の楽団はレベルが高く60年代にUnited Artistsに残されたレコードは名盤ばかり。
Perez Predo(ペレス・プラード)
もともとはキューバのSonora Matanceraという楽団のピアニストからキャリアを始めた。当時から相当に変わったアイディアを音楽に落とし込んでいたよう。
キューバから当時の中南米のショウビズの中心地の一つ、メキシコにて活動
してた頃に「Mambo No.5」が世界的に大ヒット。
“マンボ”という言葉を広めた立役者であるプラードだが、
実はそれ以前にキューバ人歌手べニー・モレとやっていた頃の演奏の方が今の耳で聞くと魅力的ではないかと思う。
世界ヒットした「Mambo No.5」とその直前にやっていた曲を紹介するので比較してみて欲しい。
世界的大ヒットを出す直前のメキシコ時代の音が記録されている盤。
力強く野生的な演奏をしている。
今回は有名な大御所の人達の“今聞いたらおもしろい”んじゃないか?という曲を紹介した。
このあたりは現在(2022年)ではあまりまとまって紹介される事もあまりなく、参考になるような日本語の書籍も殆ど見当たらない。
もし本講の紹介で興味を持ったら各自で調べてみて欲しい。
ネットが普及したおかげで根気さえあれば情報や動画などはみつかると思う。
「知られていない音楽」は「つまらないわけではない」と感じていただけたら幸いです。
以上