水平線と急斜面(ダスト・エッセイ)


最近、back numberの「水平線」という曲にハマった。職場で鼻歌を口ずさんでいると、同僚の大学生に聴かれた。彼の友達は、みんなこの曲が好きだと言う。コロナ禍の辛さと歌詞がマッチするからだと教えてくれた。歌詞を調べてみると、わかるようなわからないような気がする。


透き通るほど淡い夜に

あなたの夢がひとつ叶って

歓声と拍手の中に

誰かの悲鳴が隠れている

耐える理由を探しながら

いくつも答えを抱えながら悩んで

あなたは自分を知るでしょう



院生時代に読んだけれど難解で、噛み砕けていない本の一つに、ドイツの社会学者・ハルトムート・ローザの『加速する社会』がある。人類は技術を発達させて、たっぷり自由な時間を得たはずなのに、なぜこんなにもみんな忙しくしているのか。その問いに挑んでいる。ふと思い出して、同書の論説の整理を再度試みた。


ヒト、モノ、カネの移動が速くなったため、世界中がグローバルな市場の競争に巻き込まれる。この競争は資本主義に基づいており、より速く、より多く、より安く生産することを要請する。企業は、高いスキルの労働者や、人件費をカットできる技術を欲しがる。今日、多くの人は、企業で働いてお金をもらって生活している。よって、企業に残れる人材になろうと努力する。知識や情報が多い方が有利なため、なるべく速く、かつ多くそれを得ようとする。他方、世界中の情報が次から次へと入っては更新され、すぐ古くなる。


結果僕らは、今まさに「地滑りを起こしている急斜面」に立ち、身の安全を維持し、同時に他の選択の可能性を失わないために、様々な環境の変化にアンテナをはっている。文字通り、心を亡くし、一心不乱に、この急斜面に留まっている。



水平線と急斜面。

若いからここにいるのか。

今だからここにいるのか。


誰の心に残る事も

目に焼き付く事もない今日も

爆音と足音の奥で

私はここだと叫んでいる

♪:back number「水平線」

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?