やさしくなる方法(ダスト・エッセイ)
一部売り場の世界観を創る作業を初めて担った。悩んでいると、かわいくてキャッチーな備品があったので、これを使おうと試みたが、全然上手くいかない。先輩にそれを言った。
方法が先にあるよりも、まず創りたい世界観を具体的に想像して、そのための方法を探してみる。
それがベストだと教わり、なんとか出来上がった。
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ジョージ・ソーンダーズが、所属する大学の卒業式で行ったスピーチの活字版を読んだ。
やさしい人になってほしい、と彼は語る。半世紀以上、波瀾万丈な人生を過ごしてきた彼が、人生で後悔していることは、小学生の頃、いじめれらていた同級生のために、もっと何かしてあげられたんじゃないか、というものだった。
大抵の人間は、友人や家族を失ったり、人のつながりの大事さに気づいていって、年とともにやさしくなる。でも、それじゃ遅いんじゃないか、と彼は若者に言葉を贈る。
今からでも、愛情があって、寛容で、恐れず自分を出せるやさしい人になろう、と努めてほしい。
当然、利己的なこともして良いと断って、彼は次のように続ける。
「でも、そういうことをやりつつも、できるだけ、やさしさから遠ざからないようにしてください。大きな問題と向きあうようなことをしてください。あなたを小さな人間やつまらない人間にするようなことを避けてください。」『人生で大切なたったひとつのこと』
そう言われると、やさしい人になりたい、と思う。
このありたい自分に向かって、僕にはどんな方法があるだろう。
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平和構築を理念とする学部の中で学んできた卒業生の先輩たちが、自分の卒業論文は仕事の役に何も立っていないと口を揃える。
けれども、数人から確かに聞いた。今でもよく、執筆当時の問題意識を思い出す。
あの時書いた、大きな問題に向き合うための論文が、イカリのように、僕らをやさしさから遠ざからないよう、小さな人間やつまらない人間にならないよう、はたらいてますように。
(2024年4月25日投稿)