【読書感想分】節分の垣谷美雨作品
新年の挨拶をつい最近したばかりな気がするのに、もう立春。
節分の昨日は、実家へ出向いて、すでに一人で料理が難しくなった母と妹と恵方巻きづくり。
午後からデイケアのリハビリへ行き、戻ってきた父は帰宅後無言。
こちらからの問いかけもほとんど無視の不機嫌ぶり。
つっけんどんで配慮のない物言いの理学療法士が担当らしく、嫌なことがあるとこういう状態になるらしい。
言葉が上手く出なくてコミュニケーションを取ることがかなり難しくなった父なので、私と妹はそうそうに辞去する。
きっともうすぐ二人だけの暮らしが難しくなる。そんな気配が濃厚の両親。
老々認認の二人暮らしの怪しい綱渡り。どこまで今の状態でいけるだろうか……
不安な節分。
自分の現状がこういう状況なので、本屋で目に買ってしまった本がめっちゃ面白かった。
垣谷美雨さんの『七十歳、死亡法案可決』
え、2012年1月に刊行?
知らなかった……
タイトル的にほとんど書評にも取り上げられなかったらしいけれど、私自身こういうものを書いてみたいと思っていた。それが10年以上前に書かれていたとは……。
しかも、
平成27年2月10日初版発行、
令和5年3月25日25判発行。
ロングベストセラーですね!
そして2024年1月の終わりの丸善丸の内店の3階文庫本売り場に平積みされていて出会った私ですが……。
表紙には大きく『母、家出します。』の文字と「国も家族も誰も私を助けちゃくれない…!」のうたい文句。
右端の下の方に『七十歳、死亡法案可決』垣谷美雨 の文字。
一見すると『母、家出します。』がタイトル見たい。
うたい文句の方が大きくて、タイトルがわかりづらい感じになっている。
確かにセンシティブなタイトルかも知れないけど、ここ迄配慮が必要なのね……。
表現の自由も難しい。
中身はといえば、少子高齢化社会で介護問題に直面している日本社会が真剣に考えるべきものになっている。
もっともっとみんなで読んで考えるべき内容。
少子高齢化による財源不足等の不測の事態に対して、決断力のある総理大臣が強行採決した「70歳死亡法案」をめぐって介護する側、される側、介護を一人に背負わせて逃げてしまう他の家族・親族、それぞれの気持ち、考えがあぶり出される。
主婦が介護して当然なのか、介護も家事も女性がするべきことなのか。ブラック労働なんかも取り上げられる。今日本社会が直面していて、しっかり考えないとヤバイ問題がたくさん提起されている。
「家族ってなんなんなの?」の問いが母、父、娘、息子、義母、それぞれの立場で考えられる。
家族がそれぞれの立場で考え始めて、母の家出で変わっていく中盤以降の流れがまた秀逸。
考えさせられながら、一気に読んでしまう。
そういえば2022年には『PLAN75』という映画もあったなって思い出す。
すごく観たかったけどまだ見ていない。今度はこの映画も観てみよう。
人生50年の時代を過ぎて、死ねない人間の時代に突入してしまった感のある現代。
介護が必要な高齢者の問題は切実な自分事の2024年。
『七十歳、死亡法案可決』は、非常におすすめの秀作でした。