「カミングアウト」と「ウェルカミングアウト」

コロナ禍での台湾デジタル担当大臣オードリー・タン氏や、東京五輪での男子シンクロ高飛び込み金メダリスト(”編み物王子”)英トーマス・デーリー氏など、いわゆるLGBT*と総称される方々のご活躍もあって、最近は日本においても、LGBTに対する理解度、いや、正確には、「この世の中にはLGBTの人もいるのだ」ということへの理解が、徐々に浸透してきたように思います。

米国の人気ドラマなどを見ていると、距離の縮まった同性の友人に「あなたの性的指向は?」「ストレート(異性愛者)よ」と確認するシーンなども描かれていて、そのような質問をしたことも受けたこともない私は、今後はこういうやり取りが当たり前になっていくのかな、と近未来を見た気持ちになります。

一方で、日本企業の統合報告書を見ていると、その多くが依然として「女性管理職数の向上」に四苦八苦している様子が窺え、女性管理職数の増加自体は非常に好ましいことなのですが、ジェンダーに対する取り組みはやはり世界の中でも周回遅れな感が否めません。海外企業の中には、取締役会の多様性を示すために役員の性的指向を開示している企業もある中で、日本企業の統合報告書は、米国在住歴の長い友人に言わせると「まだあんなに男の人だらけなのね。女性役員はいても一人とか二人なのを見ると、旧態依然とした姿に逆に驚く」のだそう。

先月、私はトランスジェンダー活動家の方に直接取材でお話を伺える貴重な機会をいただきました。パパとして2児を育てる元・女性の同氏によると、LGBTの問題は、目に見えづらいのと、周りに悪意がないだけに難しく、例えば職場などにLGBTだとカミングアウトしている人がいなかったとしても、それは「本当にいない」のではなくて、「カミングアウトできない現実がある」と考えるほうが自然とのこと。当事者がカミングアウトしたくても言い出せない職場は、その人材の持つ多様な視点を眠らせてしまっており、すべての人材が持てる能力を発揮できる職場に変えるには、当事者ではない人が「私はLGBTの人を理解しているよ」という「ウェルカミングアウト」を示すことも有効だと教えていただきました。

ジェンダーを男性・女性の2択でしか捉えないならば、「女性」の活躍推進は重要課題です。しかし、そもそものジェンダーを2択に絞らず、すべての人がジェンダーにかかわらず活躍できる職場が理想形だということに改めて気づかされました。


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