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蹄鉄とみたらし団子

奇妙な組み合わせがあったものだ。タイトルを見て、競馬に関わる物語を期待して浦河図書館で借りた『さよなら凱旋門』という本、確かに競馬の話だったが、蹄鉄がしゃべり、アメリカでみたらし団子を作り、食するのは皆、non-Japanese、日本人以外の人々。こう書いていても、一体何のことやら、と私自身がそう思う。だけど、この本、面白かったんです。

蹄鉄

物語の発端、凱旋門賞のレースで日本人ジョッキーが雷に打たれる。2005年の設定だ。その人の魂が、なぜか1916年のある馬の蹄鉄になるという、奇想天外な話の展開に、最初はついて行けなかった。しかし、なぜかストーリーに引き込まれる。

この蹄鉄、ディズニーの映画、たとえばダンボにでてくるティモシーというネズミや、ピノキオにでてくるジミニークリケットというコオロギ(バッタ?)のような名わき役的存在で、他の人には会話が聞こえないが、主人公のアリー(厩務員)とは会話ができる。人生のガイド役というか、この蹄鉄の場合は、未来で何が起こるかを知った上で、アドバイスしたり、サポートしたり、応援したり。

蹄鉄があれこれ指示をして、アリーにやらせるのではないところが、すごく良くて、アリーが色々な人と出会って、話が展開して行くが、蹄鉄がきっかけで誰かに会うわけでもなく、主人公が様々な選択をし、行動をするときの、心の動きを後追いで説明する会話をするというか、出しゃばり過ぎないところが、とても良い味をだしているように思う。

みたらし団子

蹄鉄がしゃべるという突飛な発想にも驚くが、舞台はイギリスからアメリカに移り、イタリア人、カナダ人と様々登場するなかで、みたらし団子が牧場の命運を左右する形で登場するのが奇抜すぎる。蹄鉄になったジョッキーの好物で、お団子を作るためのもち米の粉を求めてアーカンソーへ行き、中国系アメリカ人にも出会う。何でもありだな。

それでも物語として、次が読みたくなる。馬たちの活躍、栄枯盛衰、落ちぶれた人間の復活、すべてを手にしたような人の悲しみ、チームワーク、人としての成長、色々な要素が絡み合って、気づいたら、読み終わっていた感じだ。

競馬はblood sportと言われ、つないできたサラブレッドの血統にはロマンがあるとよく言われる。活躍馬や偉大な種牡馬に注目が行きがちだが、牝系、つまり母方の血統も非常に重要だ。著者は血統書を読み解きながら、この本を書いたのかな?  ウマ娘ほどではないが、競馬の歴史も下地にある感じだし、全くの作り物、ファンタジーとは違う、1頭の馬から世界にその血が受け継がれ、世界一の馬を目指す壮大なビジョン、その第一歩を踏み出すまでのところで馬に関わる人々の心温まるストーリーでした。

尾花栗毛

物語にはたくさんの馬が登場する(一番の上の写真はその馬たちの挿絵を集めたページを写したもの)。中には尾花栗毛の馬もいたので、改めてインターネットで画像を見たけど、トウショウファルコは美しかったなぁ。


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