クリストファー・プラマー
享年91歳
先日、俳優のクリストファー・プラマーが亡くなったと、Yahooのニュースに1行、そう書いてあった。
トラップ大佐
名前を見ても、ピンとこないかもしれない。映画「サウンド・オブ・ミュージック」でトラップ大佐を演じ、エーデルワイスを歌った俳優だ。
今の私があるのは彼のおかげだと思っている。もちろん会ったことなどないが、映画「サウンド・オブ・ミュージック」を通して一方的に弟子入りし、英語の発音を教えてもらった。
きれいな発音
クリストファー・プラマーはシェイクスピア劇も演じるような人だから、すごくはっきりした発音である。亡くなってから、知ったことだが、曽祖父がカナダの首相とある。血筋の良さが話し方にあらわれているんだろうな。
速度もゆっくり
帰国子女でもない、留学をしたこともない、だけど英語がしゃべれるようになりたい。どうすりゃいいの? という感じであがいていた大学時代。そんな時に観た映画「サウンド・オブ・ミュージック」。ずいぶん前に観たことはあったが、この時はストーリーや歌だけではなく、聞こえてくる英語にも聞き惚れた。昔の映画はしゃべる速度も比較的ゆっくりで耳に入ってきやすかったのかもしれない。
繰り返し繰り返し
取り憑かれたかのように何度も何度も繰り返し観た。なんて言っているのか知りたくて、セリフを覚えるくらい繰り返し再生した(今と違って、自動で英語の字幕なんて出てこなった)。セリフを言い出すタイミングさえも真似をした。
歌も最初は一緒に歌えないのだけれど、一番ゆっくりなエーデルワイスから練習して一緒に歌えるようになるまで何度も聞き、歌った。祖国を愛しながら、祖国を離れる情感たっぷりにクリストファー・プラマーが歌うエーデルワイスは、こうやって感情を込めるのだと教えてくれているようだった。
自分で確認
英語の歌を英語で歌うのほど、英語を正しく発音するのに良い練習はないんだと思う。正しく発音していないと、音符に言葉をのせることができない。小さな子供が、ポッポッポ、ハトポッポとすぐには歌えないけど、何度も何度も歌っていると歌えるようになる。歌っているうちに正しい日本語が発音できて、だから歌えるようになるのではないかと思う。歌えているかどうかで発音できているかどうかを自分で確認できる。嘘はつけない。ごまかせない(ごまかせるなら上級かも?)。
俄然楽しく
好きな映画を観ながら、発音が直せる、発音が正しくできると、しゃべりやすくなる、という気づきを与えてくれたのが、サウンド・オブ・ミュージックであり、クリストファー・プラマー(もちろん、ジュリー・アンドリュースもだ)。この後、俄然、英語が楽しくなって、今の仕事、通訳・翻訳へと繋がった。
感謝
見逃してしまいそうな1行に釘付けになり、頭の中でものすごい速さで思い出を巻き戻し、トラップ大佐のところで止めた。有難うございましたと、深々とお辞儀をし、しばし心の底からの感謝の気持ち、冥福を祈る気持ち、そして恩師を亡くしたような深い悲しみ、喪失感で動けなかった。
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