馬留学 - ワーケーション再び
上の写真、一瞬、浦河のように見えて、実はイギリスです。今、イギリスに乗馬のレッスンを受けるために来ている。4週間の滞在予定で、そんなに長い休暇はとれないので、仕事を持ってきて、平日の早朝から午前中は仕事をして(ちょうど日本の午後から夕方の時間になる)、午後にレッスン2鞍とレクチャーを1つ受けるというスケジュール。ワーケーションという言葉を聞かなくなったけど、まさしくワーケーションという感じだ。この歳にして、人生初の寮生活だ。
Overloading
Week 1が終わって初めての週末を過ごしている(レッスンは週5日)。刺激が多すぎて、学ぶことがありすぎて、頭が爆発というかoverload状態であるが、自分のレッスンもさることながら、上を目指す、あるいは資格をとろうとしている人達(BHS=British Horse Societyの資格を取って、乗馬の世界で働こうとしている人達で、たとえばオリンピックの選手のグルームだったら、どの資格を持ってないとできないといった感じの資格)の真剣なレッスンを見るだけでも、ものすごく刺激になる。週末も屋内馬場に入り浸って、他の人々のレッスンを見学している。観光地を一人で巡るより、ずっとずっと楽しいし、日本では得難い経験。ここにいられることに幸せを感じている。
How do you feel?
馬に乗る、乗馬のレッスンを受けることに、何ら変わりはないし、特別な練習方法というよりも、基礎的な、非常にシンプルな練習を行う。誰もが知っている輪乗り、歩様の移行、斜め手前変換を繰り返しながら、特にうまく行った時に”How does that feel? Did you feel the difference? How do you feel?”とよく聞かれる。さっきまでうまく行かずに苦労していたのが、ちょっとうまく行った、そういうときの感覚を返答すること、つまり自分の言葉で説明することを求められる。馬から何を感じるかをすごく大事にしていて、how to的なこうすればこうなる、という教え方ではないので、常に自分が何を感じているかを意識していないと、聞かれたときに答えられない。浦河でもしょっちゅう指導者に言われていたことだけど、意識が全然足りなかったと毎日感じている。
馬に教わる
初めてのレッスンで人生初のLeg yieldingを行った。日本語でいう斜め横歩。愛馬で指導者がやるのを見たことがあるが、馬が反抗していたのを覚えている。ここの馬はちゃんとそのサインを知っているので、言われたように行うだけで、すーっと前進しながら横に動いてくれた。ものすごく気持ちがよかった。馬がきちんと調教されていると、こうして馬が教えてくれるんだなぁと感じた次第。
Mind blowing
ここの校長であるパミーさんは気さくな方で、初めて会った時、パミーさんから自己紹介をしてきて、握手をした。「あの人の騎乗、特に騎座がすごく良いから見てみて」と言われて、目を向けると、速歩してるのに、全然上下してなくて、お尻とサドルが一体化しているみたいだった。しかもよくみたら鐙をつけていなかった(鐙をあげたのではなく、ついてない状態で乗っていた)。2017年のパラ馬術で金メダルをとった人だった。このスージーさん、凄い人で、2012年に馬の事故で障がい者になって、入院中に障がい者の水泳をみていて、刺激をうけ、そこから水泳やって、パラリンピックに2回も出場してメダルを獲得、今年のパリパラリンピックも出るはずが、練習中に事故があったそうで、大会の2日前に辞退し、耳も聞こえなくなって、人工内耳をつけてた。とにかく騎乗がものすごくきれいだった。どうしたらあんな風に乗れるんだろう? 少しでもあんな騎座に近づきたいと心の底から思った。それが3日めのことだったのだが、もう圧倒されて意識がぶっ飛ぶ、まさに、It blew my mindという表現がぴったりの経験だった。
様々なレッスンがあり、私と同じ日にやってきて、1週間の滞在で帰った中国人の女性は、全く馬に乗るのが初めてだったけど、5日目に自分で駈歩ができて、満面の笑み。近くでたまたまこの1週間の彼女の様子を見ていた私や周囲のインストラクターも何だかものすごく嬉しくて、やったね!と声をかけたほど。どんなレベルでもレッスンが受けられて、上はオリンピック、パラリンピックを目指す人も練習しているという、素晴らしい環境だ。仕事しながら、ここでレッスンを受けられることを本当に幸せだと感じている。