馬の離乳
米国から帰国し、浦河に戻ると、隣の牧場の2組の親子の内、先に生まれた仔馬が離乳をして、もう1組の親子に寄り添うようにして草を食んでいた。なんか寂しげで(私の勝手な想像だが)、けなげだなぁと見守りつつ、頭の中には、TV番組の「はじめてのおつかい」が浮かんできた。でもあれは親の元へ帰ってくる、いわばround trip。帰ってきて、あぁよく頑張ったね、と見てる方もほっとするが、離乳は片道切符で、たいていは、一生、もう親の元には戻らない、二度と会わない(牝馬で繁殖馬となり、母親と同じ生産牧場で過ごすこともあるが、ごくごく少数)。馬にとって、親と過ごす最初の半年は本当に何の心配もなく、幸せそのもののように目に映る。これからわけもわからないまま、せりにかけられたり、競走馬として育成されたり、大変な日々が待っている。その第一関門が離乳だよなぁ。頑張れ、としか言えない。
2日後、もう1頭も離乳と相成り、大きな放牧地に2頭の仔馬だけになった。その日は朝から、「ママ~、どこなの?」とないては、走り、耳を澄ませて、反応がないか確かめ、またなきながら走り回るを繰り返していた。聞いていて切ない。
母馬は実は道路を挟んで、高低差で見えないものの、比較的近くにいる。授乳から解放されて、きゃっほーと転がったのか、体は泥だらけだったが(一番上の写真)、ずっと仔馬のいる放牧地に一番近い角で、いつみても耳を澄ましていた。何度も車でここを通るのだが、いつみてもこの場所に耳をピンと立てて、佇んでいる。きっとかすかに仔馬の声が聞こえるのだと思う。ときどき、呼びかけていた。
数日たっても、ときどき思い出したように呼び掛けては走り回ったりはするが、段々とその頻度が下がり、2頭で寄り添い、なんとかやっている、という感じだ。
帰国後、初めて見た夕陽は季節が動いて、海に沈むようになっていた。
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