英国馬留学 - 最後のレッスン
今週末のクリスマスデモに向けて、馬場の中もクリスマスデコレーションがなされている。今日でレッスンはすべて終了し、明日の便で帰国する。
ちょっとルンルン
今週が最終週という配慮があったのかどうかわからないが、色々と新たなレッスンを受けた。
ドレッサージュミニミニ入門ね、と教わったのが、Shoulder in(肩内、馬の脚の軌跡が通常2トラックなのに対し、斜めに進むので、3つのトラックになる)、Turn on the haunches (前肢を軸に、後ろ脚を動かす)、5m loopなどだ。
またいつも大会用の馬に乗っているインストラクターが超上級者向けの馬(だと思う。もしかしたら、大会用の馬だったかも)に乗って図形を描く、その後ろをついて行くという練習もあった。私がついて行かれるような速度で進んでくれているのだが、ものすごくゆっくりに見えてとても速いし、とにかくリズムが一定。こういう風に乗るのか、ともう本当に素晴らしい経験をさせてもらった。その後、馬の首を丸くする手綱の使い方を教わり、もちろんすぐにはできないので、今度は私の後について、後ろから、指導をしてくれた。ほんの少しでも、一瞬でもできると、There! (その感覚!)という感じで声をかけてくれる。全然できなくて、くじけそうになる私にとにかく求め続けるのよ(Keep asking!)と教えてくれた。
沈む
ちょっと高揚した気分になったところで、昨日、今日と乗った馬は実は一番苦手な馬だった。小さい馬で、四肢の可動域が狭いのか、歩様のリズムをうまくつかめない。しかも超初心者を乗せる馬なので、適当にさぼることを心得ている。昨日はもう全然うまく動かせなくて、撃沈。
それでも昨日は個人レッスンだったから良いのだが、今日、当初予定されていたのが、この馬に乗ってのグループレッスン。しかも高齢かつ非常に厳しいインストラクター(74歳と自らおっしゃっていた。耳が遠いので、いつも大声。でも眼光するどく、ちょっとでも初歩的なミスを繰り返したなら怒鳴られる)のレッスンで、他の馬は動く馬ばかりだから、これは大変なことになった、と最終日なのに朝から気持ちが沈んでいた。
奇跡?
大きく深呼吸をして、負け戦にいざ出陣と、厩舎に馬をピックアップしに行くと、何かスタッフというかStudentたちに張り詰めた雰囲気がある。実はこの日の朝、私のレッスンの前に、クリスマスデモの最終リハーサルが本番同様に屋内馬場で行われていた。
昨日、毎週水曜と金曜に主にStudent対象に行う障害飛越のレッスンで使用している障害を屋内馬場に移動していた。これをTomさんという総合馬術の指導をするインストラクターの指示に従って設置し、実際このデモ練習に参加するStudentたちが障害を飛ぶ練習(? というかリハーサル)を行った。その後すぐにこの障害物を撤去し、カドリール、校長のパミーさんの演技の最終リハーサルと続いた。全員がクリスマスデモで演技を行う、障害を飛ぶわけではないが、朝の厩舎作業、収牧も通常通り行いつつ、参加者は自分が乗る馬は自分で馬装をし、ウォーミングアップもしておかなければならない。もうてんやわんやだったわけだ。
リハーサルの後にはすぐにレッスンが控えている。時間も押していた。さぁ、次のレッスンの馬装をしようとした時(結構直前にStudentがやってくれる)、私の苦手な馬をはじめ、何頭か放牧地から連れて来るのを忘れてしまったことに気が付いた。大変だ!(May day! May day!)今から連れてきたら馬装がレッスン開始時間に間に合わないから、次のレッスンで乗るはずで、すでに厩舎にいるランビー(私が一番頻繁に乗っている練習馬)を今すぐ馬装するからランビーに乗って! と言われて、なんとランビーでグループレッスンに参加することになった。気持ちがどれだけ軽くなったかわからない。なんだか、目の前で奇跡が起こっているようだった。誰に感謝したら良いのかわからないけど、有難う!!!
ランビーに乗ったおかげで、一人遅れるとか、怒鳴られることもなく、グループレッスンを楽しむことができ、インストラクターにWell doneと言われたときには、心底ほっとした。
苦手な馬の克服
すぐあとに個人レッスンで、無事放牧地から連れてきて馬装の済んでいた苦手な馬に乗ったのだが、こちらはやさしいインストラクター、ブライアン。正直に、この馬にうまく乗れないと伝えると、この馬は歳もとっているから、他の馬のように速くはなかなか動けない。だけど賢いんだよ(Lazy, but smart)。乗っている人を試す。だから、先にこっちがどこに行くか、何をしたいか、決めておかなければならない、と説明してくれ、常歩で輪乗りや四角い図形をきちっと描く練習をまずした。馬が勝手にショートカットしようとしたりしがちだから、とにかく騎乗者が描いた通りに進むことを要求する(これはどんな馬でも同じ)。反応していなければ、すぐに軽く、素早く鞭を使って、目を覚ましてやる(もしもし、聞いてます?って感じ)。動かない!と慌てずに、あるいは必死になって力むのではなく、いつもより騎座をどっしりと深くし、少し後傾、あごをあげる(lean back, chin up)。歳をとっていて、バランスが良くないし、すぐにバランスを修正できないから、そこをうまく助けてあげるやり方を教えてくれた。
次に速歩で同じことをしたが、ここでも高齢でそんなに速くは走れないことを頭に入れ、遅い!と思うのではなく、この馬のリズムに合わせることが大事だと教えてくれた。スピードがあがると、さらにバランスを崩しやすいから、常歩のときのように角をしっかり曲がるよりは、少し早めに曲がって曲がりやすくしてやる。体は少しだけ前傾して、前進するのを助けてあげる。
こうして動かした後、斜め横歩の練習をしたら、この馬がすばらしい動きをしていると乗っていて感じた。昨日や乗り始めとは全く違う馬のようだった。何とか動かそうと焦ってしまっていた自分がいけなかったんだなぁ。
それとブライアンさんからは何度も、走りながら、Pat him(褒めてやれ)と言われた。彼の目から、年老いた小さな馬が一生懸命動いている、私の指示に従っている、この馬なりのすごく良い動きをしていると見える瞬間、瞬間にそう言われた。ブライアンさんもGood boyと何度も言っていた。
どの馬にも同じ騎乗をしようとしていた自分に気づかせてくれた、最後を締めくくるのにふさわしい、私にとっては貴重なレッスンだった。